定年が数年先に見えてきた看護師の方の中には、「この先も看護師を続けるのか、働き方を変えるのか」と迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

夜勤や体力のこと、ご家族のこと、収入や年金のことが、同じ時期に気になり始めることもあります。

看護師の定年は、看護師という職種で一律に決まっているものではなく、勤務先が就業規則などで定めています。

定年後の働き方は、同じ勤務先で続ける、別の職場で働く、資格と経験を別の形で生かす、働く量を減らす、の大きく4つに整理できます。

また、60歳を過ぎると、働き方によって年金・雇用保険・健康保険の扱いが変わります。

本記事では、看護師の定年の決まり方から、定年後の働き方の選択肢、選ぶ前に確認したいお金と制度、看護職ならではの届出までを順に解説します。

看護師の定年は何歳か|勤務先の種類で決まり方が違う

看護師の定年は勤務先が定めており、民間の病院や施設では原則60歳以上、公務員の場合は65歳へ段階的に引き上げられている途中の年齢です。

民間の病院や施設で働く場合と、公立病院などで公務員として働く場合とでは、定年を決めるルールが異なります。

民間の病院や施設は「60歳以上」で勤務先が定める

公務員でない看護師の方の定年には、高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)のルールが適用されます。

民間の病院・診療所・介護施設のほか、国立病院機構の病院や国立大学法人の附属病院のように、運営主体が公的でも職員が公務員でない勤務先も、この法律の対象です。

事業主が定年を定める場合、その年齢は原則として60歳を下回ることができません(同法第8条)。

定年を65歳未満としている事業主は、65歳までの安定した雇用を確保するため、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止のいずれかを講じなければなりません(同法第9条第1項)。

継続雇用制度とは、本人が希望するときに、定年後も引き続いて雇用する制度です(同法第9条第1項第2号)。

継続雇用の先には、定年まで働いた勤務先のほか、グループの法人など特殊な関係にある事業主が含まれることもあります(同法第9条第2項)。

2025年4月1日以降は、継続雇用制度を導入する場合、希望者全員がその対象となっています(厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正」)。

ただし、就業規則に定める解雇・退職の事由に当たる場合などは継続雇用されないことがあり、継続雇用後の雇用形態や賃金などの条件は定年前と同じとは限りません(厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」)。

65歳から70歳までの就業機会の確保は、事業主の努力義務とされています(高年齢者雇用安定法第10条の2)。

この努力義務の措置には、雇用を続ける方法のほか、労使の同意など所定の手続きを経たうえで、業務委託契約などで働く機会を用意する方法も含まれています(同条)。

50代のうちから考えておきたい定年前後の働き方は、「50代看護師の働き方|病院以外の選択肢と起業という道」でも解説しています。

公立病院などで公務員として働く方は、定年が段階的に引き上げられている

公務員として働く看護師の方の定年は、高年齢者雇用安定法ではなく、国家公務員法・地方公務員法の仕組みで定められています(高年齢者雇用安定法第7条第2項)。

国家公務員の定年は、2023年度から2年に1歳ずつ引き上げられており、2025〜2026年度は62歳、2027〜2028年度は63歳となり、2031年度に65歳となります(人事院給与局・内閣官房内閣人事局「国家公務員の60歳以降の働き方について(概要)」令和8年4月)。

地方公務員の定年は、国家公務員の定年を基準として、各自治体の条例で定められます。

国家公務員には、60歳に達した管理監督職の職員が原則として管理監督職以外の職に移る「役職定年制」や、60歳以降に定年前に退職して短時間勤務で働く「定年前再任用短時間勤務」の仕組みもあります(同資料)。

自治体でも、こうした仕組みを条例で設けている場合があります。

自治体が設立した病院でも、運営が地方独立行政法人に移り、職員が公務員でない場合があります(地方独立行政法人法第2条第2項・第47条)。

ご自身の身分と定年の年齢は、勤務先の人事担当や就業規則・条例などで確認できます。

「70歳定年」や「定年なし」の勤務先もある

法律が事業主に義務づけているのは、定年の下限(原則60歳)と65歳までの雇用確保で、65歳から70歳までの就業機会の確保は努力義務です(高年齢者雇用安定法第8条・第9条・第10条の2)。

定年を何歳にするかは、こうした法律の枠組みの中で、勤務先が就業規則などで定めます。

法律上、定年を65歳より高く定めることや、定年の定めを廃止することもできます。

厚生労働省の令和7年「高年齢者雇用状況等報告」(常時雇用する労働者が21人以上の企業が対象・産業を問わない集計)では、65歳以上を定年とする企業(定年制を廃止した企業を含む)は34.9%で、この中には定年制を廃止した企業や70歳以上を定年とする企業も含まれています。

定年の年齢が高い勤務先でも、年齢によって勤務形態や賃金の条件が変わることがあります。

ご自身の定年と継続雇用の条件を確かめる方法

定年と継続雇用の条件は、勤務先の書類と窓口で確かめることができます。

確認先としては、就業規則(定年・継続雇用・再任用の規定)、雇用契約書・労働条件通知書、人事担当や看護部の窓口などがあります。

確かめておきたい主な項目は、次のとおりです。

  • 定年の年齢と、退職日の決まり方(誕生日・誕生月の末日・年度末など)
  • 継続雇用の雇用形態・契約期間・更新の条件
  • 賃金と手当(夜勤手当・役職手当など)の変わり方
  • 勤務時間・勤務日数・夜勤の有無
  • 健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入

退職日の決まり方は、年金や雇用保険の手続きの時期にも関わるため、早めに確認しておくと安心です。

定年を迎える看護師が「この先」に迷う背景

60歳を過ぎても看護の仕事に就いている方は、統計の上でも一定の数にのぼります。

一方で、定年の前後には、働き方を考え直すきっかけがいくつも重なることがあります。

ここでは、統計で見た現状と、迷いが生まれやすい背景を整理します。

60歳以上で看護の仕事に就いている方の数

厚生労働省の統計で、看護の仕事に就いている方の年齢を見てみます。

2024年(令和6年)末に就業している看護師は1,363,142人で、このうち60〜64歳が84,049人(6.2%)、65歳以上が59,432人(4.4%)です。

就業している准看護師は233,022人で、60〜64歳が38,397人(16.5%)、65歳以上が44,314人(19.0%)です。

准看護師では、年齢階級別に見ると「65歳以上」が最も多い区分となっています。

出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(2025年7月29日公表時点の数値、2024年12月31日現在)

65歳以上で看護の仕事に就いている方は、看護師と准看護師をあわせて10万人あまりです。

夜勤・体力・家族の事情・収入の変化が重なる時期

定年の前後は、働き方そのものを見直すきっかけが重なることがある時期です。

夜勤やオンコールを今後も続けるかどうかを考え始める方もいます。

親の介護やご家族の事情で、勤務日数や勤務時間を調整したい方もいます。

継続雇用では、雇用形態や賃金が定年前と変わることがあります。

看護師・准看護師の免許については、保健師助産師看護師法に有効期限や更新の定めがありません。

看護の仕事を続けられるかどうかは、勤務先の定年や契約の条件、ご自身の体力やご希望によって変わります。

体力や健康状態は人によって大きく異なるため、気になる症状がある場合は、働き方を決める前に医療機関にご相談ください。

看護師の定年後の働き方|4つの選択肢

看護師の定年後の働き方を、本記事では説明の便宜上、次の4つに分けて整理します。

1つに決める必要はなく、時期によって組み合わせたり、別の選択肢へ移ったりする方もいます。

それぞれの特徴と、確かめておきたい点を見ていきます。

① 同じ勤務先で続ける(継続雇用・再任用)

慣れた職場で、これまでの人間関係や仕事の進め方を生かして働き続ける選択肢です。

民間の勤務先では継続雇用制度、国家公務員の場合は定年の引上げ期間中の暫定再任用などの仕組みがあります(前掲・人事院給与局・内閣官房内閣人事局資料)。

嘱託職員やパート職員など雇用形態が変わり、1年ごとの契約更新になることもあります。

夜勤の有無や担当する業務、賃金・手当が定年前と変わることがあるため、条件の提示を受けたら書面で確認しておくと安心です。

新しく仕事を覚える負担は比較的小さい一方、役割が変わることへの気持ちの切り替えが必要になる場合もあります。

② 別の職場で看護師として働く

定年をきっかけに、夜勤のない職場や勤務日数を選べる職場に移る選択肢です。

看護職の就業場所は、病院のほか、診療所、訪問看護ステーション、介護保険施設等、社会福祉施設、市区町村、事業所など幅広くあります(前掲・令和6年衛生行政報告例の就業場所の区分)。

健診、外来、介護施設、訪問看護など、職場によって求められる経験や働き方は異なります。

求人は、ハローワークのほか、都道府県ナースセンターの無料職業紹介でも探すことができます(後述)。

なお、看護師・准看護師の業務を、病院や診療所(一部を除く)、助産所、介護老人保健施設、介護医療院、医療を受ける方の居宅(訪問入浴介護などを除く)などで行う形の労働者派遣は、原則として禁止されています(労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)第4条第1項第3号、同法施行令第2条)。

ただし、紹介予定派遣の場合や、産前産後休業・育児休業・介護休業などを取る方の代わりとして働く場合、就業の場所がへき地にある場合などは例外とされているため、派遣で働くことを考える場合は条件を確認してください。

一度看護の現場を離れてから戻る場合は、ブランクの長さに応じて、ナースセンターなどの復職のための研修を活用する方法もあります。

③ 資格と経験を、臨床以外や起業で生かす

長年の臨床経験は、患者さんへの直接のケア以外の場面でも生かせることがあります。

介護支援専門員(ケアマネジャー)のように、看護師・准看護師として業務に従事した期間を、受験に必要な実務経験に含められる資格もあります(介護保険法施行規則第113条の2)。

看護学校での講師、地域の健康づくりの講座、執筆など、経験を伝える仕事もあります。

自分で事業を始める「起業」という選択肢もあります。

看護師の資格でできることと、医師の指示や別の免許・許可が必要になることの線引きは、事業の内容によって異なります。

看護師の起業で考えられる事業の種類と、資格でできること・できないことは、「看護師の起業|経験を活かせる事業と資格でできること・できないこと」で整理しています。

業務委託や個人事業として働く場合は、雇用されて働く場合と比べて、健康保険・年金・雇用保険の扱いが変わる点に注意が必要です(次の見出しで解説します)。

④ 働く量を減らす・いったん看護の仕事から離れる

定年を区切りに、働く時間を減らしたり、いったん看護の仕事から離れたりする選択肢もあります。

週に数日の短時間勤務や、健診の繁忙期など期間を区切った仕事を選ぶ方もいます。

地域のボランティア活動や、ご家族との時間を優先する時期を設ける方もいます。

看護の仕事を離れるときには、都道府県ナースセンターへの届出(努力義務)があります(後述)。

離れたあとで再び働きたくなった場合も、ナースセンターの就業相談や研修を利用できます。

4つの選択肢を比べる

4つの選択肢の特徴を、表にまとめます。

表の内容は一般的な傾向で、実際の条件は勤務先や契約の内容によって異なります。

選択肢収入の見通し体力面新しく覚えること確認したい制度
① 同じ勤務先で続ける定年前と変わることがある夜勤や業務の調整は勤務先との相談による比較的少ない継続雇用の条件、高年齢雇用継続給付、在職老齢年金
② 別の職場で看護師として働く職場や雇用形態によって異なる職場を選ぶことで調整できる場合がある職場の手順や機器など健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入、在職老齢年金、派遣の制限
③ 臨床以外や起業で生かす仕事や事業の内容によって大きく異なる仕事の内容による資格の取得や事業の準備資格でできることの線引き、許可・届出、健康保険と年金の加入
④ 働く量を減らす・離れる働く時間に応じて変わる負担を抑えやすい少ない雇用保険の給付、健康保険と年金の切替、ナースセンターへの届出

選ぶ前に確認したい、60歳からのお金と制度

同じように働く場合でも、年齢や雇用形態、勤務時間、勤務先が公務員か民間かによって、年金・雇用保険・健康保険の扱いが変わります。

ここでは、看護師の定年後の働き方を選ぶ前に知っておきたい4つの制度を、要点に絞って紹介します。

ご自身の金額や受け取れる時期は、年金事務所やハローワークなどで個別に確認してください。

継続雇用で賃金が下がったとき|高年齢雇用継続給付

60歳以降も雇用保険に加入して働き、賃金が下がった方を対象にした給付です。

高年齢雇用継続給付は、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の一般被保険者が、原則として60歳時点に比べて賃金が75%未満に下がった状態で働き続ける場合に支給されます(ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」)。

支給額は、60歳に達した日が2025年3月31日以前の方は最大で各月の賃金の15%、2025年4月1日以降の方は最大で10%です。

60歳に達した日の時点で雇用保険の被保険者期間が5年に満たない方は、5年を満たした日を基準にこの区分を判断します。

出典:厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」

各月の賃金が一定の額を超える場合は支給されず、その額は毎年8月1日に変更されます(ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」)。

基本手当を受けたあとに再就職した方を対象とする「高年齢再就職給付金」もあります。

特別支給の老齢厚生年金や繰上げ受給の老齢厚生年金を受け取っている方が、厚生年金保険に加入しながらこの給付を受けると、在職による支給停止に加えて、老齢厚生年金の一部(最高で標準報酬月額の4%、60歳に達した日が2025年3月31日以前の方などは6%)が支給停止されます(日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」)。

繰上げ受給している老齢基礎年金は、この調整でも支給停止されません(日本年金機構「年金の繰上げ受給」)。

申請は原則として勤務先(事業主)を通じて行いますが、ご本人が申請することもできます(ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」)。

働きながら年金を受け取るとき|在職老齢年金と特別支給の老齢厚生年金

年金の受け取りが始まったあとに、厚生年金保険に加入して働く場合などの仕組みです。

在職老齢年金は、60歳以降に厚生年金保険に加入しながら受ける老齢厚生年金の仕組みです。

賃金と年金額の合計が65万円を超える場合、65万円を超えた金額の半分が老齢厚生年金から支給停止されます。

老齢基礎年金は、この仕組みでは全額支給されます。

この65万円は令和8年度(2026年度)の支給停止調整額です(日本年金機構「在職老齢年金」)。

2025年度は51万円でしたが、2026年4月の制度改正で引き上げられました(日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」)。

この基準額は、物価や賃金の変動に応じて年度ごとに改定される仕組みです(厚生年金保険法第46条第3項)。

計算に使う賃金は、その月の標準報酬月額に、その月以前1年間の標準賞与額の合計の12分の1を足した額(総報酬月額相当額)、年金は加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額(基本月額)です(日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」)。

なお、2007年(平成19年)4月以降に70歳に達した方が、70歳以降も厚生年金保険の適用事業所で働く場合は、厚生年金保険の被保険者ではありませんが、在職による支給停止が行われます(同上)。

65歳になる前に受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」は、生年月日と性別によって、対象となるかどうかと受給開始年齢が異なります。

要件の一つは、男性は1961年(昭和36年)4月1日以前、女性は1966年(昭和41年)4月1日以前に生まれたことで、ほかに老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があることや、厚生年金保険等に1年以上加入していたことなども必要です(日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」)。

ただし、共済組合などから支給される老齢厚生年金の受給開始年齢は、女性の方も男性と同じになります(同上)。

厚生年金保険の被保険者期間が44年以上ある方が退職している場合などには、報酬比例部分に加えて定額部分も受け取れる特例があります(同上)。

公立病院などで公務員として働いた期間がある方は、その期間の分の扱いが異なることがあるため、ねんきん定期便を確認し、年金事務所や共済組合に相談してください。

定年で退職するとき|雇用保険の給付は65歳を境に変わる

定年で退職し、次の仕事を探す場合は、雇用保険の給付を受けられることがあります。

雇用保険には、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれる場合に、年齢にかかわらず原則として加入します(雇用保険法第6条)。

公務員として働く方は、雇用保険の適用が除外されている場合があるため(同条第6号)、退職後の給付については勤務先の人事担当に確認してください。

65歳未満で離職した方は、原則として離職の日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あることなどを要件に、求職中に「基本手当」を受けられます(ハローワークインターネットサービス「基本手当について」)。

定年で退職した方の基本手当の給付日数は、原則として、雇用保険に加入していた期間に応じて90日・120日・150日です(ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」)。

就職困難者に当たる方は、日数が異なります(同上)。

65歳以上で離職した方には、基本手当ではなく「高年齢求職者給付金」が一時金で支給されます。

原則として離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あることなどが要件で、額は、被保険者であった期間が1年未満なら基本手当日額の30日分、1年以上なら50日分に相当する額です(ハローワークインターネットサービス「基本手当について」)。

65歳になるまでの間は、特別支給の老齢厚生年金や繰上げ受給の老齢厚生年金を受け取っている方がハローワークで求職の申込みをすると、原則として申込みをした月の翌月から、基本手当の受給期間が過ぎるか所定給付日数を受け終わる月まで、老齢厚生年金が全額支給停止されます(日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」)。

繰上げ受給している老齢基礎年金は、この調整では支給停止されません(日本年金機構「年金の繰上げ受給」)。

求職の申込みをしたあとに基本手当を受けていない月がある場合、その月分の年金は、3か月程度後に支給されます(日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」)。

60歳以上の定年や、定年後の継続雇用の期限が来たことで離職した方は、一定の期間求職の申込みをしないことを希望する場合、1年を限度に基本手当の受給期間を延長できます(雇用保険法第20条第2項、同法施行規則第31条の2)。

この申出は、原則として離職の日の翌日から2か月以内に、ハローワークに行う必要があります(同規則第31条の3)。

給付は、働く意思と能力があり、求職活動をしている方が対象です。

離職後に事業を始めた方や、事業の準備に専念し始めた方などが一定の要件を満たす場合は、事業を行っている期間などを最大3年間、基本手当の受給期間に算入しない特例を申請できます(ハローワークインターネットサービス「基本手当について」)。

この特例の申請は、事業を開始した日などの翌日から2か月以内に行う必要があります(同上)。

求職活動と並行して起業の準備を進める場合に基本手当を受けられるかどうかは、準備の状況によって扱いが変わるため、ハローワークで確認してください。

どちらの給付を受けられるか、いつ申し込むかは、離職したときの年齢や加入期間によって変わるため、退職日を決める前にハローワークで確かめておくと安心です。

健康保険と年金の加入はどうなるか

定年後の働き方によって、加入する健康保険と年金の制度が変わります。

継続雇用や再就職先で働く場合は、勤務時間・勤務日数や勤務先の規模などの条件によって、勤務先の健康保険・厚生年金保険に加入するかどうかが決まります。

年齢の面では、厚生年金保険の被保険者となるのは適用事業所で働く70歳未満の方です(厚生年金保険法第9条)。

勤務先の健康保険から外れる場合、75歳未満の方は、主に次の3つから選ぶことになります。

  • 退職前の健康保険の任意継続(退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間があり、資格喪失日から20日以内に申し出た場合。加入できる期間は最長2年)
  • お住まいの市区町村の国民健康保険
  • ご家族が加入する健康保険の被扶養者(60歳以上の方は年間収入が180万円未満であることなどの要件があります)

任意継続と被扶養者の要件は、全国健康保険協会の案内(「任意継続の加入条件について」「令和8年度被扶養者資格の再確認について」)によるものです。

公務員として共済組合に加入していた方は、任意継続の要件が健康保険と異なる場合があるため、加入していた共済組合に確認してください(地方公務員の共済組合では、退職の日の前日まで引き続き1年以上組合員であったことなどが要件です・地方公務員等共済組合法第144条の2)。

被扶養者の要件の確認方法は、ご家族が加入する健康保険によって異なることがあるため、加入先に確認してください。

75歳以上の方は、原則として後期高齢者医療制度の被保険者になります(高齢者の医療の確保に関する法律第50条)。

国民年金は20歳以上60歳未満の方が加入する制度で、60歳以上65歳未満の方は、年金額を増やしたい場合などに任意で加入できることがあります。

任意加入には、日本国内に住所があること、老齢基礎年金を繰上げで受け取っていないこと、20歳以上60歳未満の保険料の納付月数が480月(40年)未満であること、厚生年金保険や共済組合等に加入していないことなどの条件があります(日本年金機構「任意加入制度」)。

加入は申し出た月からとなり、さかのぼって加入することはできません(同上)。

看護職ならではの確認ごと|届出・相談先・研修

看護師・准看護師の方には、看護の仕事を続ける場合と離れる場合のそれぞれに、看護職に固有の届出があります。

あわせて、定年前後の看護職の再就業を支える相談先を知っておくと、選択肢を比べやすくなります。

定年後も看護の仕事を続けるなら|業務従事者届

看護の仕事を続ける方には、2年ごとの届出があります。

業務に従事する保健師・助産師・看護師・准看護師は、2年ごとの年の12月31日現在の氏名・住所などを、翌年1月15日までに就業地の都道府県知事に届け出なければなりません(保健師助産師看護師法第33条)。

届出の年は、1982年(昭和57年)を初年とする2年ごとの年と定められており(保健師助産師看護師法施行規則第33条)、直近では2024年12月31日現在の届出が行われ、次回は2026年12月31日現在の状況を2027年1月15日までに届け出ることになります。

継続雇用やパートなど働き方が変わっても、12月31日の時点で看護の業務に従事していれば届出の対象です(保健師助産師看護師法第33条)。

届出は、勤務先の担当者がとりまとめてオンラインで送信する方法などが案内されています(大阪府「保健師、助産師、看護師、准看護師業務従事者届」など)。

看護の仕事を離れるときの届出(努力義務)

看護の仕事を離れる方には、ナースセンターへの届出があります。

保健師・助産師・看護師・准看護師が病院などを離職したときや、看護の業務に従事しなくなったときは、氏名・住所・免許の登録番号などを都道府県ナースセンターに届け出るよう努めることとされています(看護師等の人材確保の促進に関する法律第16条の3・2015年10月施行)。

届出はインターネットで行うことができ(同法施行規則第5条)、病院などの開設者には、届出が適切に行われるよう支援する努力義務があります(同法第16条の3第3項)。

届け出た方には、都道府県ナースセンターが状況に合わせて支援を行います(厚生労働省「看護師等の離職時の届出制度をご存じですか?」)。

再就業の相談先と「プラチナナース」

定年前後の看護職が利用できる相談先として、都道府県ナースセンターがあります。

都道府県ナースセンターでは、看護職を対象にした無料の職業紹介や就業相談、再就業に向けた研修などを行っています(日本看護協会「定年後も働きたい看護職の皆様の再就業をサポート」)。

提供されるサービスの内容は、都道府県のナースセンターによって異なります(同上)。

厚生労働省の看護職のキャリアと働き方支援サイトでは、「プラチナナース」を定年退職前後の看護職を指す言葉として使っています(厚生労働省「プラチナナース(定年退職前後)として働く」)。

同じページには、定年後に再雇用や老健・特養、訪問看護ステーション、ケアマネジャーとして働く方の体験談が紹介されています。

「失敗パターン」と回避策

定年後の働き方には、選んだあとで条件を変えにくいものもあります。

ここでは、定年の前後に注意したい4つのつまずきと、避けるための確認ポイントをまとめます。

継続雇用の条件を確かめないまま定年を迎える

継続雇用では、雇用形態、賃金、夜勤の有無、契約期間などが定年前と変わることがあります。

条件を知らないまま定年を迎えると、別の職場と比べる時間が足りなくなることがあります。

定年の1〜2年前には、継続雇用の条件を就業規則や人事担当で確かめておくと、選択肢を比べやすくなります。

年金の受け取り方を、仕組みを確かめる前に決める

老齢年金は、65歳より早く受け取る「繰上げ」や、遅らせて受け取る「繰下げ」を選ぶことができます。

繰上げを選ぶと年金額が減り、請求したあとで取り消すことはできません(日本年金機構「年金の繰上げ受給」)。

繰上げを請求すると、国民年金の任意加入はできなくなります(同上)。

繰上げを請求すると、65歳になるまでの間、基本手当や高年齢雇用継続給付を受ける月は、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されます(同上)。

働きながら受け取る場合は在職老齢年金の調整もあるため、ねんきん定期便やねんきんネットで見込み額を確かめ、年金事務所で試算してもらうと判断しやすくなります。

65歳前後の退職日を、給付の違いを知らずに決める

雇用保険の給付は、離職したときの年齢が65歳未満か65歳以上かで、基本手当と高年齢求職者給付金に分かれます。

65歳未満で基本手当を受ける場合は、特別支給の老齢厚生年金や繰上げ受給の老齢厚生年金との調整もあります。

どの時期の退職が合うかは、加入期間や年金の受給状況、その後の働き方によって異なります。

退職日を決める前に、ハローワークや年金事務所(公務員として働いていた方は勤務先の人事担当も)で確かめておくと安心です。

退職金をまとめて起業の準備に充てる

定年後に起業を考える場合、退職金を一度に設備や開業の費用に充てると、事業が軌道に乗るまでの生活費が足りなくなることがあります。

小さく始めて様子を見る方法や、雇用されて働きながら準備を進める方法もあります。

起業や業務委託で働く場合は、健康保険・年金・雇用保険の扱いが変わることも、あわせて確認しておきましょう。

退職金の税金の扱いなど、個別の税務については税務署や税理士にご確認ください。

定年の数年前から始められる小さな一歩

看護師の定年後の働き方は、定年の直前ではなく、数年前から少しずつ情報を集めておくと選びやすくなります。

ここでは、今日から始められる3つの一歩を紹介します。

  1. 就業規則で定年と継続雇用の条件を確かめる:定年の年齢、退職日の決まり方、継続雇用の雇用形態と賃金を、就業規則や人事担当で確認します。
  2. 年金の見込み額を知る:ねんきん定期便やねんきんネットで見込み額を確かめ、気になる点は年金事務所(公務員として働いた期間がある方は共済組合も)に相談します。
  3. ナースセンターの情報に触れてみる:研修や相談の情報を調べたり、短時間の仕事を一度試したりして、ご自身に合う働き方を探ります。

いきなり大きく変えず、試しながら選んでいくことも、長く働き続けるための一つの考え方です。

よくある疑問

看護師の定年後の働き方について、気になりやすい疑問をまとめます。

本文で触れた制度の例外や確認先も、あわせて記載しています。

Q. 看護師は何歳まで働けますか?

何歳まで働けるかは、勤務先の定年や継続雇用の上限の年齢、契約の条件、ご自身の体力やご希望によって変わります。

民間の勤務先では、定年を65歳未満としている事業主に65歳までの雇用確保が義務づけられ、65歳から70歳までの就業機会の確保は努力義務とされています(高年齢者雇用安定法)。

公務員として働く方の定年は、2031年度に65歳となるよう段階的に引き上げられている途中です。

2024年末の時点で、65歳以上で看護の仕事に就いている方は、看護師で59,432人、准看護師で44,314人です(厚生労働省「令和6年衛生行政報告例」)。

Q. プラチナナースとは何ですか?何歳からですか?

厚生労働省の看護職のキャリアと働き方支援サイトでは、「プラチナナース」を定年退職前後の看護職を指す言葉として使っています。

同サイトでは「定年退職前後の看護職」と説明されており、定年の年齢は勤務先によって異なります。

Q. 定年後の看護師の給料はどのくらいですか?

定年後の給料は、継続雇用か再就職か、常勤かパートか、夜勤の有無などによって大きく異なります。

継続雇用では、定年前と比べて賃金や手当が変わることがあるため、提示された条件を書面で確認してください。

60歳時点に比べて賃金が75%未満に下がった場合は、雇用保険の加入期間などの要件を満たせば、高年齢雇用継続給付を受けられることがあります。

求人を比べるときは、時給や月給だけでなく、勤務時間、社会保険の加入、契約期間もあわせて確認すると比べやすくなります。

Q. 定年後に起業するのは遅いですか?

定年後に、看護の経験を生かして事業を始めるという選択肢もあります。

事業の内容によって、看護師の資格でできることや、必要になる許可・届出が異なります。

看護師の起業で考えられる事業の種類と、資格でできること・できないことは、「看護師の起業|経験を活かせる事業と資格でできること・できないこと」で整理しています。

生活費の見通しを立てたうえで、小さく始める方法も検討してみてください。

まとめ

本記事では、看護師の定年の決まり方と、定年後の働き方、選ぶ前に確認したいお金と制度を解説しました。

主なポイントは次のとおりです。

  • 看護師の定年は勤務先が定め、民間の勤務先では原則として60歳以上で、65歳未満の定年の場合は65歳までの雇用確保が事業主に義務づけられています
  • 公務員として働く方の定年は、2031年度に65歳となるよう段階的に引き上げられている途中です
  • 定年後の働き方は、同じ勤務先で続ける、別の職場で看護師として働く、資格と経験を臨床以外や起業で生かす、働く量を減らす・離れる、の4つに整理できます
  • 働き方・年齢・勤務先(公務員か民間か)によって、高年齢雇用継続給付、在職老齢年金、雇用保険の給付、健康保険と年金の加入の扱いが変わります
  • 看護職には、仕事を続ける場合の業務従事者届と、仕事を離れる場合のナースセンターへの届出(努力義務)があります

定年の数年前から少しずつ情報を集め、ご自身の体力やご家族の状況に合った働き方を選んでみてください。


※本記事は2026年10月時点の法令・制度に基づいて作成しています。

年金・雇用保険・健康保険の基準額や要件は改定されることがあるため、最新情報は日本年金機構・厚生労働省・ハローワーク等の公式サイトでご確認ください。

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よこぜき行政書士事務所