はじめに
40代、50代と経験を重ねるなかで、本業を続けながら、薬剤師の資格を別の場でも使ってみたいと考え始めた方もいらっしゃるかもしれません。
その一方で、「薬剤師は副業禁止」という話を耳にして、一歩を踏み出せずにいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
薬剤師の副業ができるかどうかは、資格そのものではなく、管理薬剤師かどうか、勤務先がどこか、どのような形で働くかによって決まります。
この記事では、副業を始める前に確認する決まりを順番に整理し、資格を使う副業と在宅でできる副業の注意点をご紹介します。
結論|薬剤師の副業は「立場」と「働き方」で決まります
薬剤師の副業に関わる主な決まりは、管理薬剤師や公務員といった「立場」と、派遣などの「働き方」に結びついています。
そのため、同じ薬剤師でも、副業のために確認することは一人ひとり違います。
まずは、ご自身に当てはまる確認点を、次の4つから探してみてください。
副業できるかを決める4つの確認点
4つの確認点は、根拠となる決まりも、確認する相手もそれぞれ異なります。
| 確認点 | 主な根拠 | 確認先 |
|---|---|---|
| ① 管理薬剤師(薬局の管理者)や店舗管理者に指定されているか | 薬機法第7条第4項・第28条第4項 | 勤務先、薬局・店舗がある都道府県の薬務担当(保健所を設置する市・特別区では市・区) |
| ② 勤務先が、公務員として働く職場か | 地方公務員法第38条、国家公務員法第103条・第104条 | 勤務先の人事担当 |
| ③ 勤務先の就業規則(ない場合は雇用契約書など)で、副業がどう定められているか | 勤務先の就業規則など | 就業規則・雇用契約書、人事担当 |
| ④ 派遣・アルバイト・業務委託のどれで働くか | 労働者派遣法、労働基準法など | 副業先、派遣会社 |
①と②に当てはまらない方は、③の就業規則などから確認を始めることになります。
そもそも副業とは何を指すのかから確かめたい方は、副業とは|副業の定義から注意点までわかりやすく解説しますもあわせてご覧ください。
在宅の副業でも、仕事の中身で守る決まりがあります
文章を書く、動画で発信するといった在宅の副業でも、医薬品などを扱う場合は、広告の規制や守秘義務に注意が必要です。
この点は、後半の「薬剤師の知識を使う在宅副業」で整理します。
「薬剤師は副業禁止」と思われやすい理由と、40〜60代で副業を考える背景
薬剤師の副業について調べると、「禁止」と「自由」という正反対の情報が並んでいて、迷ってしまう方もいらっしゃいます。
ここでは、迷いが生まれる理由と、40〜60代の薬剤師の方が副業を考える背景を見ておきます。
一部の立場の決まりが、薬剤師全体の話として伝わりやすい
管理薬剤師や公務員の薬剤師には、副業に関わる法律上の決まりがあります。
こうした決まりが「薬剤師は副業ができない」という形で、資格を持つ方全体の話として伝わることがあります。
反対に「資格があるから自由にできる」という話も、立場や働き方の違いを省いた説明です。
どちらの話も、ご自身の立場に当てはめて確かめることで、迷いを減らせます。
40〜60代の薬剤師の方が副業を考えるきっかけ
40〜60代になると、役職の変化や定年後の再雇用などをきっかけに、これからの収入の見通しを考える方もいらっしゃいます。
お子さんの手が離れて、平日の夜や休日に時間を使えるようになったという方もいらっしゃいます。
定年後も資格を使って働き続けたいと考え、本業とは別の場を早めに経験しておきたいという方もいます。
きっかけはさまざまですが、どの場合も、始める前に決まりを確かめておくことが、安心して続けるための土台になります。
副業の前に確認する決まり|管理薬剤師・公務員・就業規則
副業を始める前に確認したい決まりは、管理薬剤師に関するもの、公務員に関するもの、就業規則の3つです。
3つは根拠となる決まりも確認先も違うため、順に見ていきます。
管理薬剤師は、ほかの場所で薬事の実務に就くには許可が必要です
薬局の管理者、いわゆる管理薬剤師には、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」)で、兼務を制限する規定があります。
4 薬局の管理者(第一項の規定により薬局を実地に管理する薬局開設者を含む。次条第一項及び第三項において同じ。)は、その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であつてはならない。ただし、その薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。
出典:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第7条第4項(2026年5月21日施行の版)
なお、2027年5月20日施行の改正で、この項には、受渡委託をする場合の受渡しの管理を「薬局の管理」に含める括弧書きが加わります。
この規定は、ほかの場所で薬事の実務に就くことを原則として禁じたうえで、都道府県知事の許可を受けた場合を例外としています。
薬局が保健所を設置する市や東京23区(特別区)にある場合、この許可を出すのは市長や区長です(薬機法第4条第1項)。
たとえば浜松市は、薬局の管理者が学校薬剤師の業務を行う場合や、市の夜間救急室で夜間・休日の調剤業務に輪番で従事する場合などに、あらかじめ兼務の許可を申請するよう案内しています(出典:浜松市「薬局等の管理者兼務許可申請について」2026年2月10日更新)。
ドラッグストアなどの店舗販売業で店舗管理者を務める方にも、同じ形の規定があります(薬機法第28条第4項)。
店舗が保健所を設置する市や特別区にある場合も、許可を出すのは市長や区長です(同法第26条第1項)。
医薬品の卸売販売業で営業所管理者を務める方にも、同じ形の規定があります(同法第35条第4項)。
「薬事に関係のない副業であれば問題ない」と説明されることもありますが、どの仕事が「薬事に関する実務」に当たるかは、薬局や店舗がある都道府県の薬務担当(保健所を設置する市や特別区では、市・区の担当窓口)に確認しておくと安心です。
卸売販売業の営業所管理者の方は、営業所がある都道府県の薬務担当に確認してください。
公立病院などで働く公務員の薬剤師は、原則として兼業に許可が必要です
公立病院や保健所などで地方公務員として働く薬剤師の方は、任命権者の許可を受けなければ、営利企業の役員などを兼ねることや、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業や事務に従事することはできません(地方公務員法第38条第1項)。
ただし、同じ項のただし書で、パートタイムの会計年度任用職員など、一部の非常勤職員はこの許可の対象から外されています。
ご自身の任用の形がどれに当たるかは、勤務先の人事担当で確認できます。
国の機関で国家公務員として働く場合、国家公務員法第103条は、営利企業の役員などを兼ねることや自ら営利企業を営むことを禁じたうえで、人事院規則の定めにより、所轄庁の長の申出を受けて人事院の承認を得た場合を例外としています。
同法第104条は、報酬を得てほかの団体の役員などを兼ねたり、事業に従事したり事務を行ったりするには、内閣総理大臣と所轄庁の長の許可が必要としています。
人事院は国家公務員の自営兼業の制度を見直し、2026年4月から、職員の知識・技能をいかした事業や社会貢献に資する事業も、承認基準を満たせば承認できるようにしました(出典:人事院「自営兼業制度の見直しについて」令和7年12月19日)。
これらの事業の承認には、開業届を提出して行う事業であることなどの基準があります。
承認の期間は2年を超えないものとされています(人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について)。
「国立」「公立」の病院でも、公務員とは限りません
病院の名前に「国立」「公立」とついていても、運営している法人によっては、職員が公務員に当たらないことがあります。
たとえば、独立行政法人国立病院機構は、法律上「中期目標管理法人」とされています(独立行政法人国立病院機構法第4条)。
独立行政法人の役員と職員を国家公務員とする規定は、「行政執行法人」を対象としています(独立行政法人通則法第51条)。
このため、国立病院機構の病院で働く方の副業は、国家公務員法ではなく、機構の就業規則などで確認することになります。
自治体が設立した地方独立行政法人の病院では、「特定地方独立行政法人」の役員と職員が地方公務員とされています(地方独立行政法人法第47条)。
勤務先がどの種類の法人に当たるかを確かめることが、確認の出発点です。
民間の薬局・ドラッグストア・病院は、就業規則などで確認します
民間の薬局やドラッグストア、病院で働く方の副業は、勤務先の就業規則などの定めに沿って扱いが決まります。
就業規則では、副業を許可制にする、届出制にする、禁止するなど、会社によって定め方が異なります。
常時10人以上の労働者を使用する使用者には、就業規則の作成と届出が義務づけられています(労働基準法第89条)。
規模の小さい薬局などで就業規則がない場合は、雇用契約書や労働条件通知書の定めを確認し、勤務先に相談しておくと安心です。
厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定、令和2年9月・令和4年7月改定)を示しており、モデル就業規則でも副業・兼業の規定例や解説を公開しています。
このガイドラインは、裁判例では、労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由と解されていると紹介しています。
同じガイドラインは、裁判例で会社が副業・兼業を制限することが許されるとされる例として、労務提供上の支障がある場合、業務上の秘密が漏洩する場合、競業により自社の利益が害される場合、自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合を挙げています。
就業規則は、会社が労働者に周知しなければならないものとされているため(労働基準法第106条第1項)、手元にない場合は、見られる場所を人事担当に尋ねてみてください。
薬剤師の資格を使う副業|アルバイト・派遣・学校薬剤師
薬剤師として別の職場で働く副業は、資格と経験をそのまま活かせる選択肢です。
同じ「薬剤師として働く」副業でも、アルバイトで雇われるのか、派遣で働くのかによって、確認することが変わります。
別の薬局やドラッグストアでのアルバイト(ダブルワーク)
本業の休みの日に、別の薬局やドラッグストアでアルバイトやパートとして働く方法です。
管理薬剤師や店舗管理者の方が別の薬局などで働く場合は、前述の兼務の制限が関わります。
雇われて働く副業では、原則として、本業と副業の労働時間が通算されます(労働基準法第38条第1項)。
ただし、管理監督者に当たる立場で働く時間など、労働基準法の労働時間の規制が適用されない時間は通算されません(厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。
通算するには、それぞれの勤務先が、もう一方での勤務時間を知っている必要があります。
社会保険は、勤務先ごとに加入の要件を満たしているかが判断されます。
両方の勤務先で要件を満たす場合は、ご本人が、事実発生から10日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年金機構へ提出する必要があります。
健康保険組合に加入している勤務先を選ぶ場合は、その健康保険組合での手続きも必要です。
国や地方公共団体などで共済組合の適用を受ける短時間勤務の職員の方は、国等の事業所を選択するなど扱いが異なるため、勤務先に確認してください(出典:日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」2025年12月25日更新)。
浜松市の夜間救急室のように、地域によっては、夜間・休日の調剤を薬剤師が輪番で担う仕組みもあります。
本業と副業を合わせた働く時間や保険のルールは、パートのWワークで40時間以上働きたい方へ|時間と保険のルールでも詳しく解説しています。
単発派遣・スポット派遣は「日雇派遣」の決まりを確認します
1日だけ、数日だけといった単発の派遣で働く場合は、日雇派遣の決まりを確認する必要があります。
労働者派遣法は、日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者(日雇労働者)の派遣を、政令で定める業務や場合を除いて禁止しています(労働者派遣法第35条の4第1項)。
政令で例外として定められている19の業務に、薬剤師法に定める調剤など、薬剤師としての業務は挙げられていません(同法施行令第4条第1項)。
そのため、薬剤師としての業務に日雇派遣で就けるのは、派遣元が雇用管理に必要な措置を講じていることを前提に、働く人が次のいずれかに当たる場合です(同法施行令第4条第2項)。
- 60歳以上の方
- 学生・生徒の方(定時制の課程に在学する方などを除く)
- 主たる業務の収入(生業収入)が500万円以上の方(副業として日雇派遣で働く場合)
- 主に配偶者などの収入で生計を維持している方で、本人を含む世帯の収入が500万円以上の方
収入の基準は、同法施行規則第28条の3で500万円と定められています。
厚生労働省の業務取扱要領では、生業収入は主たる業務の収入のことで、複数の仕事をしている場合は、収入額が最も高い仕事が主たる業務になるとされています。
生業収入には、給与だけでなく、不動産の運用収入なども含まれます。
また、「主に配偶者などの収入で生計を維持している」とは、世帯全体の収入に占める本人の収入の割合が50%未満であることをいうとされています(出典:厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」令和8年10月1日適用版 第6の17)。
60歳を過ぎてから、本業の合間に単発で働きたいと考える方にとっては、知っておきたい例外です。
なお、単発で働く場合でも、副業先に直接雇われるアルバイトは派遣ではないため、日雇派遣の決まりとは別の扱いになります。
日雇派遣に当たるかどうかは、派遣会社と結ぶ労働契約の期間で決まります。
労働契約の期間が31日以上であれば、派遣先で働く期間が30日以内でも、日雇派遣の禁止には違反しないとされています。
ただし、派遣先で働くのが1日しかないのに31日以上の労働契約を結ぶなど、社会通念上明らかに適当とはいえない契約は、日雇派遣の禁止を免れる目的の行為と解されています(同要領 第6の17)。
また、病院や診療所(一部を除く)、介護医療院での調剤の業務は、紹介予定派遣などの例外を除いて、派遣そのものが原則として禁止されています(労働者派遣法第4条第1項第3号、同法施行令第2条第3号)。
学校薬剤師として地域の学校を担当する
学校保健安全法では、大学以外の学校に学校薬剤師を置くこととされ、薬剤師の中から任命または委嘱されます(学校保健安全法第23条第2項・第3項)。
学校薬剤師は、学校での保健管理に関する専門的な事項について、技術や指導に従事します(同条第4項)。
薬局の管理者が学校薬剤師を務める場合は、前述の浜松市の案内のように、兼務の許可の申請を求められることがあります。
勤務先の薬局がある地域の薬務担当で確認してください。
委嘱の流れや報酬は地域ごとに確認が必要なため、ここでは仕組みの紹介にとどめます。
薬剤師の知識を使う在宅副業|ライター・監修・発信
在宅でできる副業には、医療や薬に関する文章を書く仕事、教材をつくる仕事、動画やブログで発信する活動などがあります。
在宅の副業でも、医薬品などを扱う文章や発信には、薬機法の広告の規制や守秘義務が関わります。
メディカルライター・記事監修
製薬会社の資料や医療系メディアの記事、健康に関するコラムなどを書く仕事や、記事の内容を確認する監修の仕事です。
薬機法第66条第1項は、誰であっても(何人も)、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品の名称や効能などについて、虚偽や誇大な記事を広告し、記述し、流布してはならないと定めています。
同条第2項では、医師その他の者が効能などを保証したものと誤解されるおそれがある記事も、同じ扱いとされています。
また、厚生労働省の「医薬品等適正広告基準」は、医薬関係者などが医薬品等を推薦している等の広告を行ってはならないとしています(平成29年9月29日薬生発0929第4号、第4の10)。
ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所などが指定している事実を広告する場合など、特別の場合は除かれています。
監修者として名前を出す仕事や、商品の紹介文を書く仕事を受ける場合は、こうした決まりに沿った内容かを依頼主と確認しておくと安心です。
翻訳・講師・教材づくり
医薬品に関する資料の翻訳、薬学生向けの家庭教師や講師、学習教材や研修資料の作成なども、知識を活かせる仕事です。
講師として雇われて働く場合は、アルバイトと同じく、原則として本業との労働時間の通算の対象になります。
YouTube・ブログ・SNSで発信する
動画やブログ、SNSで薬や健康に関する情報を発信し、広告収入などを得る方法もあります。
発信するときに特に気をつけたいのが、守秘義務です。
刑法第134条第1項は、薬剤師が正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らすことを禁じ、6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金を定めています。
本業で接した患者さんの話を題材にする場合は、個人が特定されないようにするだけでなく、そもそも題材にしてよいかを慎重に考える必要があります。
企業から依頼を受けて商品を紹介する投稿は、広告であることが分かるように示すことが大切です。
広告であることが分からない形の表示は、景品表示法の不当表示として規制されています(令和5年内閣府告示第19号・2023年10月1日施行、いわゆるステマ規制)。
消費者庁は、規制の対象は商品やサービスを供給する事業者(広告主)で、依頼を受けて投稿するインフルエンサーなどの第三者は対象にならないと説明しています。
依頼を受けて投稿する場合は、広告であることをどのように示すかを、依頼主と確認しておくと安心です。
一方、薬機法第66条は「何人も」を対象としているため、医薬品などの効能を虚偽・誇大に伝える投稿は、投稿者自身にも関わります。
公務員の方は、発信で広告収入などを得る場合も、前述の兼業の決まりとの関係を勤務先の人事担当で確認してください。
業務委託で受けるときと、フリーランスという働き方
在宅の副業は、雇用ではなく業務委託として受ける場合があります。
個人で、従業員を使わずに業務委託で仕事を受ける場合は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(いわゆるフリーランス法)の「特定受託事業者」に当たることがあります(同法第2条第1項第1号)。
代表者のほかに役員がおらず、従業員も使わない法人も、特定受託事業者に含まれます(同項第2号)。
この法律では、業務を委託する事業者が、仕事の内容や報酬の額、支払期日などを書面やメールなどで明示することが定められています(同法第3条第1項)。
内容が決まっていないことに正当な理由がある事項は、決まった後すぐに明示することとされています(同項ただし書)。
副業を続けるうちに、勤務先を離れてフリーランスの薬剤師として独立する道を考える方もいます。
その場合は、副業とは別に、業務委託・派遣・雇用の違いや開業の手続きを確認することになります。
副業を選ぶときのチェックポイント
決まりを確認したら、次は、ご自身の生活や本業と無理なく両立できるかを確かめます。
40〜60代の方にとっては、本業のシフトや体力、家計との関係を見ておくことが、長く続けるための土台になります。
本業のシフトと、無理なく働ける時間
薬局や病院の勤務は、シフトや当番で休みの日が変わることもあります。
副業の時間を決めるときは、本業の休みが固定されているかや、急な交代を頼まれることがあるかも含めて考えておくと安心です。
体力や体調には個人差があるため、最初は少ない日数から始め、様子を見ながら増やしていく方法もあります。
扶養の範囲で働いている方は、収入の基準を確認します
配偶者の扶養の範囲で働いている方は、副業の収入を加えると、扶養の基準を超えることがあります。
税の扶養と社会保険の扶養は基準が別で、改正されることもあるため、その年の基準を国税庁や日本年金機構、勤務先などで確認してください。
扶養や働き方の確認事項は、50代女性の副業とWワーク|仕事選び5つの確認事項でも整理しています。
副業の収入の申告
副業の収入があると、所得税の確定申告が必要になることがあります。
国税庁は、給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる方について、給与所得と退職所得を除く所得の合計額が20万円を超える場合に確定申告が必要としています(出典:国税庁タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」令和8年4月1日現在法令等)。
アルバイトの副業で給与を2か所以上から受けている方は、年末調整されなかった給与の収入金額とほかの所得の合計額が20万円を超えるかどうかで判断します。
ただし、給与の収入金額の合計額から一定の所得控除を差し引いた金額が150万円以下で、ほかの所得の合計額が20万円以下の方は、申告は不要とされています。
住民税は所得税とは別の仕組みで課税されるため、お住まいの市区町村の案内もあわせて確認してください。
具体的な申告の方法や個別の税額については、税務署や税理士にご確認ください。
会社員の方が副業を始める前の注意点は、正社員が「副業」を始める前に知っておきたい7つの注意点で詳しく解説しています。
確認しておきたいことの一覧
ここまでの確認点を、一覧にまとめました。
| 確認すること | 確認先 |
|---|---|
| 管理薬剤師・店舗管理者に指定されているか(指定されている場合は兼務の許可) | 勤務先、都道府県の薬務担当(保健所を設置する市・特別区では市・区) |
| 公務員に当たるか、勤務先の法人の種類は何か | 勤務先の人事担当 |
| 就業規則(ない場合は雇用契約書など)の副業・兼業の定め(許可制・届出制など) | 就業規則・雇用契約書、人事担当 |
| 派遣か、直接雇用か、業務委託か(派遣の場合は労働契約の期間) | 副業先、派遣会社 |
| 本業と副業を合わせた働く時間 | 本業と副業の勤務先 |
| 扶養・社会保険・税の基準 | 国税庁、日本年金機構、市区町村など |
薬剤師の副業でありがちな失敗と回避策
ここでは、決まりの思い込みから起こりやすい失敗と、その回避策をまとめます。
当てはまり方は個別の状況によって異なりますが、始める前の確認に役立ててください。
| ありがちな思い込み | 回避策 |
|---|---|
| 「薬事に関係のない副業なら、管理薬剤師でも気にしなくてよい」 | 「薬事に関する実務」に当たるかを、都道府県(保健所を設置する市・特別区では市・区)の薬務担当と勤務先に確認する |
| 「単発派遣なら、誰でも登録して働ける」 | 30日以内の雇用での派遣(日雇派遣)は、60歳以上などの例外に当たるかを派遣会社と確認する。病院・診療所での調剤は、派遣そのものが原則禁止 |
| 「名前を伏せれば、本業の患者さんの話を発信してもよい」 | 守秘義務を前提に、本業で知った情報は題材にしない |
| 「以前から続けている副業だから、管理薬剤師になってもそのままでよい」 | 管理者に指定されたときや、異動などで勤務先の薬局が変わったときは、続けている副業が兼務の制限に当たらないか、許可を取り直す必要がないかを確認し直す |
| 「別の会社でのアルバイトなら、本業に伝えなくても関係ない」 | 雇われて働く副業は、原則として労働時間が通算されることを踏まえ、就業規則の手続きに沿って届け出る |
今日から始められる3つの確認
副業を始める前に、今日からできる確認を3つご紹介します。
どれも短い時間でできることなので、気になったものから始めてみてください。
- 勤務先の就業規則(ない場合は雇用契約書など)で、副業・兼業の定めを読む
- 勤務先の薬局や店舗で、ご自身が管理者(管理薬剤師)や店舗管理者に指定されているかを確かめる
- 在宅の副業を考えている方は、厚生労働省の「医薬品等適正広告基準」に一度目を通す
いきなり副業先を探すより、まずはご自身の立場を確かめておくことが、安心して始めるための近道です。
よくある疑問
薬剤師の副業について、特に多い疑問にお答えします。
Q. 管理薬剤師は、薬事に関係のない副業なら自由にできますか?
薬機法第7条第4項が制限しているのは、その薬局以外の場所で業として「薬局の管理その他薬事に関する実務」に従事することです。
どの仕事がこれに当たるかは、勤務先の薬局がある都道府県の薬務担当(保健所を設置する市・特別区では市・区の担当窓口)に確認しておくと安心です。
あわせて、勤務先の就業規則の定めも確認してください。
Q. 60代でも単発派遣で働けますか?
60歳以上の方は、日雇派遣の禁止の例外に当たります(労働者派遣法施行令第4条第2項第1号)。
派遣元が雇用管理に必要な措置を講じていることが前提で、実際に働けるかは、派遣会社の求人や登録の条件にもよります。
なお、病院や診療所(一部を除く)、介護医療院での調剤の業務は、年齢にかかわらず、紹介予定派遣などの例外を除いて派遣が原則として禁止されています(労働者派遣法第4条第1項第3号、同法施行令第2条第3号)。
本業がある場合は、本業の就業規則や、管理薬剤師に当たるかどうかもあわせて確認してください。
Q. 大手ドラッグストアの薬剤師は副業できますか?
民間の会社で働く方の副業の扱いは、会社ごとの就業規則で決まります。
同じ会社でも、雇用の形や、店舗管理者を務めているかどうかによって確認することが変わるため、就業規則と人事担当で確かめてください。
Q. 副業をしていることは、勤務先に知られますか?
住民税の仕組みや社会保険の手続きなどを通じて、勤務先が副業を知ることがあります。
知られないようにする方法を探すより、就業規則に沿って許可や届出の手続きを取っておくほうが、後々の不安を減らせます。
住民税の仕組みについては、住民税の「特別徴収」で副業がバレる仕組みで詳しく解説しています。
まとめ
本記事では、薬剤師の副業について、副業できるかを決める決まりと、仕事の種類ごとの注意点を整理しました。
主なポイントは次のとおりです。
- 薬剤師の副業は、管理薬剤師かどうか、勤務先、働き方によって確認することが変わる
- 管理薬剤師がほかの場所で薬事の実務に就くには、都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)の許可が必要(薬機法第7条第4項)
- 公務員の薬剤師は兼業に許可や承認が必要で、パートタイムの会計年度任用職員など対象外となる場合もある
- 民間の勤務先では、就業規則(ない場合は雇用契約書など)の定めを確認する
- 30日以内の期間で雇われる日雇派遣で薬剤師の業務に就けるのは、60歳以上などの例外に当たる場合
- 病院・診療所などでの調剤の業務は、年齢にかかわらず、派遣そのものが原則として禁止されている
- 在宅の副業でも、広告の規制と守秘義務への注意が欠かせない
ご自身の立場から一つずつ確かめていけば、資格と経験を活かせる副業を安心して選べるようになります。
※本記事は2026年10月時点の法令・制度に基づいて作成しています。
法令や制度は改正されることがあるため、最新の情報はe-Gov法令検索や各省庁の公式サイトでご確認ください。
個別の事案については、勤務先や行政機関、専門家へのご確認をおすすめします。
よこぜき行政書士事務所

