はじめに

病院や施設で長く働いてきた看護師の方の中には、「まずは自分ひとりで、小さく訪問看護を始められないか」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

その際に最初に確かめておきたいのが、国の定める人員基準です。

結論を先にまとめると、次の3点になります。

  • 介護保険・健康保険の指定を受けるには、看護職員を常勤換算で2.5以上(うち1名は常勤)置くことが国の基準です。
  • 1人の勤務は常勤換算で1.0が上限のため、看護職員1人だけでは2.5に届かない計算になります。
  • サテライトや離島などの地域には少ない人数で訪問看護を提供できる仕組みがありますが、本体のステーションや対象地域であることが前提です。

本記事は、病院・診療所以外の訪問看護ステーションが介護保険・健康保険の指定を受ける場合を扱い、病院・診療所の訪問看護や保険外の自費サービスは概要にとどめます。

開業までの流れや指定申請の全体像は、訪問看護ステーションの立ち上げ|開業までの8ステップと指定申請で整理しています。

看護師の起業全体の選択肢から考えたい方は、看護師の起業|経験を活かせる事業と資格でできること・できないこともあわせてご覧ください。

訪問看護の人員基準とは|国の基準で決まっている3つの職種

訪問看護の人員基準とは、訪問看護ステーションが介護保険・健康保険の指定を受けるために置くべき職員の数と資格の基準です。

柱は、看護職員(常勤換算2.5以上)、管理者(常勤の保健師または看護師)、理学療法士などのリハビリ職(実情に応じた適当数)の3つです。

介護保険と健康保険はそれぞれ別の省令で基準を定めているため、細かな点に違いがあります。

看護職員は常勤換算2.5以上、うち1名は常勤

介護保険の基準は、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号。以下「居宅基準」)の第60条にあり、第1項第1号と第2項は次のとおりです。

一 病院又は診療所以外の指定訪問看護事業所(以下「指定訪問看護ステーション」という。)

イ 保健師、看護師又は准看護師(以下この条において「看護職員」という。) 常勤換算方法で、二・五以上となる員数

ロ 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士 指定訪問看護ステーションの実情に応じた適当数

2 前項第一号イの看護職員のうち一名は、常勤でなければならない。

(出典:e-Gov法令検索 居宅基準第60条)

看護職員には、保健師・看護師に加えて准看護師も含まれます。

「2.5人」は職員の頭数ではなく、勤務時間を常勤の人数に置き換えた数(常勤換算)である点がポイントです。

なお、病院・診療所が行う訪問看護は、看護職員を「適当数」置く別の区分です(第60条第1項第2号)。

介護予防訪問看護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護と一体的に運営する場合は、それぞれの人員基準を満たすことで本条の基準を満たしたものとみなす規定もあります(同条第3項〜第5項)。

管理者は常勤・専従の保健師または看護師

居宅基準第61条は、ステーションごとに、専らその職務に従事する常勤の管理者を置くことを原則としています。

管理上支障がない場合は、同じステーションの看護職員などを兼ねたり、他の事業所の職務に従事したりすることができます(同条第1項ただし書)。

資格については、次のように定められています。

2 指定訪問看護ステーションの管理者は、保健師又は看護師でなければならない。ただし、やむを得ない理由がある場合は、この限りでない。

(出典:e-Gov法令検索 居宅基準第61条)

あわせて、適切な指定訪問看護を行うために必要な知識と技能を持つことも求められています(同条第3項)。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は「実情に応じた適当数」

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、ステーションの実情に応じた適当数を置くこととされています。

東京都の令和7年度集団指導資料(訪問看護)は、この3職種について「配置しないことも可能」としています。

東京都の指定申請の注意事項は、2.5以上かどうかを確かめる常勤換算の人数から理学療法士等を除いています。

介護保険と健康保険で何が違うか

健康保険(医療保険)の訪問看護の基準は、「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」(平成12年厚生省令第80号。以下「健保の基準」)に定められています。

2つの基準を並べると、次のようになります。

項目介護保険(居宅基準)健康保険(健保の基準)
看護職員に含まれる資格保健師・看護師・准看護師保健師・助産師・看護師・准看護師
看護職員の員数常勤換算方法で2.5以上、うち1名は常勤(第60条)勤務延時間数を常勤の看護職員が勤務すべき時間数で割った数が2.5以上、うち1名は常勤(第2条)
管理者の資格保健師・看護師(やむを得ない理由がある場合の例外あり。第61条)保健師・助産師・看護師(やむを得ない理由がある場合の例外あり。第3条)
理学療法士など実情に応じた適当数実情に応じた適当数

助産師が看護職員と管理者に含まれているのは、健保の基準の側です。

助産師の方が関わる場合は、介護保険と健康保険で扱いが分かれる点に注意が必要です。

なお、介護保険の指定を受けた訪問看護事業者のうち一定の基準に該当するものは、別段の申出をしない限り、健康保険の指定もあったものとみなされます(健康保険法第89条第2項)。

常勤換算2.5の数え方|計算方法と具体例

常勤換算は、職員の勤務時間を合計し、常勤の職員1人分の時間で割って「何人分か」を数える方法です。

非常勤の職員が多いステーションでは、頭数が3人以上いても2.5に届かないことがあります。

ここでは計算の考え方と、週40時間を常勤とするステーションでの計算例を示します。

常勤換算方法とは

居宅基準第2条第8号は、常勤換算方法を次のように定義しています。

八 常勤換算方法 当該事業所の従業者の勤務延時間数を当該事業所において常勤の従業者が勤務すべき時間数で除することにより、当該事業所の従業者の員数を常勤の従業者の員数に換算する方法をいう。

(出典:e-Gov法令検索 居宅基準第2条)

厚生労働省の解釈通知は、割る数となる常勤の時間数について、32時間を下回る場合は32時間を基本とするとしています(平成11年9月17日老企第25号 第2の2⑴)。

勤務延時間数は、勤務表の上でサービスの提供やその準備(待機を含む)にあたる時間として位置づけられた時間の合計です(第261回介護給付費分科会 資料1に掲載の解釈通知の抜粋)。

そして、1人について算入できる時間は、常勤の従業者が勤務すべき時間数が上限とされています(同)。

このため、1人の常勤換算は最大1.0です。

健康保険の基準の解釈通知も、勤務延時間数に算入できる時間数は、従業者1人につき常勤の従業者が勤務すべき時間数を上限とするとしています(令和8年3月5日保発0305第20号「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」第二の1)。

東京都の指定申請の注意事項は、役員など労働基準法の適用を受けない方も同じ上限になると案内しています。

計算例|常勤の所定が週40時間のステーション

週40時間を常勤とするステーションで計算すると、次のとおりです。

例看護職員の組み合わせ勤務時間の合計(週)常勤換算2.5以上か
A常勤2人+週20時間1人100時間100÷40=2.5満たす(余裕なし)
B常勤1人+週24時間2人88時間88÷40=2.2満たさない
C常勤1人+週20時間3人100時間100÷40=2.5満たす(余裕なし)
D常勤2人+週20時間2人120時間120÷40=3.0満たす

例Aで常勤の2人が週50時間ずつ働いても、1人分は40時間までのため、合計は100時間のままです。

足りない分は、残業ではなく、看護職員の人数や勤務時間を増やして埋める必要がある計算です。

勤務表の期間(東京都の記載例では4週間分の毎日の勤務時間数)や常勤換算の端数の扱いも、手引きで確認しておくと安心です。

管理者を兼ねる場合の数え方は、手引きと事前相談で確認する

一人で始めたい方の多くは、ご自身が管理者と看護職員を兼ねる形を思い描いているのではないでしょうか。

管理者は、管理上支障がない場合、同じステーションの看護職員を兼ねることができます(居宅基準第61条第1項ただし書)。

注意したいのは、兼務する場合の管理業務の時間の数え方です。

国の解釈通知は、勤務延時間数を、その事業所の指定に係る事業のサービスに従事する勤務時間の延べ数としています(老企第25号 第2の2⑴)。

東京都の指定申請の注意事項は、看護職員と管理者を兼務する場合について、「管理業務に従事する時間については常勤換算に含むことはできません」と案内しています。

この考え方では、週40時間のうち10時間を管理業務にあてる管理者は、看護職員としては30÷40=0.75と数えます。

例Aの常勤2人のうち1人がこの管理者であれば、合計は2.25となり、2.5を下回ります。

管理業務の時間の扱いや勤務表への書き方は、指定を受ける自治体の手引きと事前相談で確認してください。

育児・介護の短時間勤務と、休業中の代わりの職員

40〜60代の看護師の方の中には、親の介護と仕事を両立している方や、そうした職員を雇う予定の方もいらっしゃるでしょう。

介護保険の解釈通知は、育児・介護・治療のための所定労働時間の短縮措置などを受けている職員について、週30時間以上の勤務で常勤換算1として扱うことを可能としています(老企第25号 第2の2⑴)。

常勤の職員が産前産後休業・育児休業・介護休業などを取得している間は、資格を持つ複数の非常勤職員を常勤換算することで、常勤の要件を満たせるとされています(同⑶)。

ここで紹介した短時間勤務と休業中の扱いは、介護保険の解釈通知の内容です。

健康保険の基準の解釈通知にも、育児・介護のための短縮措置を受けている職員を常勤として扱う規定があり(同通知第二の2)、詳しい扱いは地方厚生(支)局の案内で確認してください。

また、これらは育児・介護休業法などに基づく措置を受けている職員の扱いのため、法人の役員でもあるご自身に当てはまるかは、手引きと事前相談で確認しておくと安心です。

看護師一人で訪問看護ステーションは開業できるか

介護保険・健康保険の指定を受けるステーションとして考えると、看護職員1人の常勤換算は最大1.0のため、人員基準の2.5に届きません。

一方で、サテライトや離島などの地域のように、少ない人数で訪問看護を提供できる仕組みもあります。

ここでは、原則と例外を分けて整理します。

看護職員1人では基準を満たせない理由

理由は、2.5以上という基準と、1人あたり1.0という上限の組み合わせにあります。

常勤の看護師1人で1.0のため、残りの1.5以上を、ほかの看護職員の勤務時間でまかなう必要があります。

国は2.5について、平均的な利用人数や稼働日数、1人の看護師等の1日の訪問人数などを総合的に勘案して設定したと説明しています。

そのうえで、「訪問看護を安定的に提供することができる指定訪問看護ステーションを指定する場合の最低基準」と位置づけています(衆議院 答弁第365号、2012年8月17日受領)。

「一人で法人をつくる」と「一人で事業所を開く」は別の話

「一人開業」という言葉には、2つの意味が混ざりやすい点に注意が必要です。

1つは法人を1人で設立することで、株式会社や合同会社は1人でも設立できます。

もう1つは指定を受けたステーションを1人で運営することで、こちらに人員基準の2.5が関わります。

人員基準の条文が資格を定めているのは、管理者と、看護職員などの従業者です。

看護師の方が法人の代表者と管理者を兼ね、ほかに看護職員を確保して2.5を満たす形が考えられます。

少ない人数で訪問看護を提供できる例外的な仕組み

通常より少ない人数で訪問看護を提供できる主な仕組みに、サテライトと離島等相当サービスがあります。

仕組み内容前提・注意点
サテライト(出張所)本体のステーションと一体で運営する出張所。本体に常勤換算1.5を置けば、サテライトは常勤換算1でも訪問看護を提供できる例を厚生労働省が示している本体とサテライトを合わせて2.5以上が前提。設置の要件は自治体の手引きで確認
離島等相当サービス国が定める離島などの地域で、市町村が必要と認める場合に、指定居宅サービス等以外のサービスを保険給付の対象とする介護保険の仕組み訪問看護で2.5を1.5に緩めた例がある。健康保険の訪問看護の扱いは別に確認

厚生労働省は、事業所全体で常勤換算2.5人以上の基準を満たしていれば、サテライトを設置して訪問看護を提供できるとしています(内閣府 地方分権改革の提案募集に関する厚生労働省の資料)。

本体に常勤換算1.5名を置いていれば、サテライトは常勤換算1名の配置でも訪問看護を提供できる例も示しています(内閣府 令和2年 提案募集 厚生労働省の回答)。

東京都の指定申請の注意事項も、サテライトでの勤務時間を含めて常勤換算すると案内しています。

離島等相当サービスは、指定居宅サービスの確保が著しく困難な離島その他の地域に住む要介護者が指定居宅サービス等以外のサービスを受けた場合に、市町村が必要と認めれば給付する仕組みです(介護保険法第42条第1項第3号)。

保険者が定める地域独自の基準として、訪問看護の看護職員を常勤換算1.5人以上とした例が示されています(第261回介護給付費分科会 資料1、2026年7月23日)。

この例でも、看護職員1人分(1.0)を上回る人数が必要です。

同じ資料によると、サービスの種類を問わず離島等相当サービスを実施している保険者は、令和5年度時点で17都道県の27保険者(全保険者の1.7%)です(出典は令和2年度老人保健健康増進等事業の報告書と令和5年度介護保険事務調査)。

対象地域で開業を考える方は、市町村の介護保険担当課で実施の有無を確認することになります。

なお、令和9年(2027年)4月1日からは、この規定が介護保険法第42条第1項第4号に移ります。

かつて被災地で認められた「一人開業」の特例

東日本大震災の被災地では、2011年(平成23年)に、看護職員を常勤1人以上とする特例措置が設けられました。

厚生労働省の資料によると、特例を利用した事業所はあったものの、書類の不備や記録の未実施など1人での対応が困難となり、結果的に常勤換算2.5人以上の通常の指定を受けることになったとされています(内閣府 地方分権改革の提案募集に関する厚生労働省の資料)。

その後、2013年(平成25年)3月8日の介護給付費分科会で現行の基準を維持すべきとの結論が出され、特例は廃止されました(同資料、第213回介護給付費分科会 資料4)。

2027年4月の「特定地域サービス」と訪問看護

「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)により、中山間・人口減少地域で配置基準を弾力化できる「特定地域サービス」が創設され、令和9年(2027年)4月1日に施行されます(施行日は原則。第261回 資料1)。

2026年7月23日の介護給付費分科会では、配置基準の弾力化について、訪問介護・訪問入浴介護・通所介護・短期入所生活介護・福祉用具貸与・居宅介護支援、施設サービス、特定施設入居者生活介護を念頭に置いて検討する案が示されました(同資料1)。

同じ回では、委員から医療系サービスが対象に入っていない理由を問う質問があり、事務局は今後の意見を踏まえて検討すると回答しています(第261回議事録)。

訪問看護の人員基準がこの仕組みの中でどう扱われるかは、今後の分科会の議論と省令・通知で確認する必要があります。

開業前に自治体へ確認したいこと

人員基準の考え方は国の省令で決まっていますが、指定にあたって実際に確認するのは、指定を受ける自治体です。

細かな運用は自治体の手引きに書かれていることが多いため、申請の準備を始める前に手引きを読み、事前相談で確かめておくと安心です。

看護職員の員数は、条例でも国の基準に従って決まる

介護保険の指定基準は都道府県などの条例で定められますが、従業者の員数は厚生労働省令で定める基準に「従い」定めるものとされています(介護保険法第74条第3項第1号)。

地方からはこれを「参酌すべき基準」に見直す提案がありましたが、国は2023年1月の介護給付費分科会で「従うべき基準」を維持する対応案を示しています(第213回 資料4)。

厚生労働省の令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)の問183は、いわゆるローカルルールについて、自治体は事業者から説明を求められた場合に必要性を説明できるようにする必要があるとしています。

同じ問は、管理者の兼務を個別の事業所の実態を踏まえず一律に認めない取扱いは適切でない、としています。

手引きと事前相談で確認する項目

人員基準について確認しておきたい主な項目は、次のとおりです。

  • 常勤の所定労働時間を週何時間とするか(就業規則との関係)
  • 管理者が看護職員を兼ねる場合の、管理業務の時間の数え方
  • 常勤換算の端数の扱いと、勤務形態一覧表の様式・期間
  • 申請時点で採用予定の職員をどう記載し、資格証の写しをいつ出すか
  • 短時間勤務の職員やサテライトを置く場合の扱い
  • 指定前の研修の有無(東京都は、申請前に管理者または法人代表者の新規指定前研修の受講を求めています)
  • 自治体独自の運用(いわゆるローカルルール)の有無と、その理由

自宅を事務所にする場合の設備基準

居宅基準第62条は専用の事務室を求め、同じ敷地内に他の事業所などがある場合は専用の区画で足りるとしています。

健保の基準第4条も、他の事業の事業所を兼ねる場合は専用の区画で足りるとしています。

東京都の指定申請の注意事項は、自宅と併設する場合に、同居家族などに利用者の秘密が漏れないよう、必要に応じて間仕切りや専用の部屋を設けることを求めています。

自宅の一室で始められるかは自治体が判断するため、間取り図を用意して事前相談で確認しておくと安心です。

開業後に人員基準を下回ったとき

人員基準は、指定を受けた後も満たし続ける必要があります。

退職や休職で2.5を下回ると、事業を続けられなくなるおそれがあります。

ここでは、法律上の扱いと、欠員が出たときの対応を整理します。

基準は指定を受けた後も満たし続ける必要がある

介護保険法では、人員が条例で定める員数を満たしていない場合、都道府県知事は期限を定めて基準を満たすよう勧告できます(第76条の2第1項第2号)。

期限内に勧告に従わなかったときは公表、正当な理由なく勧告に係る措置をとらなかったときは命令の対象になりえます(同条第2項・第3項)。

員数を満たすことができなくなったときは、指定の取消しや効力の停止の対象にもなりえます(第77条第1項第3号)。

健康保険法でも、従業者が省令で定める員数を満たすことができなくなったときは、指定の取消しの対象になりえます(健康保険法第95条第1号)。

東京都の指定申請の注意事項は、猶予期間について次のように案内しています。

Q2 人員配置基準を満たさないまま運営を続けてもよいという猶予期間はあるか?

A2 運営基準に定められている人員配置基準は、常に満たさなければなりません。猶予期間というものもありません。

(出典:東京都 新規指定申請書類の記載例・注意事項(訪問看護、令和6年4月版))

退職や休職が出たときにできること

欠員が出たときに考えられる主な対応は、次のとおりです。

  • 欠員の見込みが分かった時点で、指定を受けた自治体(健康保険の指定は地方厚生(支)局)に早めに相談する
  • 非常勤職員の勤務時間を増やす、または新たに採用して、常勤換算2.5以上を回復する
  • 介護保険では、常勤の職員が産前産後休業・育児休業・介護休業など、解釈通知に列挙された休業を取得している間に限り、必要な資格を持つ複数の非常勤職員を常勤換算して常勤の要件を満たす扱いがある(健康保険の扱いは地方厚生(支)局に確認する)
  • 回復の見込みが立たない場合は、事業の休止や廃止を届け出る

届出の時期は、制度によって異なります。

届出介護保険(介護保険法第75条)健康保険(健康保険法第93条)
休止・廃止休止・廃止の日の1月前までに都道府県知事へ10日以内に厚生労働大臣へ
再開・変更10日以内に都道府県知事へ10日以内に厚生労働大臣へ

介護保険は休止・廃止の前に、健康保険は休止・廃止の後10日以内に届け出る点が異なります。

介護保険の休止・廃止は1月前までの届出が求められているため、補充できるかどうかの見極めと並行して、自治体への相談を早めに始めておくと安心です。

健康保険の届出の窓口は地方厚生(支)局で、介護保険の届出先は指定を受けた自治体です(指定都市などでは市が窓口になっています)。

介護保険では、休止・廃止の届出をしたときに、利用者が必要なサービスを引き続き受けられるよう、関係者との連絡調整を行うことも求められています(介護保険法第74条第5項)。

欠員が出たときの立て直し方は、訪問看護ステーションの立ち上げで失敗しやすい8つのパターンでも取り上げています。

40〜60代の看護師が人員計画を立てるときの考え方

人員基準を満たすことは、開業の入口です。

40〜60代で開業する方にとっては、ご自身の体力や家族の事情も含めて、無理なく続けられる人員計画を立てることが大切です。

ご自身を「常勤1.0」と決め込まない

管理者を兼ねる方は、訪問のほか、請求や職員の勤務管理といった管理業務も担います。

東京都の指定申請の注意事項の考え方では、管理業務に従事する時間は看護職員の常勤換算に含めません。

一方で、勤務延時間数には、勤務表上、サービス提供のための準備や待機として明確に位置づけられた時間も含まれます。

ケアマネジャーや医療機関との連絡についても、業務の内容と勤務表上の位置づけを整理し、算入できる範囲を指定を受ける自治体に確認しておくと安心です。

50代で病棟の看護師長を務めてきた方や、60代を前に独立を考える方であれば、ご自身の訪問は少なめに見積もり、その分を職員の勤務時間で補う計画が現実的です。

親の介護を抱えている方は、ご自身が急に動けなくなる場面も想定しておくと安心です。

2.5ちょうどではなく、余裕を見て計画する

健康保険の基準の解釈通知は、2.5について「職員の支援体制等を考慮した最小限の員数」としたうえで、利用の状況や業務量を考慮して適切な員数を確保するものとしています(令和8年3月5日保発0305第20号)。

例Aで週20時間の職員が退職すると、常勤換算は2.0になります。

鳥取県が国に出した提案でも、常勤換算2.5人の事業所について、退職者が出ると休止せざるを得ない事業所が潜在的にあると指摘されています(第213回 資料4)。

例Dのように3.0程度を確保しておくと、週20時間分の職員が1人抜けても2.5を保てます。

一緒に始める仲間と役割を決めておく

誰が「うち1名は常勤」を担い、誰が非常勤で週何時間働くのかを、開業前に具体的に決めておくことが大切です。

元の職場の同僚や、定年後も短時間で働きたい看護師など、同じ世代の看護職員は心強い仲間になります。

勤務時間の約束が人員基準に直結するため、雇用契約書や労働条件通知書で週の所定労働時間を明確にしておきましょう。

雇用契約や社会保険・労働保険の手続きも採用と同時に必要になり、内容は年金事務所やハローワークなどの窓口で確認できます。

よくある疑問

訪問看護の人員基準について、検索されることの多い疑問をまとめます。

Q1. 准看護師は人員に数えられますか?管理者になれますか?

准看護師は、介護保険・健康保険のどちらでも看護職員に含まれ、常勤換算2.5の計算に入ります。

管理者は、介護保険では保健師または看護師、健康保険では保健師・助産師・看護師と定められています。

どちらにもやむを得ない理由がある場合の例外がありますが、個別に判断されるため、介護保険は指定を受ける自治体、健康保険は地方厚生(支)局に確認してください。

Q2. 理学療法士を雇えば、看護師が少なくても開業できますか?

常勤換算2.5の計算に入るのは、看護職員の勤務時間です。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、看護職員の2.5とは別に、実情に応じた適当数を置く職種です。

Q3. 保険を使わない自費の訪問サービスなら、一人で始められますか?

介護保険・健康保険の指定を受けずに行う保険外のサービスは、本記事の人員基準とは別の枠組みで考えることになります。

ただし、看護師が行う行為には、主治の医師または歯科医師の指示が必要なものがあるなど、資格に関する別の決まりがあります(保健師助産師看護師法第37条。臨時応急の手当などの例外あり)。

看護師の資格でできることの範囲は、看護師の起業|経験を活かせる事業と資格でできること・できないことで整理しています。

Q4. 人員基準を満たせば、指定を受けられますか?

人員基準は、指定を受けるための要件の一つです。

指定にあたっては、申請者の要件(介護保険は都道府県の条例で定める者、健康保険は地方公共団体・医療法人・社会福祉法人その他厚生労働大臣が定める者)、設備や運営の基準、欠格事由に当たらないことなども審査されます(介護保険法第70条第2項、健康保険法第89条第4項)。

指定は、介護保険は都道府県など、健康保険は厚生労働大臣が行います。

人員以外の要件や申請の流れは、訪問看護ステーションの立ち上げ|開業までの8ステップと指定申請で整理しています。

まとめ

本記事では、訪問看護の人員基準と、看護師一人で開業できるかについて整理しました。

  • 指定を受けるには、看護職員を常勤換算で2.5以上(うち1名は常勤)置き、常勤の管理者を置くことが国の基準です(健康保険では助産師も含む)。
  • 常勤換算は1人1.0が上限で、管理者を兼ねる場合の管理業務の時間の扱いは自治体の手引きで確認が必要です。
  • 看護職員1人では2.5に届きませんが、サテライトや離島等相当サービスのように少ない人数で提供できる仕組みもあり、それぞれ本体のステーションや対象地域であることが前提です。
  • 2027年4月施行の特定地域サービスで訪問看護がどう扱われるかは、今後の議論を確認する必要があります。
  • 基準は指定後も満たし続ける必要があり、欠員の見込みが分かったら早めに自治体へ相談することが大切です(介護保険の休止・廃止は1月前までの届出)。

ご自身の働き方と、一緒に始める仲間の顔ぶれを思い浮かべながら、無理なく続けられる体制を考えてみてください。


※本記事は2026年10月時点の法令・通知・自治体資料に基づき作成しています。

最新の基準はe-Gov法令検索や、指定を受ける自治体の手引きでご確認ください。

個別の事案については、指定の窓口(都道府県・市の介護保険担当課、地方厚生(支)局)や、行政書士などの専門家へのご相談を推奨します。

よこぜき行政書士事務所