はじめに

看護師として長く働いてきた40代から60代の方の中には、収入を補うためや、定年後の働き方に備えるために、副業を考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

一方で、「看護師は副業禁止」「副業は職場にバレる」といった話を耳にして、気になっている方もいるかもしれません。

看護師の副業ができるかどうかは、主に、勤務先が公務員の職場かどうかと、勤務先の就業規則によって決まります。

同じ「看護師の副業」でも、公立病院に勤める方と民間のクリニックに勤める方とでは、確認する決まりも手続きも異なります。

この記事では、副業が禁止・制限される場合の見分け方、副業が勤務先に知られる5つの経路、副業を始める前に確認する手順を、法律と公的な資料に沿って整理します。

勤務先に知られないための方法ではなく、決まりに沿って副業を始めるための情報としてお読みください。

結論|看護師の副業は「勤務先の種類」と「許可・就業規則」で決まります

看護師の副業は、公務員として働いている場合は法律にもとづく許可制(パートタイムの会計年度任用職員など一部を除きます)、それ以外の場合は勤務先の就業規則によって扱いが決まります。

まずは、ご自身の勤務先がどちらに当たるのかを確かめることが出発点になります。

勤務先の種類でわかる副業ルールの早見表

主な勤務先ごとに、副業のルールの根拠をまとめると次のとおりです。

勤務先の例職員の身分ルールの根拠副業の前に必要なこと
都道府県・市町村などが運営する公立病院地方公務員地方公務員法第38条任命権者の許可(パートタイムの会計年度任用職員は対象外)
特定地方独立行政法人が運営する病院地方公務員地方公務員法第38条任命権者の許可(同上)
国の機関が直接運営する医療施設(国立ハンセン病療養所など)国家公務員(一般職)国家公務員法第103条・第104条承認または許可(営利企業の従業員としての兼業は原則として認められない取扱い)
国立病院機構の病院法人の職員法人の就業規則などの規程規程の定めによる
国立大学病院法人の職員大学の就業規則・兼業規程規程の定めによる
一般地方独立行政法人が運営する病院法人の職員法人の就業規則規程の定めによる
民間の病院・クリニック・訪問看護・介護施設など民間の従業員勤務先の就業規則規程の定めによる

病院の名前に「国立」「県立」「市立」が付いていても、運営している法人によって職員の身分は異なります。

ご自身の身分は、雇用契約書や辞令などに記載された法人名で確かめることができます。

法律で副業に許可が必要とされるのは、主に「公務員として働く看護師」です

公務員として働く看護師の副業は、法律によって制限されています。

ただし、その制限は一律の禁止ではなく、任命権者などの許可を受ければ認められる「許可制」です。

対象になる人の範囲にも例外があるため、順に確認していきます。

公立病院の看護師|地方公務員法第38条は「許可制」

都道府県や市町村などが運営する公立病院の看護師は、地方公務員として地方公務員法の適用を受けます。

副業(兼業)について定めているのは、同法第38条第1項です。

職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。

(出典:e-Gov法令検索「地方公務員法」第38条第1項)

この条文が許可の対象としているのは、次の3つです。

  • 営利企業の役員などの地位を兼ねること
  • 自ら営利企業を営むこと
  • 報酬を得て事業や事務に従事すること

病院の夜勤アルバイトや健診のアルバイトのように、報酬を受け取って働く場合は、3つ目に当たると考えられます。

講演料や原稿料などの謝礼を報酬に含めて許可基準を定めている自治体の例もあるため、勤務先の許可基準で扱いを確認してください(出典:総務省「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について(通知)」の別添資料)。

条文は「許可を受けなければ〜してはならない」という形で、許可を受けた場合には従事できる仕組みになっています。

公立病院が地方公営企業として運営されている場合も、看護師は企業職員として地方公務員法の適用を受け、第38条の許可が必要です(地方公営企業法第39条第1項が企業職員について適用を除いている規定に、第38条は含まれていません)。

パートの方・再任用の方は扱いが分かれます

第38条第1項のただし書きは、非常勤職員を許可の対象から外しています。

そのうえで、短時間勤務の職を占める職員と、第22条の2第1項第2号に掲げる職員(フルタイムの会計年度任用職員)は、ただし書きの対象から除かれています。

整理すると、扱いは次のように分かれます。

任用の形第38条の許可
常勤の職員必要
フルタイムの会計年度任用職員(第22条の2第1項第2号)必要
定年前再任用短時間勤務職員など、短時間勤務の職を占める職員必要
パートタイムの会計年度任用職員(第22条の2第1項第1号)不要(ただし書きの対象)

公立病院で非常勤として働いている方は、ご自身がどの任用の形に当たるのかを、辞令や任用通知書で確かめておきましょう。

60歳以降に定年前再任用短時間勤務職員として働いている方や、定年引上げの経過措置として再任用されている方(暫定再任用職員)も、許可が必要な側に入ります(地方公務員法の一部を改正する法律(令和3年法律第63号)附則第4条・第6条)。

許可が不要なパートタイムの方でも、秘密を守る義務(第34条)や信用失墜行為の禁止(第33条)は適用されます。

兼業の届出など、勤務先独自の手続きが定められていないかも、人事担当に確認しておくと確実です。

2025年6月の総務省通知で、許可基準の整備が進んでいます

総務省は2025年(令和7年)6月11日、地方公務員の兼業の許可について留意事項を示す通知を出しました。

通知では、営利企業の従業員としての兼業も一律に禁止するのではなく、基本的な原則を満たす場合には、任命権者の判断で認めることが可能だと示されています。

基本的な原則とは、職務の能率が下がるおそれがないこと、利害が対立するおそれがなく職務の公正を妨げるおそれがないこと、職員と職務の品位を損なうおそれがないこと、の3点です。

あわせて、兼業する時間の上限を定めることや、許可基準を公表することも求めています。

(出典:総務省「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について(通知)」令和7年6月11日 総行公第72号)

許可の基準や手続きは自治体ごとに定められているため、勤務先の人事担当や病院局の案内で、時間の上限や申請の時期を確認しておきましょう。

国の医療施設で働く看護師|国家公務員法第103条・第104条

国の機関が直接運営する医療施設(たとえば、厚生労働省の施設等機関である国立ハンセン病療養所)で、一般職の国家公務員として働く看護師は、国家公務員法の適用を受けます(出典:厚生労働省 国立療養所多磨全生園の採用案内)。

同法第103条は、営利企業の役員などを兼ねることや自ら営利企業を営むことを制限し、人事院規則の定めにより人事院の承認を得た場合には適用しないとしています。

第104条は、報酬を得て事業や事務に従事する場合に、内閣総理大臣と所轄庁の長の許可が必要であると定めています。

2025年(令和7年)6月の総務省の通知は、国家公務員の場合、営利企業の従業員としての兼業(報酬あり)は、原則として認められていないと説明しています(出典:総務省、前掲通知)。

自ら事業を営む「自営兼業」については、人事院が2026年(令和8年)4月1日から、職員の知識・技能をいかした事業と、社会貢献に資する事業を、承認できる事業に加えました(出典:人事院「自営兼業制度の見直しについて」令和7年12月19日)。

申請や承認の手続きは、所属する府省の窓口で確認してください。

「国立」「公立」の名前でも、公務員とは限りません

国立や公立の名前を持つ病院でも、運営する法人の種類によって、職員の身分と副業のルールの根拠が変わります。

病院の名前だけでは判断できないため、間違えやすい4つのケースを整理します。

国立病院機構の病院

国立病院機構は、2004年(平成16年)4月に特定独立行政法人として設立され、2015年(平成27年)4月に中期目標管理法人へ移行しました(出典:独立行政法人国立病院機構「平成27年度事業報告書(別冊2)」)。

独立行政法人のうち、役員と職員が国家公務員とされるのは「行政執行法人」であり(独立行政法人通則法第51条)、国立病院機構は中期目標管理法人とされています(独立行政法人国立病院機構法第4条)。

このため、現在の国立病院機構の職員は国家公務員ではありません。

副業・兼業の扱いは、「独立行政法人国立病院機構職員就業規則」などの機構の規程にもとづくため、所属する病院の人事担当で確認してください。

国立病院機構では、無届で兼業を行っていた看護師を、この就業規則にもとづいて戒告処分とした事例も公表されています(出典:国立病院機構近畿グループの懲戒処分の公表2026年5月29日)。

国立大学病院

国立大学病院は、それぞれの国立大学法人が運営しています。

職員の兼業は、大学ごとの就業規則や兼業規程で定められています(例:島根大学「職員兼業規程」)。

許可の手続きや対象は大学によって異なることがあるため、所属する大学の規程を確認してください。

地方独立行政法人が運営する病院|「特定」かどうかで分かれます

公立病院の中には、地方独立行政法人が運営する病院もあります。

地方独立行政法人のうち、職員に地方公務員の身分を与える必要があるものとして、地方公共団体が定款で定めたものを「特定地方独立行政法人」といいます(地方独立行政法人法第2条第2項)。

特定地方独立行政法人の職員は地方公務員であり(同法第47条)、一部の読み替えはあるものの、地方公務員法第38条第1項の許可制が適用されます(同法第53条)。

それ以外の地方独立行政法人(一般地方独立行政法人)の職員の副業は、法人の就業規則で定められます。

どちらに当たるかは、法人の定款やホームページの法人概要で確かめることができます。

「みなし公務員」は、兼業の許可制とは別の規定です

国立病院機構や国立大学法人の職員は、「みなし公務員」と呼ばれることがあります。

これは、刑法などの罰則を適用する場面で、職員を公務に従事する職員とみなすという規定です。

機構の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

(出典:e-Gov法令検索「独立行政法人国立病院機構法」第14条)

国立大学法人法第19条にも、国立大学法人の役員と職員について同じ内容の規定があります。

これらの条文は罰則の適用についての定めであり、副業・兼業の許可について定めたものではありません。

民間病院・クリニックなどでは「就業規則」で決まります

民間の病院やクリニック、訪問看護ステーション、介護施設などに勤める看護師の副業は、勤務先の就業規則で扱いが決まります。

ここでは、医療機関で働く方に関わりの深い点に絞って整理します。

会社員の副業に共通する注意点は、正社員が「副業」を始める前に知っておきたい7つの注意点でまとめています。

就業規則で副業を制限できる4つの場合

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、裁判例では、労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であり、企業が制限できるのは、例えば次の場合と解されているとしています。

  • 労務提供上の支障がある場合
  • 業務上の秘密が漏洩する場合
  • 競業により自社の利益が害される場合
  • 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」令和4年7月改定)

医療機関で働く看護師の場合、この4つは、たとえば次のような場面に当てはめて考えることができます。

  • 夜勤明けや連続勤務の前後に副業を入れ、本業の勤務に疲労が残る(労務提供上の支障)
  • 患者さんの情報や、勤務先の内部の情報を副業先で話してしまう(業務上の秘密)
  • 近隣の同じ診療科のクリニックで働き、本業の勤務先の正当な利益を害する(競業)
  • SNSなどで勤務先の評判を損なう発信をする(名誉・信用)

ただし、ガイドラインは、勤務先の正当な利益が侵害されない場合には、同じ業種・職種であっても副業・兼業を認めるべき場合も考えられるとしています。

なお、看護師には、業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない義務が、資格を持つ者として課されています(保健師助産師看護師法第42条の2)。

この義務は、勤務先が副業を認めているかどうかに関係なく、看護師でなくなった後も続きます。

「許可制」「届出制」「禁止」のどれかを就業規則で確かめます

日本看護協会の「2023年 病院看護実態調査」によると、正規雇用看護職員の副業・兼業に関する規定の整備状況は、次のとおりでした。

規定の整備状況割合
副業・兼業の許可に関する規定がある44.3%
副業・兼業を全面的に禁止する規定がある35.8%
副業・兼業に関する規定はない19.4%
無回答・不明0.5%

(出典:日本看護協会「2023年 病院看護実態調査 報告書」表88)

この調査は、設置主体を問わず全国の病院8,130施設(全数)の看護部長を対象に2023年10月1日から11月14日に行われ、有効回答は3,699施設(有効回収率45.5%)でした。

この数字は病院ごとの規定の有無を示したもので、許可の規定がある病院で実際に副業が許可されているかどうかを示したものではありません。

許可に関する規定がある1,639施設のうち、許可にあたって規定している内容として「副業・兼業の届出があること」を挙げた病院は88.8%でした(同 表89)。

就業規則は、労働基準法第106条により、使用者が労働者に周知しなければならないものとされています。

就業規則の副業・兼業の条項や、別に定められた兼業規程を読み、許可制か、届出制か、禁止かを確かめましょう。

規定が見当たらない場合も、副業が自由に認められていると判断せず、上司や人事担当に確認しておくと安心です。

副業の形によって、確認することが変わります

看護師の副業には、看護の仕事をする副業と、看護以外の仕事をする副業があります。

看護以外の仕事であっても、勤務先の就業規則や許可制の対象になることがあり、契約の形によって確認することが変わります。

副業の形例主に確認すること
雇用されて働く夜勤や健診、ワクチン接種会場、イベント救護のアルバイト、スポットワーク就業規則の手続き、労働時間の通算、住民税・社会保険
派遣で働く派遣会社を通じた単発・短期の仕事日雇派遣の規制、医療機関などへの派遣の規制
業務委託で働く医療記事の執筆・監修、研修講師就業規則の手続き、守秘義務、確定申告
自分で事業を営む健康相談や講座、教材の販売就業規則の手続き、開業の手続き

厚生労働省のリーフレットでは、「スポットワーク」を、短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くこととしています(出典:厚生労働省「いわゆる『スポットワーク』における留意事項等をとりまとめたリーフレット」令和7年7月4日)。

アプリなどで単発の仕事を受ける場合も、雇用されて働く副業として扱いを確認しておく必要があります。

派遣で働く場合は、勤務先のルールとは別に、労働者派遣法の規制を確認します。

日々または30日以内の期間を定めて雇用される「日雇派遣」は、原則として禁止されています(労働者派遣法第35条の4)。

例外には、60歳以上の方、主たる仕事の収入(生業収入)が500万円以上で副業として日雇派遣で働く方、世帯収入が500万円以上で主たる生計者ではない方などがあり、派遣会社が雇用管理上必要な措置を講じていることが前提になります(労働者派遣法施行令第4条第2項、同法施行規則第28条の3)。

厚生労働省の業務取扱要領では、生業収入は主たる業務の収入とされ、複数の仕事をしている場合は収入額が最も高い仕事が主たる業務になります(出典:厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領の改正内容」)。

また、病院や診療所のほか、介護老人保健施設や介護医療院、訪問看護などの居宅で行う看護業務への派遣も、日雇派遣かどうかにかかわらず、原則として禁止されています(労働者派遣法第4条第1項第3号、同法施行令第2条第4号)。

例外として、紹介予定派遣や、産前産後休業・育児休業・介護休業を取る方の代わりとして働く場合、へき地の医療機関などで働く場合があります(同令第2条)。

派遣の規制の詳しい内容は、フリーランス看護師とは|業務委託・派遣との違いと契約の注意点で解説しています。

執筆や講師などを業務委託で受ける場合や、自分で事業を営む場合について、ガイドラインは、フリーランスや起業など労働基準法が適用されない働き方は労働時間の通算の対象にならないとしています。

一方で、勤務先の就業規則の手続きや守秘義務は、雇用されて働く副業と同じように関わります。

自宅で小さく事業を始める方法は、看護師のプチ起業|在宅でできる5つの型と6つの手順でまとめています。

看護師の副業が勤務先に知られる5つの経路

副業が勤務先に知られるきっかけには、税金や社会保険、労災の手続きなど、制度上の書類の流れによるものがあります。

ここでは、5つの経路を仕組みとして整理します。

いずれも、隠すための知識ではなく、許可や届出をしたうえで副業を続けるために知っておきたい仕組みです。

① 住民税|給与で受け取る副業の分は、本業の住民税とあわせて計算されます

住民税は、前年の所得をもとに、お住まいの市区町村が計算します。

給与の支払者は、毎年1月31日までに前年分の「給与支払報告書」を従業員の住所地の市区町村に提出し、市区町村は計算した税額を「特別徴収税額通知」で給与の支払者に通知します(出典:埼玉県「個人住民税の給与からの特別徴収について」)。

副業も給与で受け取っている場合、住民税は原則として本業分と合算して計算され、本業の勤務先から給与天引き(特別徴収)されます(地方税法第321条の3)。

西宮市は、勤務先には各従業員の年税額と毎月の徴収額が通知されるため、本業の給与以外の所得が極端に多額であった場合は副業を疑われる可能性があると案内しています(出典:西宮市「副業分を納付書(普通徴収)で納めたい場合」)。

同じページでは、通知からは所得の種類までは分からないことも説明されています。

また、西宮市や蓮田市は、複数の会社から給与を得ている場合に、一部の給与の分だけを本人の納付に分けることはできないと案内しています(出典:西宮市、同上/蓮田市「給与所得が複数ある場合、副業分を分けて自分で納付することはできますか」)。

副業先が給与支払報告書に「他の事業所で特別徴収(乙欄該当者)」という普通徴収切替理由を記載する場合も、その給与分は本業の給与と合算して特別徴収される扱いで、副業分を本人が別に納付できるという意味ではありません(出典:板橋区「普通徴収切替理由書(兼仕切書)のご案内」)。

扱いに不安がある場合は、お住まいの市区町村に確認してください。

給与以外の所得(事業所得や雑所得など)は、確定申告書の第二表にある「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」の欄で、「自分で納付」を選ぶことができます(出典:西宮市、前掲)。

給与を1か所から受けていて、副業が業務委託や自営などの場合は、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えると、所得税の確定申告が必要とされています(出典:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」)。

給与を2か所以上から受けている方は、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える場合に、確定申告が必要とされています(同)。

ただし、給与の収入金額の合計額から所得控除の合計額(雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除く)を差し引いた金額が150万円以下で、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下の方は、申告は不要とされています(同)。

これらは、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合の基準です。

所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は必要になることがあります。

たとえば広島市は、給与所得以外の所得が20万円以下のため所得税の確定申告が不要な人も、市民税・県民税の申告書の提出が必要と案内しています(出典:広島市「申告先・申告期限・申告の必要性等(住民税)」)。

お住まいの市区町村の案内も確認してください。

住民税で副業が知られる仕組みは、住民税の「特別徴収」で副業がバレる仕組みで詳しく解説しています。

② 社会保険|副業先でも加入すると、両方の勤務先に通知が届きます

副業先でパートとして働く場合、働き方によっては、副業先でも健康保険と厚生年金保険に加入することがあります。

日本年金機構によると、特定適用事業所などに勤める方で、1週間の所定労働時間または1月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満である方のうち、週の所定労働時間が20時間以上で学生でない方は、短時間労働者として加入の対象になります(出典:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」2026年10月1日更新)。

なお、日々雇い入れられる方や、2か月以内の期間を定めて使用され、その期間を超えて使用されることが見込まれない方などは、加入の対象から除かれます(健康保険法第3条第1項第2号、厚生年金保険法第12条第1号)。

ただし、日々雇い入れられる方が1か月を超えて、また2か月以内の期間を定めて使用される方がその期間を超えて、引き続き使用されるようになった場合は、加入の対象になります(同)。

特定適用事業所とは、厚生年金保険の被保険者数が51人以上となることが見込まれる企業などのことで、2027年(令和9年)10月からは36人以上、2029年(令和11年)10月からは21人以上、2032年(令和14年)10月からは11人以上の企業などに対象が広がります(出典:日本年金機構、同上)。

国や地方公共団体に属する事業所は、被保険者数にかかわらず、短時間労働者が加入の対象になります(同)。

2026年(令和8年)10月からは、短時間労働者の加入要件のうち、月額8.8万円以上という賃金の要件がなくなりました(出典:厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年10月)について」)。

本業と副業先の両方で加入の要件を満たした場合は、本人が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を、事実発生から10日以内に日本年金機構へ提出します(出典:日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」)。

標準報酬月額は、それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算して決まり、保険料は各事業所の報酬月額に応じて按分され、決定した内容はそれぞれの事業所へ通知されます(同)。

このため、副業先でも社会保険に加入する働き方をすると、本業の勤務先も、複数の事業所で加入していることを知ることになります。

健康保険組合に加入している事業所を選んだ場合は、その健康保険組合での手続きも必要です(同)。

本業が国や地方公共団体の短時間勤務職員で共済組合の短期給付の適用を受けている方は、国などの事業所を選択する必要があるなど扱いが異なるため、勤務先の窓口で確認してください(同)。

なお、健康保険・厚生年金保険の加入要件は事業所ごとに判断され、どの事業所でも要件を満たさない場合は、労働時間などを合算して要件を満たしたとしても加入の対象にはならないとされています(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。

③ 労働時間の通算|雇用されて働く副業は、本業への申告が前提になります

雇用されて働く副業では、本業と副業先の労働時間が通算されます。

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」第38条第1項)

ガイドラインは、「事業場を異にする場合」には事業主を異にする場合も含むとしています。

あわせて、使用者は労働者からの申告等により副業・兼業の有無や内容を確認し、他の使用者の事業場での労働時間も、労働者からの申告等により把握して通算するとしています(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。

そのため、就業規則で、副業の届出や副業先での労働時間の報告を求めている勤務先もあります。

フリーランスや起業など、労働基準法が適用されない働き方は、労働時間の通算の対象にはなりません(同)。

また、管理監督者など、労働基準法は適用されても労働時間の規制が適用されない立場で働く場合も、その時間は通算されないとされています(同)。

ただし、その場合も、申告などにより就業時間を把握し、長時間にならないよう配慮することが望ましいとされています(同)。

副業・兼業の労働時間の扱いについては、労働政策審議会労働条件分科会で議論が続いており、2026年(令和8年)9月16日の第211回会合で示された今後の議論の進め方(案)にも「副業・兼業」が含まれています(出典:厚生労働省「労働条件分科会における今後の議論の進め方(案)について」第211回 資料No.2-1)。

制度が変わった場合は扱いも変わるため、副業を始める時点の勤務先のルールと、厚生労働省の案内を確認してください。

④ 労災|副業先でけがをすると、本業の勤務先の証明が必要になることがあります

本業と副業先の両方に雇用されている方が、仕事や通勤でけがをした場合、労災保険の給付は、すべての勤務先の賃金額を合算した額をもとに算定されます(出典:厚生労働省「複数事業労働者への労災保険給付 わかりやすい解説」)。

休業補償などを請求する際には、請求書の「その他就業先の有無」の欄を記入し、就業先ごとに別紙を記入して事業場の証明を受けたうえで提出するよう案内されています(同)。

このため、副業先でのけがで休業補償などを請求する場合、本業の賃金もあわせて給付額を算定するには、本業の勤務先にも証明を依頼することになります。

ただし、地方公務員の方には原則として地方公務員災害補償法が適用され、民間の兼業先で適用される労災保険とは、賃金額を合算して補償額を算定することができないとされています(出典:総務省、前掲通知の別添1「地方公務員の働き方に関する分科会」報告書)。

⑤ 人づて・SNS・同じ地域の医療機関

制度上の書類の流れとは別に、人を通じて知られることもあります。

たとえば、副業先の医療機関や介護施設が本業の連携先であったり、同じ地域で患者さんや同僚と顔を合わせたりする場面が考えられます。

また、SNSでの発信や、看護師としての経験を書いた記事から、勤務先が特定されることもあります。

発信の内容によっては、守秘義務や勤務先の信用に関わる問題になることもあるため、公開する前に内容を見直しておくことをおすすめします。

許可・届出なしの副業が知られた場合の扱い

許可や届出が必要な副業を、手続きをせずに行っていた場合の扱いは、公務員と民間とで根拠が異なります。

ここでは、処分の根拠になる規定を確認しておきます。

地方公務員の場合|懲戒処分の対象になることがあります

地方公務員法第29条第1項は、職員が同法に違反した場合などに、懲戒処分として戒告、減給、停職または免職の処分をすることができると定めています。

許可を受けずに第38条の兼業を行った場合は、この懲戒処分の対象になることがあります。

総務省の通知も、許可基準が明確でなく、許可を得ずに兼業を行ったために懲戒処分に至るといった事案を防ぐため、許可基準を公表・周知することが重要だとしています(出典:総務省、前掲通知)。

処分の内容は、任命権者が個別の事情をふまえて判断します。

国家公務員の方は、懲戒の扱いも含めて、所属する府省の規程と窓口で確認してください。

民間の場合|就業規則の定めと、個別の事情で判断されます

民間の勤務先では、就業規則の懲戒の規定に沿って扱いが判断されます。

ガイドラインは、裁判例では、許可等の手続きを求める就業規則に形式的に抵触したとしても、職場秩序に影響せず、労務提供に支障を生じさせない程度・態様のものは禁止違反に当たらないとし、懲戒処分を認めていないと紹介しています(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。

ただし、これは手続きをしなくてもよいという意味ではありません。

処分が妥当かどうかは個別の事情によって異なるため、争いになった場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーや弁護士などの専門家に相談することになります。

なお、副業の収入にかかる所得税や住民税の申告は、勤務先のルールとは別に、法律上の手続きとして必要になるものです。

副業を始める前に確認する5つの手順|40〜60代の看護師の方へ

ここまでの内容をふまえて、副業を始める前に確認しておきたいことを順番に整理します。

いきなり仕事を受けるのではなく、確認と手続きを先に済ませておくと、後から困ることを減らせます。

1. 勤務先の運営形態と、ご自身の任用・雇用の形を確かめる

勤務先が公務員の職場か、法人や民間の職場かを、雇用契約書や辞令で確かめます。

公立病院で働く方は、常勤、フルタイムの会計年度任用職員、パートタイムの会計年度任用職員、再任用など、ご自身の任用の形も確認します。

2. 就業規則や兼業の許可基準を読む

法人や民間の職場では、就業規則の副業・兼業の条項と、別に定められた兼業規程を読みます。

公務員の方は、勤務先の自治体や病院局が定める許可基準で、兼業できる時間の上限や申請の時期を確認します。

3. 副業の形と、働く時間の上限を決める

雇用、派遣、業務委託、自営のどの形で働くかによって、必要な手続きが変わります。

夜勤のある方は、夜勤明けや夜勤前には副業を入れない、月に何時間までにする、といった上限をあらかじめ決めておくと、勤務先との調整がしやすくなります。

4. 許可の申請や届出を書面で行う

申請や届出は、副業先、仕事の内容、働く日や時間を具体的に書いて、書面で行います。

公務員の方は、許可を受けてから副業を始める必要があります。

5. 税と社会保険の手続きを確認する

副業の収入に応じて、確定申告や住民税の申告が必要かどうかを確認します。

副業先でパートとして働く場合は、副業先での社会保険の加入要件に当たるかどうかも確認しておきましょう。

本業と副業先の両方で加入の要件を満たす場合は、事実発生から10日以内に「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する必要があります。

定年後の再雇用や再任用、雇用形態の変更があると、適用される規程が変わることがあります。

60歳以上になると、日雇派遣の例外に当たるなど、選べる働き方が変わる場合もあるため、働き方を変える時期にあわせて決まりをもう一度確認しておきましょう。

副業を将来の独立や起業の準備として考えている方は、看護師の起業|経験を活かせる事業と資格でできること・できないことで全体像もあわせて確認してみてください。

よくある疑問

看護師の副業について、気になりやすい点をまとめました。

Q. 1日だけの単発アルバイトでも、許可や届出は必要ですか?

公務員の方は、1日だけであっても、報酬を得て事業に従事する場合は、地方公務員法第38条などの許可の対象になると考えられます。

ただし、パートタイムの会計年度任用職員の方は、第38条の許可の対象外です。

法人や民間の勤務先では就業規則の定めによるため、日数にかかわらず届出が必要とされていることもあります。

Q. 国立病院機構の看護師は公務員ですか?

国立病院機構の職員は、国家公務員ではありません。

国立病院機構は2015年4月に中期目標管理法人へ移行しており、職員の副業・兼業は機構の規程にもとづいて扱われます。

刑法などの罰則の適用について公務員とみなす規定(いわゆるみなし公務員)はありますが、兼業の許可について定めたものではありません。

Q. 確定申告をしなければ、勤務先に知られずに済みますか?

確定申告は、所得の状況に応じて法律上必要になる手続きであり、勤務先に知られるかどうかで判断するものではありません。

所得税の申告が不要な場合でも住民税の申告が必要になることがあり、副業先から市区町村に給与支払報告書が提出されることもあります。

勤務先のルールに沿った手続きと、税の申告の両方を行うことが基本です。

Q. 定年後の再雇用や再任用でも、副業の決まりはありますか?

公立病院で、定年前再任用短時間勤務職員や暫定再任用職員として働いている方は、地方公務員法第38条の許可の対象です。

民間の勤務先で再雇用されている方は、再雇用後に適用される就業規則や嘱託規程などの定めを確認してください。

Q. ブログや執筆の収入も、副業に当たりますか?

就業規則で副業・兼業の範囲をどう定めているかによりますが、報酬を得る執筆や監修、ブログの広告収入なども、届出や許可の対象に含まれることがあります。

公務員の方は、報酬を得て行う執筆などが第38条の許可の対象に当たるかを、勤務先の許可基準で確認してください。

内容に患者さんの情報や勤務先の内部の情報が含まれないよう、守秘義務にも注意が必要です。

まとめ

看護師の副業の扱いは、勤務先の種類と、勤務先の決まりによって決まります。

主なポイントは次のとおりです。

  • 公立病院などで働く地方公務員の看護師が、報酬を得て働く副業などをする場合は、地方公務員法第38条により任命権者の許可が必要です(パートタイムの会計年度任用職員は対象外)
  • 国立病院機構や国立大学病院、民間の病院などでは、就業規則や兼業規程で扱いが決まります
  • 副業が勤務先に知られる経路には、住民税、社会保険、労働時間の申告、労災の手続き、人づての5つがあります
  • 副業の前に、就業規則の確認、許可の申請や届出、税と社会保険の確認を順に進めましょう

2025年から2026年にかけて、公務員の兼業の許可基準や制度の見直しが進んでいます。

ご自身の勤務先の最新の決まりを確かめたうえで、無理のない形で副業を始めることを検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事は2026年10月時点の法令・制度・公表資料に基づいて作成しています。

副業・兼業の扱いは勤務先の規程によって異なり、制度は改正されることがあります。

最新の情報は、勤務先の人事担当のほか、e-Gov法令検索、厚生労働省、総務省、人事院、日本年金機構、国税庁、お住まいの市区町村の公式サイトなどでご確認ください。

個別の労務・税務の判断については、社会保険労務士や税理士、弁護士などの専門家へのご相談をおすすめします。

よこぜき行政書士事務所