病院や訪問看護ステーションで経験を積んだ看護師の方の中には、自分の考える看護を形にしたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。

一方で、介護保険・健康保険の指定を受ける訪問看護ステーションには、看護職員を常勤換算で2.5以上置く基準があり、一人で始めるのは難しいと感じることもあるかもしれません。

そこで選択肢として挙がるのが、保険を使わない自費(保険外)の訪問看護です。

本記事では、介護保険・健康保険などの公的な保険を使わず、利用者が費用の全額を負担する看護のサービスを、説明の便宜上「自費の訪問看護」と呼びます。

保険の訪問看護との違い、看護師の資格と医師の指示の線引き、開業までの手順、指定を受けたステーションで自費のサービスを併せて行う場合のルールを順に整理します。

なお、美容医療など訪問看護以外の自費サービスの論点や、個別の行為が医療行為に当たるかどうかの判断は、本記事では扱いません。

結論|自費の訪問看護は、保険の「指定」とは別の枠組みで始める

自費の訪問看護は、介護保険・健康保険の指定とは別の枠組みで始めるサービスです。

指定は、保険を使った訪問看護を提供し、その費用を請求するための仕組みです。

保険を使わないサービスだけを行う場合は、この指定の手続きとは別に、開業の準備を進めることになります。

自費の訪問看護には2つの始め方がある

自費の訪問看護の始め方は、大きく2つに分けられます。

始め方内容主に関係するルール
①自費のサービスだけで始める介護保険・健康保険の指定を受けず、利用者との契約にもとづいて看護のサービスを提供する看護師の資格に関する法律、契約に関する法律、開業時の税務の手続きなど
②指定訪問看護ステーションが自費のサービスを併せて行う指定を受けたステーションが、保険の訪問看護とは別に保険外のサービスを提供する①に加えて、保険の訪問看護との関係について定めた基準・通知

開業までの手順は主に①の場合を、後半の「指定訪問看護ステーションで自費サービスを併せて行う場合」は②の場合を扱います。

②の前提となる指定の受け方は、次の記事で整理しています。

訪問看護ステーションの立ち上げ|開業までの8ステップと指定申請

指定がなくても変わらない3つの決まり

指定を受けない場合でも、自費の訪問看護に関係する決まりはあります。

1つ目は、看護師の資格でできることの範囲です。

2つ目は、医師の指示が必要な行為があることです。

3つ目は、利用者との契約に関するルールです。

このほか、利用者を車で運ぶ場合など、サービスの内容によっては別の許可や登録が関係することもあります。

保険の訪問看護と自費の訪問看護の違い

保険の訪問看護と自費の訪問看護は、看護師が利用者の自宅を訪ねる点は同じでも、費用の出どころや守るべき基準が異なります。

ここでは、開業を考えるうえで影響の大きい違いを、費用・指定と人員基準・事業者の形の3つの観点から整理します。

費用の出どころと料金の決まり方

保険の訪問看護では、費用の額が介護報酬・診療報酬の仕組みで定められ、利用者は原則としてその一部を負担します。

自費の訪問看護では、料金を事業者が定め、利用者との契約にもとづいて受け取ります。

料金を自由に決められる反面、利用者が費用の全額を負担するため、サービスの内容と料金が釣り合っていることを説明できるようにしておくことが大切です。

指定と人員基準|常勤換算2.5は「指定」の最低基準

指定訪問看護ステーションには、看護職員を常勤換算で2.5以上置く人員基準があります。

この基準の位置づけについて、政府は平成24年の答弁書で次のように述べています。

御指摘の指定訪問看護ステーションの看護師等の配置基準は、介護保険法等による保険給付の対象となる訪問看護を安定的に提供することができる指定訪問看護ステーションを指定する場合の最低基準として設定したものであり、看護師の職業選択の自由を制限するものではないことから、看護師の「「職業選択の自由」の侵害にあたる」との御指摘は当たらず、当該配置基準を医師による診療所の開設等と比較することは適当でないと考える。

出典:衆議院「衆議院議員柿澤未途君提出訪問看護師の「一人開業」を制限する根拠に関する質問に対する答弁書」(平成24年8月17日・答弁第365号)

人員基準は、保険給付の対象となる訪問看護を行うステーションを指定するための基準として置かれています。

保険を使わないサービスだけを行う場合は、この人員基準とは別の枠組みで事業の体制を考えることになります。

人員基準の数え方や、指定を受ける場合に一人で始められるかどうかは、次の記事で詳しく整理しています。

訪問看護の人員基準|常勤換算2.5の数え方と一人開業の可否

事業者になれる人|法人格の要否

指定を受けるには、人員基準のほかに、申請者についての要件があります。

介護保険では、申請者が都道府県の条例で定める者であることが求められます(介護保険法第70条第2項第1号)。

健康保険では、申請者が地方公共団体、医療法人、社会福祉法人その他厚生労働大臣が定める者であることが求められます(健康保険法第89条第4項第1号)。

これらは、いずれも指定を受けるための要件です。

自費のサービスだけを行う場合は、個人事業主として始めるという選択肢もあります。

保険の訪問看護と自費の訪問看護の比較

ここまでの違いを表にまとめると、次のとおりです。

項目保険の訪問看護(指定訪問看護ステーション)自費の訪問看護(指定を受けずに行う場合)
費用の出どころ介護保険・健康保険の給付と利用者の負担利用者が全額を負担
料金介護報酬・診療報酬の仕組みで定められる事業者が定め、契約で合意する
指定介護保険は都道府県等、健康保険は地方厚生(支)局の指定を受けて行う保険の指定とは別の枠組み
人員基準看護職員は常勤換算2.5以上、うち1名は常勤保険の人員基準とは別の枠組みで、体制は事業者が設計する
事業者の形申請者の要件がある(介護保険は都道府県の条例、健康保険は法律と厚生労働大臣の定めによる)個人事業主として始める選択肢もある
医師の指示提供の開始に際し、主治の医師の指示を文書で受ける保助看法第37条に当たる行為には、主治の医師又は歯科医師の指示が前提になる(臨時応急の手当などの例外を除く)
利用者との契約運営基準に沿って重要事項を説明し同意を得る消費者契約法・特定商取引法など、契約に関するルールに沿って結ぶ

看護師の資格でできることと、医師の指示が必要なこと

自費の訪問看護は保険の指定とは別の枠組みで始められますが、看護師の資格に関する決まりは、保険を使うかどうかにかかわらず適用されます。

ここでは、保健師助産師看護師法(以下「保助看法」)の条文から、自費のサービスを組み立てるときに確認しておきたい点を整理します。

看護師の業務は「療養上の世話」と「診療の補助」

看護師の業務の範囲は、保助看法第5条で定められています。

この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

出典:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」

自費のサービスとして提供したい内容が、療養上の世話と診療の補助のどちらに関わるのかを整理しておくと、次に見る医師の指示が必要かどうかを考える手がかりになります。

医師の指示が必要な行為|第37条と臨時応急の手当の例外

医師の指示が必要な行為については、保助看法第37条が次のように定めています。

保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣かん腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。

出典:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」

この条文は「〜してはならない」という形の禁止規定で、主治の医師又は歯科医師の指示がある場合と、ただし書きの臨時応急の手当などが例外として置かれています。

自費のサービスであっても、この条文に当たる行為を行う場合は、主治の医師又は歯科医師の指示が前提になります。

どの行為がこの条文に当たるかは、行う内容ごとに主治医と確認しておくことが大切です。

准看護師は、医師・歯科医師・看護師の指示を受けて業務を行う

准看護師については、保助看法第6条が次のように定めています。

この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。

出典:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」

准看護師の方が自費のサービスを始める場合は、業務を行うにあたって誰の指示を受ける体制にするかを、最初に整理しておく必要があります。

「指示書」の受け方は主治医と相談する

保険の訪問看護では、提供の開始に際し、主治の医師による指示を文書で受けることが基準で定められています(病院・診療所が行う介護保険の訪問看護では、診療録などへの記載で代えることができます)。

介護保険では指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第69条第2項、健康保険では指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準第16条第2項がこれに当たります。

いわゆる「訪問看護指示書」は、この保険の仕組みの中で使われる書類です。

自費のサービスで第37条に当たる行為を行う場合も、指示をどのような形で受け、どう記録に残すかを、主治医とあらかじめ相談しておきましょう。

業界団体の自主ガイドラインである一般社団法人訪問看護支援協会「訪問看護ステーションにおける保険外訪問看護ガイドライン」(Ver.1.0・2026年3月31日施行)は、保険外のサービスでも医療行為を行う場合は医師の指示書が必要との立場をとっています。

このガイドラインは法令ではなく、対象も法人格を有する訪問看護ステーションとされていますが、指示の受け方を考える際の参考になります。

看護師の資格でできることとできないことの全体像は、次の記事で整理しています。

看護師の起業|経験を活かせる事業と資格でできること・できないこと

自費の訪問看護を開業するまでの7つの手順

ここからは、指定を受けずに自費のサービスだけで開業する場合の手順を、順を追って見ていきます。

届出だけを先に済ませて契約書や保険の準備が後回しにならないよう、開業日までに何を整えるかを意識して進めましょう。

ステップ1|提供するサービスと対象者を決める

最初に、どのようなサービスを、どのような方に提供するのかを決めます。

例えば、保険の訪問看護の時間や回数では足りない部分を補う長時間の見守りや、通院・外出・旅行への付き添いなどが考えられます。

サービスの内容によって、医師の指示が必要な行為を含むかどうか、移動に車を使うかどうかなど、確認すべき決まりが変わります。

最初の段階で、行うことと行わないことを書き出しておくと、後の手順を進めやすくなります。

ステップ2|主治医との連携と、急変時の連絡体制を決める

自費のサービスでも、利用者の状態が急に変わったときの対応は欠かせません。

利用者の主治医や家族、ケアマネジャーにどの順番で連絡するかを、サービスを始める前に決めておきましょう。

第37条に当たる行為を行う場合は、指示を受ける方法もこの段階で主治医と相談しておきます。

ステップ3|個人事業主か法人かを決める

自費のサービスだけで始める場合は、個人事業主として始める方法と、法人を設立して始める方法があります。

将来、介護保険・健康保険の指定を受けて訪問看護ステーションへ広げる場合は、申請者の要件を満たす形が必要になるため、その見通しも踏まえて選びましょう。

法人の設立登記や税務の手続きを専門家に依頼する場合は、それぞれ司法書士・税理士が扱う分野になります。

ステップ4|開業届などの届出と、事業の内容によって必要な許可を確かめる

個人事業主として始める場合は、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を提出します。

提出期限は、事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までです(国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」)。

青色申告をしたい場合は、開業届とは別に「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。

こちらの期限は、青色申告をしようとする年の3月15日まで、その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は事業開始等の日から2月以内とされており、開業届より先に期限が来ることがあります(国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」)。

このほか、都道府県や市区町村への届出もあり、提出先や期限は自治体によって異なります。

たとえば東京都は、都内で個人で事業を開始した場合、事業の開始の日から15日以内に「事業開始(廃止)等申告書」を都税事務所等に提出する必要があるとしており、税務署の開業届より先に期限が来ることがあります(東京都主税局「事業開始(廃止)等申告書の提出はパソコン・スマホから!」)。

人を雇う場合は、労働保険(労災保険・雇用保険)や社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続きが関係します。

加入が必要かどうかは、事業の形(個人か法人か)や、雇用する人数・労働時間などによって制度ごとに異なるため、労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所で確認しましょう。

また、利用者を自分の車に乗せて運ぶ場合は、道路運送法の許可や登録が関係することがあります。

道路運送法第78条は、自家用自動車を原則として有償で運送の用に供してはならないと定めています。

国土交通省は、許可や登録を要しない運送の考え方を「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドライン」(令和6年3月1日国自旅第359号・令和8年6月5日一部改正)で示しています。

このガイドラインは、「有償」を「運送サービスの提供に対する反対給付として財物を収受すること。」とし、提供するサービスに人の運送が付随して行われるものについては、サービス自体が有料であっても、その運送に特定した反対給付がない限り許可又は登録は不要としています。

あわせて、このような運送について、燃料代等の実費を求めることは可能としています。

一方で、サービスの実態が目的地への運送のみである場合は許可又は登録を要するとされ、最終的には事案ごとに個別に総合的な判断が行われるため、車を使うサービスを考えている場合は、地方運輸局に確認しておきましょう。

ステップ5|契約書・重要事項説明書・料金表を整える

自費のサービスでは、サービスの内容と料金を利用者との契約で決めるため、書面の準備が重要になります。

保険の対象外のサービスであること、サービスの内容と提供時間、料金とキャンセル料、事故が起きたときの対応などを、契約の前に書面で説明できるようにしておきましょう。

キャンセル料などの違約金を定める場合、解除の事由や時期などの区分に応じて、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は無効とされています(消費者契約法第9条第1項第1号)。

利用者の自宅など、事業所以外の場所で契約の申込みを受けたり契約を結んだりする場合は、特定商取引法の「訪問販売」に当たることがあり、契約書面の交付やクーリング・オフなどのルールが関係します。

利用者が自宅での契約を求めた場合など、これらのルールの一部が適用されない場合もありますが、消費者庁は、この「請求した者」に当たるのは、あらかじめ契約の申込み又は締結をする意思を持ち、自宅で契約したいという明確な意思表示をした場合としています。

単に訪問や説明を依頼されただけで当てはまるとは限らないため、消費者庁の「訪問販売等の適用除外に関するQ&A」で確認しておきましょう。

契約書や重要事項説明書の作成を専門家に依頼する場合、書類の作成は行政書士も扱う分野です。

ただし、利用者との間で紛争になった事案について、本人に代わって交渉や代理を行うことは、法律に別段の定めがある場合を除き、弁護士の業務範囲になります(弁護士法第72条)。

ステップ6|賠償責任保険・記録・守秘義務を整える

訪問先で事故が起きた場合に備えて、賠償責任保険への加入を検討しましょう。

加入を検討する保険が、自費の事業で起きた事故を補償の対象としているかどうかは、契約内容で確認しておくことが大切です。

先に挙げた業界団体のガイドラインも、賠償責任保険への加入を求めています。

提供したサービスの内容や時間、利用者の状態などは、記録として残しておきましょう。

看護師には、正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない守秘義務があり、看護師でなくなった後も同様とされています(保助看法第42条の2)。

利用者の個人情報の扱いは、個人情報保護法と、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成29年4月14日・令和8年4月一部改正)が参考になります。

ステップ7|周知の方法と、表示で気をつけること

利用者やケアマネジャー、医療機関に知ってもらうために、ホームページやチラシなどで周知を始めます。

その際は、介護保険・健康保険が使えるサービスだと誤解されないよう、保険の対象外であることを分かるように示しておきましょう。

実際のものよりも著しく優良であると示す表示など、一定の不当な表示は景品表示法第5条で禁止されています。

指定訪問看護ステーションで自費サービスを併せて行う場合

すでに指定を受けた訪問看護ステーションが、保険の訪問看護とは別に自費のサービスを行う場合は、保険の訪問看護との関係について、基準や通知の定めがあります。

介護保険と健康保険では根拠となる基準や通知が異なるため、制度ごとに分けて見ていきます。

介護保険|保険外サービスと組み合わせるときの取扱い

介護保険では、厚生労働省の通知「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」(平成30年9月28日)が、両者を組み合わせて提供する場合の取扱いを示しています。

通知はまず、介護保険の解釈通知(「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」平成11年9月17日老企第25号)の訪問介護についての記述を引き、介護保険給付の対象となるサービスと明確に区分されるサービスについては、別の料金設定をして差し支えないとしています。

その方法として、別事業であり介護保険給付の対象とならないことを利用者に説明して理解を得ること、目的・運営方針・利用料等を運営規程とは別に定めること、会計を区分することが挙げられています。

そのうえで、訪問介護を例に具体的な取扱いを示し、訪問看護をペットの世話など通知に例示された保険外サービスと組み合わせて提供する場合も、同様の取扱いとしています。

通知が示す主な取扱いは次のとおりです。

  • 保険外サービスの目的・運営方針・利用料等を、運営規程とは別に定める
  • 契約の際に重要事項を記した文書で説明し、保険外サービスの内容・提供時間・利用料等について同意を得る(保険外サービスの時間は、保険のサービスの提供時間に含めない)
  • 契約の前後に、利用者を担当するケアマネジャーにサービスの内容や提供時間などを報告する
  • 別のサービスであることを利用者が認識できるよう、切り替えのタイミングを丁寧に説明するなどの配慮をする
  • 保険のサービスの利用料とは別に費用を請求し、会計を区分する
  • 保険外サービスに関する利用者等からの苦情に対応するため、苦情を受け付ける窓口の設置などの措置を講じる
  • 保険外サービスで取得した個人情報は、個人情報保護法と医療・介護分野のガイダンスに沿って扱う(介護保険サービスで取得した個人情報を保険外サービスに使うには、取得の際にあらかじめ利用目的を公表するなどの措置が必要)

また、同じ通知は、介護保険サービスと保険外サービスを同時一体的に提供することを認めていないとしています。

区分支給限度額を超えてなお保険のサービスと同等のサービスを提供する場合、その価格は保険のサービスで事業者に支払われる費用額と同水準とすることが望ましいとされています。

ただし、利用者等に保険のサービスと保険外のサービスの違いを文書で丁寧に説明し、同意を得れば、別の価格を設定することも可能とされています。

健康保険|「その他の利用料」と別サービスの区別

健康保険の指定訪問看護では、基本利用料のほかに「その他の利用料」として受け取れるものが、基準で定められています(指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準第13条第2項)。

具体的には、利用者の選定による営業時間外の指定訪問看護など厚生労働大臣が定める場合の差額と、交通費・おむつ代等の費用です。

これらを受け取る場合は、あらかじめ内容と額を説明し、利用者の同意を得なければなりません(同条第3項)。

この規定は、保険の訪問看護の提供に関して受け取る費用についての定めです。

あわせて、健康保険の解釈通知(令和8年3月5日保発0305第20号「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」第三の4の(12)①ハ)は、交通費、おむつ代及び家事援助に要する費用等であって、指定訪問看護の提供以外のサービスの提供に要する費用について、そのサービスに要する実費相当額を利用料として徴収できるとしています。

健康保険の指定訪問看護事業者が、保険の訪問看護とは別に料金を定めて自費のサービスを行う場合の扱いは、この記述も踏まえて地方厚生(支)局に確認しておきましょう。

運営規程・届出・会計の確認先

保険外のサービスを始めるにあたって運営規程や重要事項説明書を見直す場合、変更の届出が必要かどうかは、指定を受けた都道府県等や地方厚生(支)局に確認しましょう。

会計の区分の方法や税務の扱いについては、税理士に確認しておくと安心です。

40〜60代の看護師が自費で開業する前に確かめたい5つのこと

自費の訪問看護は指定の人員基準とは別の枠組みで始められる一方で、一人で引き受ける範囲が広がることもあります。

40〜60代で開業を考えている方が、始める前に確かめておきたい点を5つ挙げます。

1. 一人で24時間の対応を引き受けない設計にする

自費のサービスは時間や回数を契約で決められるため、依頼に応じるうちに夜間や休日の対応が増えることがあります。

一人で始める場合は、対応できる時間帯を契約書や料金表に明記し、急変時の連絡先を利用者や家族と共有しておきましょう。

ご自身の体力や生活に合わせて、無理のない範囲から始めることが、長く続けるための土台になります。

2. 収入の見通しは「単価」より「利用者が集まる道筋」で考える

料金を自由に決められても、利用者が集まるかどうかは別の問題です。

利用者が費用の全額を負担する分、料金に見合う内容であることを丁寧に伝える必要があります。

ケアマネジャーや医療機関など、利用者を紹介してくれる可能性のある相手にどう知ってもらうかを、開業前に考えておきましょう。

3. 退職と開業の順番|勤務先の決まりを確かめる

在職中に準備や試行を始める場合は、勤務先の就業規則で副業・兼業がどう扱われているかを確認しておきましょう。

公立病院などで地方公務員として勤務している方が報酬を得て事業に従事する場合は、原則として任命権者の許可が必要です(地方公務員法第38条。一部の非常勤職員を除く)。

退職の時期は、開業届や青色申告承認申請書、自治体への届出の期限、契約書や保険の準備にかかる期間も踏まえて決めると、慌てずに済みます。

4. 将来、指定の訪問看護ステーションへ広げるかを考えておく

自費のサービスで始めたあと、介護保険・健康保険の指定を受けて訪問看護ステーションへ広げる道もあります。

その場合は、人員基準や申請者の要件を満たす必要があり、立ち上げの費用や入金までの運転資金も別に見積もることになります。

指定を受ける場合の費用の考え方は、次の記事で整理しています。

訪問看護ステーションの立ち上げ費用と開業資金|3つの箱で見積もる

5. 訪問看護以外の自費サービスには別の論点がある

美容に関わるサービスや施術を伴うサービスには、看護の自費サービスとは別に、医師法や他の免許に関する論点があります。

訪問看護の延長として考えず、行う内容ごとに、業として行うために必要な資格や許可を確認しましょう。

自費の訪問看護の開業でよくある疑問

自費の訪問看護を開業するときによく挙がる疑問をまとめます。

Q1. 自費の訪問看護を始めるのに届出は必要ですか?

介護保険・健康保険の指定の申請は、保険の訪問看護を提供して費用を請求するための手続きです。

保険を使わないサービスだけを行う場合は、指定の申請とは別に、税務署への開業届などの手続きを進めます。

ただし、サービスの内容によっては、道路運送法の許可や登録など、別の手続きが関係することがあります。

すでに指定を受けたステーションが自費のサービスを併せて行う場合は、運営規程の変更などの届出が必要かどうかを、指定を受けた都道府県等や地方厚生(支)局に確認しましょう。

Q2. 自費なら医師の指示書はいりませんか?

保助看法第37条に当たる行為を行う場合は、自費のサービスであっても、主治の医師又は歯科医師の指示が前提になります(臨時応急の手当などの例外があります)。

准看護師は、医師・歯科医師・看護師の指示を受けて業務を行うと法律で定められています(保助看法第6条)。

指示の受け方や記録の残し方は、行う内容ごとに主治医と相談しておきましょう。

Q3. 保険の訪問看護と自費のサービスを、同じ訪問の中で行えますか?

介護保険では、訪問看護を、ペットの世話など通知に例示された保険外サービスと組み合わせて提供する場合について、保険外サービスを保険の訪問看護と明確に区分したうえで前後や合間に組み合わせる取扱いが通知で示されています(通知は訪問介護を例に具体的な取扱いを示し、訪問看護も同様の取扱いとしています)。

介護保険のサービスと保険外のサービスを同時一体的に提供することは、認められていません。

通知に例示された種類以外のサービスを組み合わせる場合の扱いは、指定を受けた都道府県等に確認しましょう。

健康保険では、指定訪問看護の提供以外のサービスに要する費用を実費相当額で利用料として受け取れるとする解釈通知の記述があるため、組み合わせる場合の扱いは地方厚生(支)局に確認しましょう。

Q4. 料金はどう決めればよいですか?

自費のサービスの料金は、事業者が定め、利用者との契約で合意するものです。

提供時間や内容、移動の負担、キャンセル料の扱いなどを含めて、利用者に説明しやすい形で料金表にまとめておきましょう。

指定を受けた事業者が、介護保険の区分支給限度額を超える部分について保険のサービスと同等のサービスを提供する場合は、保険のサービスと同水準の価格が望ましいとされています。

ただし、文書で説明し同意を得れば、別の価格を設定することもできるとされています。

健康保険の指定訪問看護事業者が、訪問看護の提供以外のサービスの費用を利用料として受け取る場合は、実費相当額とする解釈通知の記述があります。

まとめ

本記事では、自費(保険外)の訪問看護を開業するときに押さえておきたい点を整理しました。

主なポイントは次のとおりです。

  • 介護保険・健康保険の指定と人員基準は、保険の訪問看護を提供するための仕組みであり、自費のサービスだけを行う場合は別の枠組みで考える
  • 看護師の資格に関する決まりは自費でも変わらず、保助看法第37条に当たる行為には主治の医師又は歯科医師の指示が前提になる(臨時応急の手当などの例外を除く。准看護師は医師・歯科医師・看護師の指示を受けて業務を行う)
  • 開業届・青色申告承認申請書・自治体への届出の期限、契約書と料金表、賠償責任保険、表示のルールを開業前に整える
  • 指定ステーションで併せて行う場合、介護保険は通知に沿って保険の訪問看護と区分し、健康保険は解釈通知の利用料の扱いを踏まえて地方厚生(支)局に確認する

まずは、提供したいサービスを書き出し、医師の指示が必要な行為を含むかどうかを主治医と確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。


※本記事は2026年10月時点の法令・通知に基づき作成しています。

法令や通知は改正されることがあるため、最新の情報は e-Gov法令検索や厚生労働省・国税庁などの公式サイトでご確認ください。

個別の行為が医療行為に当たるかどうかなど、医学的な判断は主治医にご確認ください。

個別の事案については、内容に応じて行政書士・税理士・弁護士などの専門家へのご確認をおすすめします。

よこぜき行政書士事務所