はじめに

病棟や外来、訪問看護の現場で経験を重ねてきた40〜60代の看護師の方の中には、訪問看護ステーションの立ち上げを考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

一方で、「立ち上げ 失敗」と検索すると、「開業から1年以内に約4割が廃業・休止」といった数字や、開業を支援する会社の情報が数多く表示され、何を手がかりにすればよいか迷うこともあります。

本記事では、まず全国の公表データの読み方を確認し、そのうえで訪問看護ステーションの立ち上げで失敗しやすいパターンを、開設前と開設後に分けて8つ整理します。

あわせて、立ち行かなくなったときの休止・廃止の手続きと、立ち上げ前に確かめておきたい5つの問いも紹介します。

看護師の起業全体の選択肢や、資格でできること・できないことについては、看護師の起業|経験を活かせる事業と資格でできること・できないことで解説しています。

結論|失敗しやすいパターンは「開設前」と「開設後」に分けて8つ

訪問看護ステーションの立ち上げでつまずきやすい点は、開設前の見込みと、開設後の運営の両方にあります。

本記事では、説明の便宜上、時期ごとに8つのパターンに分けて整理しています。

この分け方は公的な分類ではなく、制度の仕組みと開設・運営の手続きから整理したものです。

本記事は、介護保険・医療保険の指定を受けて訪問看護ステーションを開設する場合を前提にしています。

保険を使わない訪問サービスだけを行う場合は、指定の扱いが異なります。

時期パターン主な確認先
開設前1. 地域の需要と、自分たちが担える訪問看護を確かめずに始める市区町村の介護保険事業計画、地域の医療機関・居宅介護支援事業所
開設前2. 開業資金だけを見て、入金までの運転資金を見込まない請求・支払いの時期、資金計画
開設前3. 人員を「申請の時点でそろえばよい」と考える人員の基準、勤務体制の計画
開設前4. 法人・物件・申請の順番を誤る指定を担当する自治体の事前相談
開設後5. 利用者が増えるまでの期間を短く見積もる紹介元との関係、収支計画
開設後6. 退職者が出て、人員の基準を下回る採用・勤務の計画、指定を担当する窓口
開設後7. 記録・請求の不備で、入金の遅れや返還につながる加算の算定要件、記録と請求の照合
開設後8. 管理者と経営者を一人で担い、手が回らなくなる役割分担、ご自身の体力と家族の状況

いずれのパターンも、当てはまれば失敗するというものではなく、開設前に点検しておくことで備えやすくなる点です。

訪問看護ステーションの開設・廃止・休止の数字を正しく読む

「訪問看護ステーションはどのくらい廃業しているのか」は、立ち上げを考える方が最初に気になる点の一つです。

ここでは、一般社団法人全国訪問看護事業協会が毎年公表している調査の数字を、表の構成に沿って確認します。

全国のステーション数と、1年間の新規・廃止・休止

全国訪問看護事業協会の調査によると、令和8年4月1日現在の全国の稼働数は20,051か所でした。

1年前の令和7年4月1日時点の稼働数は18,754か所で、表では1年間で1,297か所の増加とされています。

令和7年度中の動きとしては、新規が2,428件、廃止が960件、休止が328件と集計されています。

出典:一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和8年度 訪問看護ステーション数調査結果」

4月1日現在の稼働数はその時点の数で、新規・廃止・休止はその1年度の間に起きた件数です。

時点の数と期間中の件数は性質が異なるため、同じ物差しで比べないように注意が必要です。

「廃業率」の数字は、表のどの欄を使ったかで変わる

インターネット上では、「開業から1年以内に約4割が廃業・休止」といった割合を見かけることがあります。

こうした割合は、どの欄の数字を分母と分子に使ったかによって、大きく変わります。

全国訪問看護事業協会の表には、「令和7年度中の新規並びに廃止数合計」として新規・廃止・休止の件数が並び、それとは別に「令和7年度内、開設年度中の廃止数」という欄があります。

令和8年度調査では、この「開設年度中の廃止数」は87件と記載されています。

なお、休止は事業を一時的に止めることで、届出をして再開することもできるため、廃止とは扱いが異なります。

本記事では、欄の定義を確かめられる範囲を超えて割合を計算することは控え、公表されている件数をそのまま紹介しています。

数字の使い方と、本記事の失敗パターンの位置づけ

この調査の表には、都道府県ごとのステーション数(稼働数・指定数・休止数)と、1年度の間の新規・廃止・休止の件数などがまとめられています。

全国の稼働数は1年前より増加している一方で、令和6年度・令和7年度のいずれの年度にも、数百件単位の廃止や休止が記録されています。

次の章から紹介する8つのパターンは、この調査結果から導いたものではなく、制度の仕組みと開設・運営の手続きから整理したものです。

開設前に起きやすい失敗パターン

訪問看護ステーションの立ち上げは、法人の設立、事務所の確保、人員の採用、指定の申請と、準備することが多岐にわたります。

この段階での見込み違いは、開設の時期や、開設後の資金繰りに影響します。

ここでは、開設前に起きやすい4つのパターンを取り上げます。

パターン1 地域の需要と、自分たちが担える訪問看護を確かめずに始める

勤めていた病院の近くだから、自宅から通いやすいから、という理由だけで場所を決めてしまうケースがあります。

訪問看護を始めるには主治医の指示が必要なため、地域の医療機関やケアマネジャーとの関係が、利用者を受け入れる入口になります。

そのため、地域にどのような利用者がいて、どの医療機関や居宅介護支援事業所とつながれそうかを、開設前に確かめておくことが大切です。

市区町村の介護保険事業計画や在宅医療に関する資料には、高齢者の人口の見通しや、地域の医療・介護の課題がまとめられています。

近くにある訪問看護ステーションの数や、それぞれが力を入れている分野を調べると、自分たちが担える役割も見えやすくなります。

精神科の訪問看護や小児の訪問看護など、得意な分野がある場合は、地域にその受け皿がどれだけあるかもあわせて確認しておきます。

パターン2 開業資金だけを見て、入金までの運転資金を見込まない

立ち上げの資金計画では、事務所の契約費用や車両、備品などの開業資金に目が向きがちです。

しかし、訪問看護の報酬は、サービスを提供してから実際に入金されるまでに時間差があります。

介護保険の報酬は、サービスを提供した月の翌月10日までに審査支払機関へ請求する決まりです(介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令3条)。

医療保険の訪問看護療養費も、各月分を翌月10日までに請求します(訪問看護療養費及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令3条)。

香川県国民健康保険団体連合会の資料では、介護保険の支払日は、サービスを提供した月の翌々月の21日とされています(土日・祝日の場合は翌営業日)。

支払日は地域によって異なることがあるため、事業所の所在地の国民健康保険団体連合会の案内で確認しておきます。

出典:香川県国民健康保険団体連合会「令和6年度集団指導資料」

その間も、看護職員の給与や事務所の家賃、車両の費用は毎月発生します。

開設直後は利用者が少ないうえに入金も遅れるため、手元の資金が減りやすい時期です。

請求に誤りがあると返戻となり、修正して再請求するまで、その分の支払いは遅れます。

融資を受ける場合は、借入金は返済が必要なお金であることを前提に、返済の開始時期まで含めて計画を立てておくことが大切です。

パターン3 人員を「申請の時点でそろえばよい」と考える

訪問看護ステーションには、国の基準で定められた人員を置く必要があります。

介護保険の基準では、保健師・看護師・准看護師の看護職員を常勤換算方法で2.5以上置き、そのうち1名は常勤でなければならないとされています(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準60条1項1号イ・2項)。

管理者は、専らその職務に従事する常勤の者で、原則として保健師または看護師であることが求められます(同基準61条)。

健康保険の基準も、看護職員を常勤換算で2.5以上(うち1名は常勤)としており、看護職員と管理者に助産師が含まれる点が介護保険の基準と異なります(指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準2条・3条)。

申請の際には勤務体制の書類を提出するため、採用は開設のかなり前から進める必要があります。

さらに、開設してすぐに退職者が出ると、基準を下回るおそれがあります。

開設時の人数を基準ちょうどにするのではなく、退職や休職があっても基準を保てる余裕を見込んでおくと安心です。

1人の勤務は常勤換算で最大1.0のため、看護職員1人だけでは原則としてこの基準を満たせない計算になります。

例外や特例の有無は、事業所の所在地の自治体の手引きで確認してください。

パターン4 法人・物件・申請の順番を誤る

介護保険では申請者が都道府県などの条例で定める者(法人)であること、健康保険では申請者が地方公共団体・医療法人・社会福祉法人などであることが、指定の条件とされています(介護保険法70条2項1号、健康保険法89条4項1号)。

なお、介護保険の訪問看護の指定を受けたときは、厚生労働省令で定める基準に該当する事業者であれば、別段の申出をしない限り、健康保険の指定もあったものとみなされます(健康保険法89条2項)。

そのため、法人の設立、事務所の確保、人員の採用、申請書類の作成を、申請の締切から逆算して進める必要があります。

事務所の物件を契約してから設備の基準に合わないことが分かると、契約の見直しや開設の延期につながることがあります。

申請の締切や事前相談の方法は自治体ごとに異なるため、物件の契約前に手引きを入手し、図面を持って相談しておくと安心です。

保険を使った訪問看護を始められるのは、指定を受けた日からです。

開業までの流れや申請書類、申請先については、訪問看護ステーションの立ち上げ|開業までの8ステップと指定申請で詳しく解説しています。

開設後に起きやすい失敗パターン

指定を受けて訪問を始めた後の最初の1〜2年は、利用者の確保と人員の維持を同時に進めながら、経営の基盤を固めていく時期です。

ここでは、開設後に起きやすい4つのパターンを取り上げます。

パターン5 利用者が増えるまでの期間を短く見積もる

訪問看護は、主治医の指示に基づいて提供するサービスです。

介護保険の基準では、訪問看護の提供を始める際に、主治医による指示を文書で受けなければならないとされています(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準69条2項)。

そのため、利用者を増やすには、主治医やケアマネジャー、病院の退院支援の担当者などとの関係づくりが大切になります。

開設したばかりのステーションは、地域の関係者にまだ知られていないため、紹介が届くまでに時間がかかることがあります。

また、利用者の入院や施設への入所などで、訪問看護の利用が終わることもあります。

収支計画は、利用者が順調に増える場合だけでなく、増え方が遅い場合も想定して立てておくと、資金の不足に早めに気づけます。

パターン6 退職者が出て、人員の基準を下回る

人員の基準は、指定を受けるときだけでなく、指定を受けた後も満たし続ける必要があります。

小規模なステーションでは、看護職員が1人退職するだけで、常勤換算2.5を下回ることがあります。

介護保険法では、人員の基準や員数を満たすことができなくなったとき、都道府県知事は指定を取り消し、または期間を定めて指定の効力を停止することができるとされています(介護保険法77条1項3号)。

健康保険の指定についても、看護師その他の従業者が基準や員数を満たすことができなくなったときは、厚生労働大臣が指定を取り消すことができるとされています(健康保険法95条1号)。

いずれも「できる」という定めで、実際にどのような対応になるかは、個別の事情を踏まえて行政庁が判断します。

退職の申し出があった段階で、指定を担当する自治体や地方厚生局に早めに相談し、採用の見通しや休止の要否を含めて対応を検討することが大切です。

開設後も採用活動を続けることや、非常勤の看護職員を含めて勤務を組める体制にしておくことも、基準を保つための備えになります。

パターン7 記録・請求の不備で、入金の遅れや返還につながる

訪問看護の報酬には、基本の報酬に加えて、体制や提供内容に応じた加算があります。

加算には算定のための要件があり、要件を満たしていることを記録で示せるようにしておく必要があります。

請求に誤りがあると返戻となり、修正して再請求するまで、その分の支払いは遅れます。

支払いを受けた後に請求を取り下げる「過誤」の手続きを行うと、その分が後の支払額から差し引かれます(香川県国民健康保険団体連合会 令和6年度集団指導資料)。

事業者が偽りその他不正の行為によって支払いを受けたときは、市町村は、返還させる額に加えて、その100分の40に相当する額を徴収することができるとされています(介護保険法22条3項)。

都道府県知事や市町村長は、居宅介護サービス費の支給に関して必要があると認めるときは、事業者に報告を命じたり、職員に事業所への立入検査をさせたりすることができます(介護保険法76条1項)。

請求に不正があったときは、介護保険の指定は取消し等の対象に、健康保険の指定は取消しの対象になりえます(介護保険法77条1項6号、健康保険法95条3号)。

記録と請求の担当者を決め、月ごとに記録と請求の内容を照らし合わせる仕組みをつくっておくと、誤りに早く気づけます。

パターン8 管理者と経営者を一人で担い、手が回らなくなる

40〜60代で訪問看護ステーションを立ち上げる場合、ご自身が管理者として現場に立ちながら、法人の代表として経営も担うことがあります。

管理者は専らその職務に従事する常勤の者とされており、管理上支障がない場合に限り、ほかの職務と兼ねることが認められています(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準61条1項)。

訪問、スタッフの管理、営業、採用、記録の確認、請求、緊急時の連絡への対応までを一人で抱えると、どこかに無理が生じやすくなります。

医療保険の訪問看護療養費には、24時間対応体制加算のように、基準を満たして地方厚生局に届け出ることで算定できるものがあり、どこまで体制を整えるかは事業の方針によって変わります。

夜間や休日の連絡を誰が受けるのかは、ご自身の体力や、家族の介護などの事情とあわせて考えておきたい点です。

事務職員を置く、共同で経営する仲間と役割を分ける、手続きや労務・税務は専門家に任せるなど、開設前に役割分担を決めておくと、経営と現場の両方に目を配りやすくなります。

報酬の改定を見込まない計画も、つまずきの原因になる

訪問看護の収入の多くは、介護保険と医療保険の報酬です。

報酬の単価や算定の要件は、改定によって変わります。

開設時の計画が前提としていた報酬が、数年後には変わっている可能性があることを念頭に置いておく必要があります。

令和8年は、医療保険と介護保険の両方で見直しがあった

医療保険の訪問看護療養費は、令和8年6月から改定されました。

地方厚生局は、6月1日以降の算定に向けて、新たな届出や届出の出し直しが必要な項目を案内していました。

訪問看護療養費の算定方法や、訪問看護ステーションの基準等を定める告示も改正されています(厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」)。

介護保険でも、令和9年度の介護報酬改定を待たずに令和8年度に期中の改定が行われ、令和8年6月から、これまで処遇改善加算の対象外だった訪問看護にも介護職員等処遇改善加算が設けられました。

この加算を算定するには、処遇改善計画書の提出などの手続きが必要です。

一つの収益の柱に頼りすぎない

特定の加算や、特定の住まいに暮らす利用者への訪問に収入が偏っていると、その部分が改定で見直されたときの影響を大きく受けやすくなります。

医療保険・介護保険それぞれの利用者の構成や、加算への依存度を定期的に確かめ、改定のたびに収支計画を見直すことが大切です。

改定の内容は、厚生労働省や地方厚生局、指定を担当する自治体の案内で確認できます。

立ち行かなくなったときの「休止」と「廃止」の手続き

資金や人員の見通しが立たなくなったとき、事業を一時的に止める「休止」や、事業をやめる「廃止」を検討することになります。

休止・廃止には届出の期限があり、介護保険と医療保険で考え方が異なります。

利用者への影響も大きいため、開設前に手続きの流れを知っておくと、いざというときに慌てずに済みます。

介護保険と医療保険で、届出の時期が違う

介護保険の指定を受けた事業者が事業を廃止・休止しようとするときは、その日の1か月前までに届け出る必要があります。

指定居宅サービス事業者は、当該指定居宅サービスの事業を廃止し、又は休止しようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、その廃止又は休止の日の一月前までに、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

出典:介護保険法75条2項(e-Gov法令検索)

指定都市・中核市など、都道府県以外が指定の事務を担っている地域では、届出先もその自治体になります。

一方、健康保険の指定訪問看護事業者は、事業を廃止・休止・再開したときに、10日以内に届け出ることとされています(健康保険法93条)。

健康保険の届出の窓口は、地方厚生局です。

介護保険は「しようとするとき」に事前に、健康保険は「したとき」に事後に届け出るという違いがあります。

介護保険の指定によって健康保険の指定もあったものとみなされている場合を含め、両方の指定を受けている事業所は、どの届出がいつまでに必要かを、指定を担当する自治体と地方厚生局にそれぞれ確認しておくと安心です。

利用者が困らないように、引継ぎの調整が求められる

介護保険法では、廃止・休止の届出をした事業者に対し、利用者への便宜の提供を求めています。

対象は、届出の日の前1か月以内にサービスを受けていた方のうち、廃止・休止の後も同じようなサービスを希望する方です。

事業者は、ケアマネジャーやほかの事業者などと連絡調整を行い、必要なサービスが続けて受けられるようにすることとされています(介護保険法74条5項)。

医療保険で訪問看護を受けている利用者についても、主治医やほかのステーションと連絡を取り、引継ぎを進めておくことが大切です。

撤退の目安を、開設前に決めておく

立ち行かなくなってから休止や廃止を考えると、届出の期限や利用者の引継ぎに十分な時間を取れないことがあります。

手元の資金が何か月分を下回ったら、利用者数がいつまでに何人に届かなければ、といった撤退を考え始める目安を、開設前にご自身で決めておくと判断しやすくなります。

目安は事業の規模や地域によって異なるため、資金計画を立てる段階で、融資先や専門家の意見も参考にするとよいでしょう。

40〜60代の看護師が、立ち上げ前に確かめたい5つの問い

訪問看護ステーションの立ち上げは、看護師としての経験を地域で活かせる選択肢の一つです。

一方で、立ち上げると、経営者として資金や人員、制度への対応にも責任を持つことになります。

ここまでの8つのパターンを踏まえて、立ち上げ前にご自身に問いかけておきたい点を5つにまとめました。

#問い関係するパターン
1地域で、誰のどんな困りごとに応えるステーションにするかパターン1・5
2入金が始まるまでの期間を、自己資金と借入でどうしのぐかパターン2
3看護職員が1人退職しても、人員の基準を保てる体制かパターン3・6
4管理者・代表・事務を誰が担い、夜間や休日の連絡を誰が受けるかパターン8
5どのような状態になったら、休止や廃止を考え始めるか休止・廃止の手続き

たとえば、病棟の管理職を経験してきた50代の方は、スタッフの管理には慣れていても、請求や営業は初めてという場合があります。

60歳を前に独立を考える方であれば、何歳まで、どのくらいの規模で続けるかも、資金計画や役割分担と一緒に考えておきたい点です。

看護師の配偶者や仲間と一緒に法人を立ち上げる場合は、経営と現場の役割を、開設前に話し合っておくと安心です。

よくある疑問

ここでは、訪問看護ステーションの立ち上げや失敗について、検索されることの多い疑問にお答えします。

Q. 訪問看護ステーションの廃業率はどのくらいですか?

一律の「廃業率」を示すことは難しく、どの数字を使って計算したかによって割合は大きく変わります。

全国訪問看護事業協会の調査では、令和7年度中の新規が2,428件、廃止が960件、休止が328件で、これとは別の欄に「開設年度中の廃止数」が87件と記載されています。

割合を目にしたときは、どの調査の、どの欄の数字から計算されたものかを確かめることをおすすめします。

Q. 看護師1人で訪問看護ステーションを立ち上げられますか?

介護保険・健康保険いずれの基準でも、看護職員を常勤換算で2.5以上置く必要があるため、看護職員1人だけでは原則としてこの基準を満たせない計算になります。

例外や特例の有無は、事業所の所在地の自治体の手引きで確認してください。

人員の基準や管理者の要件については、訪問看護ステーションの立ち上げ|開業までの8ステップと指定申請でも解説しています。

Q. 開業支援会社や専門家には、何を頼めばよいですか?

開業支援会社のサービスは、事業計画の作成支援や物件探し、採用支援、電子カルテや請求ソフトの導入などさまざまで、会社によって範囲や費用が異なります。

依頼する前に、サービスの範囲、費用、契約期間を書面で確認しておくと安心です。

また、手続きの種類によって、担当する専門家が分かれます。

法人の設立登記は司法書士、社会保険・労働保険の手続きは社会保険労務士、税務は税理士が主に担う業務です。

指定申請の書類作成を専門家に依頼する場合も、どの手続きが誰の業務範囲に当たるかを、依頼先に確認しておくと安心です。

まとめ

本記事では、訪問看護ステーションの立ち上げで失敗しやすいパターンを、開設前と開設後に分けて8つ整理しました。

主なポイントは次のとおりです。

  • 「廃業率」の数字は計算の元になった欄によって変わるため、出典と表の構成を確かめる
  • 開設前は、地域の需要、入金までの運転資金、人員の余裕、手続きの順番を点検する
  • 開設後は、利用者の確保、人員の基準の維持、記録と請求、管理者と経営者の役割分担に目を配る
  • 報酬は改定で変わるため、改定のたびに収支計画を見直す
  • 休止・廃止の届出は、介護保険は1か月前まで、健康保険は廃止・休止の後10日以内と、期限の考え方が異なる

失敗しやすいパターンを知っておくことは、立ち上げをためらう理由ではなく、計画を点検するための手がかりになります。

ご自身の経験と地域の状況を照らし合わせながら、無理のない形での立ち上げを検討してみてください。


※本記事は2026年10月時点の法令・制度に基づき作成しています。

指定の要件や手続き、報酬の内容は改正・改定されることがあるため、最新の情報は指定を担当する自治体・地方厚生局・厚生労働省の公式サイトでご確認ください。

個別の事案については、指定を担当する窓口や専門家にご確認ください。

よこぜき行政書士事務所