看護師として長く働いてきた方の中には、病院や施設に雇われる働き方から離れ、「フリーランス」として働くことを考え始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ただ、「フリーランス看護師」として紹介される仕事には、契約の形が異なるものが混ざっています。
本記事では、この働き方を、契約の形・手続き・お金の3つの面から整理します。
先に、この記事の結論を3つにまとめます。
- 「フリーランス看護師」は資格の名前ではなく、雇用されずに業務委託で仕事を受ける働き方の呼び方です。
- 「フリーランス」として紹介される仕事には、派遣や単発のアルバイトなど雇用の仕事も含まれることがあり、契約の形によって適用されるルールが変わります。
- 病院・診療所などでの看護業務は派遣が原則として禁止されており(例外あり)、業務委託の契約でも、働き方の実態によっては労働者と判断されることがあります。
看護師の起業全体の見取り図は、看護師の起業|経験を活かせる事業と資格でできること・できないことで整理しています。
フリーランス看護師とは
フリーランス看護師とは、病院や施設に雇用されず、業務委託の契約で仕事を受けて働く看護師を指す呼び方です。
看護師の免許はそのままで、変わるのは「誰と、どのような契約で働くか」です。
資格の名前ではなく、働き方の呼び方
看護師は、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者などに対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とする者と定められています(保健師助産師看護師法第5条)。
一方、フリーランスとして働く人を保護する法律として、2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下、フリーランス法)が施行されました。
この法律は、保護の対象となる「特定受託事業者」を、業務委託の相手方である事業者のうち、次のいずれかに当たるものと定めています(同法第2条第1項)。
- 個人の場合:従業員を使用していないこと(第1号)
- 法人の場合:代表者1人のほかに役員がおらず、かつ従業員を使用していないこと(第2号)
フリーランス・個人事業主・業務委託の関係
この3つの言葉は似た場面で使われますが、指しているものが異なります。
| 言葉 | 指しているもの |
|---|---|
| フリーランス | 雇用されずに、案件ごとに契約して働く「働き方」 |
| 個人事業主 | 会社(法人)を作らずに、個人で事業を営む人 |
| 業務委託 | 仕事を依頼する側と受ける側が結ぶ「契約の形」(請負・委任・準委任) |
厚生労働省のリーフレットでは、フリーランスを、業務委託(請負契約または委任契約・準委任契約)により仕事の依頼を受けた個人で、法人化した人も含むものと説明しています(厚生労働省「フリーランスとして働く皆さまへ ~その働き方、『労働者』ではないですか?~」)。
本記事では、説明の便宜上、雇用されずに業務委託で仕事を受ける看護師を「フリーランス看護師」と呼びます。
フリーランス看護師が受けている主な仕事
フリーランスの仕事として紹介されているものには、次のような仕事があります。
- 健康診断の会場での補助
- イベントや旅行への同行(救護)
- 企業や自治体の健康相談
- 研修や講座の講師
- 医療・看護に関する記事の執筆や監修
同じ種類の仕事でも、業務委託で募集されるものと、アルバイトや派遣などの雇用で募集されるものがあります。
仕事を探すときは、仕事の内容だけでなく、契約の形が何かを確かめることが出発点になります。
「フリーランス」と呼ばれる仕事には3つの契約形態がある
「フリーランス」として募集される仕事を見ていくと、契約の形は大きく3つに分かれます。
契約の形が違えば、指示を出す人、守ってくれる法律、保険や税金の扱いが変わります。
とくに看護師の場合は、派遣に独自の制限がある点を知っておく必要があります。
業務委託・派遣・直接雇用の比較
次の表は、3つの契約形態の主な違いをまとめたものです。
| 項目 | 業務委託 | 派遣 | 直接雇用(非常勤・アルバイトなど) |
|---|---|---|---|
| 契約の相手 | 仕事を依頼する事業者 | 派遣会社(派遣元) | 働く先の病院・施設・企業 |
| 仕事の指示 | 契約の範囲で、進め方は自分で決めるのが基本 | 派遣先から受ける | 勤務先から受ける |
| 主に適用されるルール | フリーランス法、契約の内容 | 労働者派遣法、労働基準法など | 労働基準法など |
| 健康保険・年金 | 国民健康保険・国民年金に自分で加入するのが基本(任意継続や家族の扶養に入る場合もある) | 派遣会社で要件を満たせば健康保険・厚生年金に加入 | 勤務先で要件を満たせば健康保険・厚生年金に加入 |
| 収入の扱い | 報酬として受け取り、自分で確定申告するのが基本 | 給与(派遣会社が源泉徴収) | 給与(勤務先が源泉徴収) |
この表は、契約の名前どおりの働き方をしている場合の整理です。
業務委託の契約でも、実態が雇用に近ければ労働基準法などが適用される場合があります(このあと説明します)。
病院・診療所などの看護業務は、派遣が原則として禁止
看護師が病院・診療所などで行う看護業務は、労働者派遣が原則として禁止されています(労働者派遣法第4条第1項第3号、同法施行令第2条第1項第4号)。
禁止の対象として政令に挙げられているのは、次の場所で行われる看護業務です。
- 病院・診療所(特別養護老人ホームなどの中に設けられた一部の診療所を除く)
- 助産所
- 介護老人保健施設・介護医療院
- 医療を受ける人の居宅(訪問入浴介護に関わるものを除く)
- オンライン診療受診施設(オンライン診療に関わるもの)
派遣会社だけでなく、派遣を受け入れる側も、これらの業務に派遣労働者を従事させてはならないとされています(同法第4条第3項)。
ただし、次の場合は例外として定められています(同法施行令第2条第1項)。
- 紹介予定派遣(派遣先に直接雇用されることを予定して行う派遣)
- 産前産後休業・育児休業・介護休業などで休む職員の代わりとして派遣される場合(同法第40条の2第1項第4号・第5号)
- 働く場所が、政令で定めるへき地にある場合
禁止の理由について、厚生労働省の通知は、病院等が派遣される医療資格者を特定できないことによるチーム医療への影響の懸念という、医療政策上の配慮を挙げています(平成19年12月14日 医政発第1214004号・職発第1214001号)。
反対に、特別養護老人ホームやデイサービスなど、上に挙げた場所以外での看護業務は、この禁止の規定には列挙されていません。
単発の派遣(日雇派遣)は原則禁止、60歳以上などは例外
派遣の中でも、日々または30日以内の期間を定めて雇われる「日雇派遣」は、原則として禁止されています(労働者派遣法第35条の4第1項)。
ただし、病院・診療所などの禁止場所以外で行う看護業務は、日雇派遣が認められる業務に含まれています(同法施行令第4条第1項第19号)。
また、60歳以上の方は、派遣会社が必要な雇用管理の措置を講じていれば、日雇派遣の例外に当たります(同法施行令第4条第2項第1号)。
このほかにも、学生など、例外に当たる場合が定められています。
注意したいのは、病院・診療所などでの看護業務の派遣禁止は、日雇派遣の禁止とは別の規定だという点です。
60歳以上の方であっても、紹介予定派遣などの例外に当たらない限り、病院・診療所などでの看護業務は派遣の禁止の対象になります。
「業務委託」と書いてあっても、実態で判断される
労働基準法上の「労働者」に当たるかどうかは、契約の形式や名称にかかわらず、実態を勘案して総合的に判断されます(厚生労働省「『労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口』を労働基準監督署に設置します」)。
労働基準法は、労働者を次のように定めています。
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」第9条)
厚生労働省のリーフレットでは、実務上は次の2つの基準(使用従属性)で判断されると説明されています。
- 仕事が他人の指揮監督のもとで行われているかどうか
- 報酬が、指揮監督のもとでの労働の対価として支払われているかどうか
同じリーフレットのチェックリストでは、仕事を断る自由、進め方の裁量、場所や時間の拘束、報酬の決まり方などが判断の目安として挙げられています。
病院や施設で、職員と同じシフトに組み込まれ、日々の指示を受けて働く形であれば、契約の名前が業務委託でも、労働者と判断される可能性があります。
また、仲介する会社と業務委託の契約を結び、実際には働く先の指示を受けて仕事をする形は、労働者派遣と請負を区分する基準(昭和61年労働省告示第37号)に照らして、いわゆる偽装請負と判断される可能性があります。
看護業務の場合は、先に見た派遣の禁止とも関わってきます。
「看護師の業務委託は違法なのか」と気になっている方は、契約の名前ではなく、実際の働き方が契約の内容と合っているかを確かめることが大切です。
40〜60代の看護師がフリーランスを考えるときの3つの視点
40代後半から60代にかけては、経験の長さと、働き方を見直したい気持ちが重なりやすい時期です。
ここでは、この年代の方がフリーランスを考えるときに押さえておきたい3つの視点を紹介します。
長い臨床経験が生きる場面
健診や救護、企業の健康相談、研修の講師などは、幅広い臨床経験や指導の経験が役に立つ仕事です。
案件によっては、一定の臨床経験年数や、特定の分野での経験を条件にしているものもあります。
たとえば、病棟で長く新人指導を担当してきた50代の方であれば、研修の講師や教材づくりの形で経験を活かす道も考えられます。
これまで担当した診療科、指導した経験、取得した資格を書き出しておくと、受けられる仕事の幅を考えやすくなります。
夜勤を減らす・働く日を選ぶことと、収入の関係
夜勤を減らしたい、働く日を自分で選びたいという理由で、フリーランスを考える方もいらっしゃいます。
業務委託では、仕事を受けるかどうかを自分で決められる一方で、受けた分だけが収入になります。
賞与や各種手当、有給休暇は、雇用されている場合の仕組みです。
働く日数を減らすのであれば、その分の収入の見込みもあわせて考えておく必要があります。
体力の変化は人それぞれのため、ご自身の状態に合わせて、無理のない日数から始めることが大切です。
退職・定年のタイミングと「次の契約」の順番
在職中に業務委託の仕事を少しずつ受けてから退職する方法と、退職してから仕事を探す方法があります。
在職中に始める場合は、勤務先の就業規則で副業・兼業の扱いを確認しておきます。
副業を始める前に確認したい点は、正社員が「副業」を始める前に知っておきたい7つの注意点で整理しています。
国公立の病院などで公務員として働いている方は、兼業について法律上の制限があるため、勤務先の規程を確認してください。
定年後に働き方を変える場合は、60歳以上の方に日雇派遣の例外があるなど、選べる働き方が年齢によって変わる点も知っておくと役に立ちます(病院・診療所などでの看護業務の派遣禁止は、60歳以上の方にも適用されます)。
個人事業主として始めるときの手続き
業務委託で仕事を受けるようになると、税金・保険・看護職としての届出を、自分で進めることになります。
ここでは、個人事業主として始めるときに関わる主な手続きを整理します。
必要な手続きは、事業の内容や家族の状況によって変わります。
税務署・自治体への届出
個人で事業(事業所得を生ずる事業など)を始めたときは、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を提出します。
提出期限は、事業を始めた年分の所得税の確定申告期限までです(所得税法第229条、国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」)。
2025年12月31日以前に開業した場合は、改正前の規定により開業から1か月以内とされていたため、古い情報を見るときは注意が必要です(所得税法等の一部を改正する法律(令和5年法律第3号)附則第10条)。
青色申告を選ぶ場合は、別に「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。
その提出期限は、開業の日が1月1日から1月15日までの場合はその年の3月15日まで、1月16日以降の場合は開業の日から2か月以内です(所得税法第144条、国税庁「暮らしの税情報(令和8年度版)個人で事業を始めたとき」)。
開業届・青色申告承認申請書のいずれも、期限が土・日曜日・祝日等にあたる場合は、その翌日が期限となります。
事業の内容や所得によっては個人事業税(都道府県に納める税)が、売上の規模などによっては消費税が関わることもあります。
報酬のうち、原稿料や講演料などは、支払う側が所得税を源泉徴収する場合があります。
インボイス(適格請求書)の登録をするかどうかは、取引先が求めるかどうかも含めて検討します。
このように、届出は開業届のほかにも、状況に応じて複数あります。
確定申告の具体的な計算や、税金に関する個別の判断は、税務署の相談窓口や税理士に確認してください。
健康保険と年金の切り替え
病院などを退職すると、勤務先の健康保険と厚生年金からは外れます。
健康保険は、主に次の3つから選ぶことになります。
- 住んでいる市区町村の国民健康保険に加入する
- 退職前の健康保険を任意継続する(退職日まで継続して2か月以上加入していたことが条件で、退職日の翌日から20日以内に申し出る。20日目が土日・祝日の場合は翌営業日)
- 家族が加入する健康保険の被扶養者になる(収入などの基準を満たす場合)
任意継続の保険料は、会社が負担していた分も自分で負担するため、協会けんぽの場合は退職時の保険料の2倍が目安ですが、上限があります(全国健康保険協会「任意継続」)。
任意継続で加入できる期間は最長2年で、本人の申出により途中でやめることもできます(健康保険法第38条)。
健康保険組合に加入していた方は、任意継続の保険料の計算方法などを、加入していた健康保険組合で確認してください。
年金は、20歳以上60歳未満の方であれば、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めるのが基本です。
配偶者が会社員や公務員(厚生年金などに加入している方)で、ご自身が20歳以上60歳未満、かつ扶養の基準を満たす場合は、第3号被保険者になることもあります。
ただし、配偶者が65歳以上で老齢年金などを受け取る権利がある場合などは対象にならないため、日本年金機構の案内で確認してください(日本年金機構「国民年金の『第1号被保険者』、『第3号被保険者』とは何ですか。」)。
60歳以上65歳未満で、20歳から60歳までの保険料の納付月数が480月(40年)に満たないなどの条件を満たす方は、国民年金に任意加入して、年金の受給資格期間を満たしたり年金額を増やしたりできる場合があります(厚生年金に加入している方などは対象外)。
任意加入は申し出た月からとなり、さかのぼって加入することはできないため、60歳を迎える前に確認しておくと安心です(日本年金機構「任意加入制度」)。
国民年金だけに加入している期間は厚生年金の加入期間が増えないため、50代で働き方を変える場合は、将来の年金の見通しもあわせて確認しておきたい点です。
一方で、業務委託と並行してパートや派遣などの雇用の仕事を続ける場合は、勤務先の健康保険・厚生年金に加入することもあります。
加入するかどうかは、週の所定労働時間が20時間以上かどうか、雇用の期間、勤務先の規模などによって決まります。
2026年10月1日からは、月額8.8万円以上という賃金の要件がなくなり、対象となる勤務先の規模も2027年10月から段階的に広がります(日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」)。
どれを選ぶかで保険料や保障の内容が変わるため、退職前に、市区町村や加入している健康保険の窓口で確認しておくと安心です。
看護職としての届出|業務従事者届とナースセンター
看護師には、働き方にかかわらず関わる届出があります。
業務に従事している看護師は、2年ごとの年の12月31日現在の氏名・住所などを、翌年1月15日までに、就業地の都道府県知事に届け出ることになっています(保健師助産師看護師法第33条)。
この「2年ごとの年」は、昭和57年を初年とする2年ごとの各年と定められています(同法施行規則第33条第1項)。
2026年(令和8年)はこの届出の年にあたり、令和8年12月31日現在の状況を、令和9年1月15日までに届け出ることになります。
都道府県の案内では、勤務先の医療機関などがとりまとめてオンラインで届け出る方法が示されている例があるため、個人で働く方は、就業地の都道府県や保健所の案内で届出の方法を確認しておきましょう。
また、病院などを離職したときは、住所・氏名などを都道府県ナースセンターに届け出るよう努めることとされています(看護師等の人材確保の促進に関する法律第16条の3)。
労災保険の特別加入と、賠償責任への備え
労災保険は、原則として雇用されて働く人(労働者)のための制度で、フリーランスは一部の業種・職種に限って特別加入が認められてきました。
2024年11月1日からは、企業などから業務委託を受けているフリーランスの方は、業種・職種を問わず労災保険に特別加入できるようになりました(厚生労働省「令和6年11月1日から『フリーランス』が労災保険の『特別加入』の対象となりました」)。
対象になるかどうかは、企業などから委託を受けているか(受ける見込みがあるか)や、仕事の内容によって変わるため、厚生労働省の案内で確認してください。
特別加入の手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体を通じて行います。
また、仕事中の事故で相手に損害を与えた場合に備えて、契約先の保険がどこまで適用されるか、自分で賠償責任保険に加入する必要があるかを確認しておきます。
業務委託で働くときの契約の確認点|フリーランス法
業務委託で働く場合に、発注する側と受ける側の取引のルールを定めているのがフリーランス法です。
発注する側にどのような義務があるかを知っておくと、契約の内容を確かめやすくなります。
義務の内容は、発注する側の規模や契約の期間によって異なります。
発注者に課されている主な義務
フリーランス法の義務の多くは、「特定業務委託事業者」に課されています。
特定業務委託事業者とは、発注者のうち、個人であれば従業員を使用している場合、法人であれば2人以上の役員がいるか従業員を使用している場合を指します(同法第2条第6項)。
| 条 | 内容 | 義務を負う発注者 | 契約期間の条件 |
|---|---|---|---|
| 第3条 | 業務の内容、報酬の額、支払期日などを、書面またはメールなどで明示する | すべての発注者 | なし |
| 第4条 | 報酬の支払期日を、役務の提供を受けた日から60日以内の、できる限り短い期間内で定める | 特定業務委託事業者 | なし |
| 第5条 | 報酬の減額、著しく低い報酬の設定、物の購入や役務の利用の強制、不当なやり直しの要求などをしない | 特定業務委託事業者 | 1か月以上 |
| 第12条 | 募集の情報について、虚偽や誤解を生む表示をせず、正確・最新に保つ | 特定業務委託事業者 | なし |
| 第13条 | 申出に応じて、妊娠・出産・育児・介護と両立できるよう配慮する | 特定業務委託事業者 | 6か月以上(6か月未満は努力義務) |
| 第14条 | ハラスメントの相談に応じる体制を整えるなどの措置をとる | 特定業務委託事業者 | なし |
| 第16条 | 契約を解除する、または更新しない場合に、少なくとも30日前までに予告する | 特定業務委託事業者 | 6か月以上 |
第5条の禁止行為のうち、受領の拒否と、受領後に引き取らせる行為(返品)の禁止は、看護の仕事のような役務の提供の委託では除かれています(同法第5条第1項)。
第4条には再委託の場合の例外が、第16条には災害などやむを得ない事由がある場合の例外が定められています。
契約期間の条件には、契約の更新によってその期間以上続くことになる場合も含まれます(同法第5条第1項・第13条第1項、期間は同法施行令第1条・第3条)。
契約前に確認したい7項目
業務委託の仕事を受ける前に、次の7項目を契約書や条件の明示で確認しておくと安心です。
- 業務の内容と、働く場所
- 時間や日程の決め方(自分で決められるか、指定されるか)
- 仕事の指示を誰から、どのように受けるか
- 報酬の額と、支払期日
- 発注者の都合でキャンセルになった場合の扱い
- 事故やトラブルが起きたときの責任と保険
- 利用者や患者の情報の扱い
7つ目の守秘については、看護師には、業務上知り得た人の秘密を正当な理由なく漏らしてはならない義務があり、看護師でなくなった後も同様とされています(保健師助産師看護師法第42条の2)。
契約の形にかかわらず続く義務のため、記事の執筆や情報発信の仕事でも注意が必要です。
困ったときの公的な相談先
契約や働き方に疑問を感じたときは、内容に応じて次の公的な窓口に相談できます。
- 自分の働き方が労働者に当たるのではないかと感じたとき:労働基準監督署(2024年11月1日から、労働者性に疑義があるフリーランスの方の相談窓口が設けられています)
- 育児・介護への配慮、ハラスメント、解除の予告などの就業環境に関すること:都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)
- 条件の明示、支払期日、禁止行為などの取引に関すること:公正取引委員会または中小企業庁
厚生労働省の案内では、フリーランス法に基づく申出について、違反する事実を調査して是正の措置を講じる一方で、当事者同士の話し合いの仲裁や和解などの仲介は行えないと説明されています(厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法の違反被疑事実についての申出窓口」)。
相手方との交渉や代理を依頼したい場合は、弁護士など、法律で認められた専門家に相談することになります。
フリーランス看護師の収入はどう決まるか
業務委託の収入は、雇用の給与とは決まり方が異なります。
ここでは、収入の組み立て方と、インターネット上の数字を見るときの注意点を紹介します。
収入の組み立て方
業務委託の売上は、単価と、受けた件数・日数・時間で決まります。
その売上から、交通費や研修費などの経費を差し引いたものが所得になります。
さらに、所得税・住民税、国民健康保険料、国民年金保険料などを自分で納めます。
時給や日給の額だけを雇用の時給と比べると、経費や保険料の差が見えにくくなります。
仲介するサービスを使う場合は、手数料がかかるかどうかも確認しておきます。
「年収○万円」「○%」という数字を見るときの注意
インターネット上では、フリーランス看護師の年収として具体的な金額が紹介されていることがあります。
ただ、収入は、仕事の種類、働く日数、地域、経費によって大きく変わります。
また、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag「看護師」)には、看護師の「一般的な就業形態」として、「自営、フリーランス」を含む各形態の数字が掲載されています。
この数字について、サイトでは「この職業で実際に働いている人が多いと感じる『就業形態』を表しています」と説明されています。
表示されている数字を合計すると100%を超えており、看護師の人数に占める割合とは別の指標として読む必要があります。
「失敗パターン」と回避策
フリーランスとして働き始めた方がつまずきやすい場面には、いくつかの共通点があります。
ここでは、よくある4つの場面と、その回避策を紹介します。
「フリーランス」の案件が、実は派遣やアルバイトだった
「フリーランス向け」と紹介されていても、契約は派遣会社との雇用やアルバイトという場合があります。
応募する前に、契約の相手と契約の形(業務委託・派遣・直接雇用)を募集要項で確認しておきましょう。
業務委託なのに、職員と同じシフトと指示で働いている
業務委託の契約でも、職員と同じようにシフトを組まれ、日々の指示を受けて働いている場合は、実態が契約と合っていない可能性があります。
気になる場合は、厚生労働省のチェックリストでご自身の働き方を確かめ、労働基準監督署に相談する方法もあります。
退職後の保険・年金・届出を後回しにする
退職すると、健康保険・年金の切り替えや、任意継続の期限など、期限のある手続きが続きます。
退職日が決まった段階で、必要な手続きと期限を一覧にしておくと、手続きの漏れを防ぎやすくなります。
単発の仕事だけで収入を組み立てようとする
単発の仕事は、日程を選びやすい一方で、季節や時期によって件数が変わることがあります。
継続して受けられる仕事と単発の仕事の組み合わせや、収入が少ない月の生活費の備えも考えておくと、見通しを立てやすくなります。
今日から始められる小さな一歩
フリーランスとして働くかどうかを決める前にも、できる準備があります。
いきなり退職するのではなく、情報を集めて確かめるところから始めてみてはいかがでしょうか。
- 気になる仕事の募集要項を見て、契約の形(業務委託・派遣・直接雇用)を確かめる
- 勤務先の就業規則で、副業・兼業の扱いを読んでおく
- 業務従事者届(令和8年12月31日現在・令和9年1月15日まで)やナースセンターへの届出の時期をカレンダーに書き込む
フリーランス以外の起業の形も含めて考えたい方は、看護師の起業|経験を活かせる事業と資格でできること・できないこともあわせて確認してみてください。
よくある質問
ここでは、よく調べられている疑問に答えます。
本文で説明した例外や条件は、ここでも同じように当てはまります。
Q. フリーランス看護師の年収はいくらですか?
金額は、仕事の種類、受ける日数、単価、経費によって大きく変わります。
雇用されている場合の給与と比べるときは、経費や、国民健康保険料・国民年金保険料などを差し引いた後で比べることが大切です。
Q. 看護師の業務委託は違法ですか?
業務委託の契約で仕事を受けることは、さまざまな職種で行われている働き方です。
問題になりやすいのは、契約は業務委託なのに、実際には発注者の指示やシフトで働いていて、実態が雇用や派遣にあたる場合です。
病院・診療所などでの看護業務は派遣が原則として禁止されているため(紹介予定派遣、休業する職員の代わり、へき地などの例外あり)、仲介会社を通じた業務委託で医療機関に入る場合は、とくに契約と実態を確認してください。
Q. フリーランスと業務委託、個人事業主は同じですか?
フリーランスは働き方、業務委託は契約の形、個人事業主は法人を作らずに事業を営む人を指す言葉で、それぞれ意味が異なります。
個人事業主として業務委託の仕事を受ける方のほか、一人で法人を作って業務委託を受ける方もいます。
Q. フリーランス看護師は病院や訪問看護で働けますか?
病院や診療所で直接雇用(常勤・非常勤・アルバイト)として働く場合は、派遣の禁止は関わりません。
派遣で働く場合は、紹介予定派遣、産休・育休・介護休業などで休む職員の代わり、へき地の場合を除き、原則として禁止されています。
訪問看護も、医療を受ける人の居宅で行う看護業務のため、派遣の禁止の対象に含まれます(例外は病院・診療所の場合と同じです)。
業務委託で受ける場合は、働き方の実態が契約の内容と合っているかが問われます。
Q. フリーランス看護師として開業届は必要ですか?
個人で事業として業務委託の仕事を受ける場合は、税務署に開業届を提出します(期限は事業を始めた年分の確定申告期限まで)。
青色申告を選ぶ場合の承認申請書など、状況に応じて別の届出が必要になることもあります。
Q. 50代・60代からでも始められますか?
年齢よりも、受けたい仕事に求められる経験や条件と、ご自身の働き方の希望が合うかどうかが大切です。
60歳以上の方には日雇派遣の例外がありますが、病院・診療所などでの看護業務の派遣禁止は別の規定のため、60歳以上の方にも適用されます(紹介予定派遣、休業する職員の代わり、へき地の例外を除く)。
体力や生活とのバランスを見ながら、小さく始めて様子を見る方法もあります。
まとめ
本記事では、フリーランス看護師という働き方を、契約の形・手続き・お金の面から整理しました。
主なポイントは次のとおりです。
- フリーランス看護師は、雇用されずに業務委託で仕事を受ける働き方の呼び方で、看護師の免許は勤務の形にかかわらず同じです。
- 「フリーランス」と紹介される仕事には、業務委託・派遣・直接雇用が混ざっていることがあり、契約の形で適用されるルールが変わります。
- 病院・診療所などでの看護業務は派遣が原則として禁止されていますが、紹介予定派遣、休業する職員の代わり、へき地などの例外があります。
- 業務委託でも、働き方の実態によっては労働者と判断されることがあります。
- 個人事業主として始めるときは、税金・保険・看護職としての届出など、複数の手続きが関わります。
まずは、気になる仕事の契約の形を確かめるところから始めてみてはいかがでしょうか。
※本記事は2026年10月時点の法令・制度に基づき作成しています。
制度は改正されることがあるため、最新の情報は厚生労働省・国税庁・日本年金機構などの公式サイトでご確認ください。
個別の契約や働き方の判断については、労働基準監督署などの公的な窓口や、内容に応じた専門家にご確認ください。
よこぜき行政書士事務所

