
目次
はじめに

税理士の先生方は、毎年の税制改正、複雑な通達やタックスアンサー、そして顧問先ごとに積み上がる申告書や帳簿類と日々向き合っておられます。
確定申告期や法人税申告期になれば、論点整理や経費区分の判定だけで一日が終わってしまう、というご経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、Googleが提供するAIツール「NotebookLM」を、税理士業務の補助ツールとして活用するための実務的な視点を整理します。
具体的な活用シーン、税理士法第38条の守秘義務との接続、料金プラン別のデータ取扱い、医療系・金融系顧問先を扱う事務所向けのコンプライアンス認証状況までを、2026年5月時点の公式ヘルプを直接照合した内容に基づいて解説します。
最終的な税務判断は当然ながら先生方ご自身が下すものであり、本記事を業務効率化の一助としていただければ幸いです。
NotebookLMとは|ChatGPTとの違い
NotebookLMはGoogleが提供するAIリサーチ・ノートツールで、最大の特徴は「アップロードした資料(ソース)だけを情報源とする」という設計思想にあります。
汎用型の生成AIとは設計が根本的に異なりますが、ハルシネーション(誤情報生成)が「ゼロになる」わけではない点にも注意が必要です。
ソース・グラウンディングという設計思想

NotebookLMでは、AIが回答を生成する範囲を「先生方がアップロードした資料」に絞り込みます。
これを「ソース・グラウンディング(Source-grounding)」と呼びます。
一般的な生成AIがウェブ上の不確かな情報を含む大規模な学習データを背景に持つのに対し、NotebookLMは指定された資料の中だけで対話する設計です。
回答には必ず引用元(Citations)の番号が付与され、クリックすると原資料の該当箇所がハイライト表示されます。
ファクトチェックを前提とした運用と相性が良いツールといえます。
対応する資料(ソース)の形式は幅広く、PDF、Microsoft Word、テキスト、Markdown、Googleドキュメント・スライド・スプレッドシート、PowerPoint、CSV、Webサイトの URL、YouTube公開動画(字幕情報)、音声ファイル、画像、ePub、Geminiチャット履歴などに対応しています(2026年5月時点・公式ヘルプ参照)。
なお対応形式は段階的に拡張されており、地域・アカウント種別・モバイルアプリ等で対応範囲が異なる場合があります。
ただし、ハルシネーションのリスクは大きく低減されますが、完全に排除されるわけではなく、生成物は必ず原資料で検証する運用が前提となります。
Google公式ヘルプでも「NotebookLM は不正確な情報を提示することがありますが、その回答は Google の見解を反映するものではありません。
医療、法律、金融に関する助言については、必ず資格を有する専門家にご相談ください」と明記されています。
ChatGPTとの違いはAIが参照する「範囲」

ChatGPTやGeminiといった汎用生成AIは、公開ウェブ情報、提携データ、ユーザーや人間トレーナーが提供・生成した情報を含む大規模なデータセットを背景に持つAIです。
アイデア出しや一般的な調べ物の幅を広げる用途には強みがあります。
これに対してNotebookLMは、参照範囲を先生方が指定した資料の中だけに絞ります。
税法・通達・基本通達・タックスアンサー・裁決事例といった「公的に確定された資料を踏まえて回答してほしい場面」では、NotebookLMの設計が噛み合いやすいといえます。
実務では、調べ物の幅出しは汎用AI、確定した資料の整理や横断検索はNotebookLM、という棲み分けで併用される先生方も増えています。
| 特徴 | NotebookLM | ChatGPT等(汎用生成AI) |
|---|---|---|
| 主な情報源 | 先生方がアップロードした資料 | 公開ウェブ情報・提携データ・人間トレーナー由来データ等 |
| ハルシネーションリスク | 大きく低減(ただしゼロではない) | 相対的に高い |
| 得意な場面 | 専門資料の整理・横断検索・要約 | 幅広いアイデア出し・文章生成 |
| 引用元の確認 | 回答ごとに引用番号付き | 出典は別途確認が必要な場合あり |
税理士業務でのNotebookLMの活用シーン
ここからは、税理士の先生方の日常業務に即した活用シーンを6つご紹介します。
前提として、税理士法第2条第1項に基づく 税務代理・税務書類の作成・税務相談 は、税理士法第52条により、税理士または税理士法人でなければ業として行うことができない独占業務です(無資格者による業務行為は同法第59条第1項第4号により2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象となります)。
NotebookLMはこれらを「代替する」ツールではなく、先生方の判断と作業を支える補助として位置づけます。
最終的な税務判断は当然ながら先生方ご自身が下すものであり、AIの出力はあくまで一次レビューの参考としてご活用ください。
【シーン1】税制改正・通達・タックスアンサーのキャッチアップ

毎年公表される税制改正大綱、改正後の所得税基本通達・法人税基本通達、国税庁のタックスアンサーは、量と更新頻度の双方で実務負担になります。
NotebookLMでは、財務省の税制改正大綱PDF、国税庁の改正解説資料、関連する基本通達のページなどを一つのノートブックに集約し、横断的に質問が可能です。


「令和8年度税制改正のうち、中小企業の交際費の損金不算入制度に関する改正点を、
適用開始時期と対象法人の範囲を含めて整理してください」
AIが返す時系列・要約・抽出結果は、引用元機能で原資料を確認したうえで採用してください。
【シーン2】顧問先ごとの資料整理と過去案件の振り返り
顧問先が増えるほど、関連資料は議事録、メール、申告書控え、税務調査時のやり取りなど多方向に広がります。
NotebookLMでは、顧問先ごとに専用ノートブックを作成し、過去の議事録・メール抜粋・申告書控え・調査時の質問応答などを集約しておくことで、対話形式で素早く参照いただけます。

A社の前回税務調査での主な指摘事項を時系列で整理し、未対応の事項があれば抜き出してください
打ち合わせ準備や急な問い合わせ対応の初動を、AIに整理させた上で先生方が確認するという流れにすると、所内の動きを軽くしやすくなります。
【シーン3】申告書作成期の論点整理

確定申告期や法人税申告期は、複数の顧問先の論点を並行して扱う期間です。
業種ごとに頻出する経費区分の根拠通達・タックスアンサーをノートブックにまとめておくと、「この経費の損金算入可否に関する根拠を整理して」といった形での活用が可能です。
ここでも重要な前提として、税務書類の作成・税務代理・税務相談は税理士法第2条第1項に基づく独占業務であり、AI生成物は補助レビュー資料として位置づけられるものです。最終的な税務判断は先生方ご自身に責任があります。
【シーン4】税務調査対応資料の事前整理
税務調査の事前準備では、過年度の申告書、帳簿、経費の根拠資料、関連通達、類似裁決事例を横断的に確認する必要があります。
NotebookLMで関係資料をまとめてソース化しておけば、「今回争点になりそうな論点を、ソース内の通達と裁決事例から整理して」といった指示で、論点を俯瞰しやすくなります。

あなたは法人税の実務経験豊富な税理士の立場で、この経費区分に関する
争点候補を、ソース内の通達と裁決事例の引用番号を示しながら3点に絞ってください
AIが整理した内容は一次レビューの参考であり、最終的な税務判断は先生方ご自身が下すものです。
【シーン5】事務所内ナレッジ共有と新人教育

年末調整、法定調書、償却資産申告、消費税の届出関係といった定型性の高い業務は、手順書とFAQの整備が事務所の生産性に直結します。
NotebookLMに「事務所マニュアル」用ノートブックを作り、各業務の手順書・チェックリスト・FAQ・過去事例を集約することで、新人スタッフが先輩を都度呼ばずに自走できる環境を整えやすくなります。FAQ・タイムライン・学習ガイド・フラッシュカード等を自動生成する機能も活用可能です。
ただし、生成された学習教材も誤情報を含む可能性があるため、新人向けに配布される前に内容を確認されることをお勧めします。
【シーン6】移動時間の有効活用(Audio Overview)
顧問先訪問の移動時間は、これまでデッドタイムになりがちでした。
NotebookLMの「Audio Overview(音声解説)」機能では、アップロードした資料を2人のAIホストが対話形式で解説する音声を生成いただけます。
訪問前に過去議事録や直近の業界レポートを「ながら聞き」でインプットする使い方が想定できます。
音声化される際に細部のニュアンスが変わる可能性があるため、重要な意思決定に使う前に原資料での確認をご検討ください。
NotebookLMの基本的な使い方
NotebookLMの操作は、Googleアカウントがあればブラウザ上で完結します。
ただし、職場や学校のGoogleアカウントを使う場合は、組織の管理者がNotebookLMへのアクセスを有効にしている必要があります(2026年5月時点・公式ヘルプ参照)。
6ステップで始めるNotebookLM

ここでは、初めて触れる先生方向けに基本的な流れを6つのステップに整理します。
- ログイン:https://notebooklm.google.com にアクセスし、Googleアカウントでサインインします。
- ノートブック作成:「+新しいノートブック」をクリックし、案件名や顧問先名で分かりやすく命名します(例:「A社_税制改正対応」)。
- ソースのアップロード:PDF、Word、Googleドキュメント、スライド、スプレッドシート、PowerPoint、CSV、Web URL、YouTube動画、音声、画像、ePub、Geminiチャット履歴など、対応形式の資料を追加します。
- 質問する:画面下部のチャットボックスに自然な日本語で質問を入力します。回答には引用番号が付き、原資料の該当箇所を確認いただけます。
- ノートブックガイド機能:FAQ、タイムライン、学習ガイド、Audio Overview、Video Overview、スライド、インフォグラフィック、Mind Map(マインドマップ)などを自動生成可能です。ただし、これらの生成物はビジュアル化・要約・音声化の過程で情報が単純化される場合があります。Video Overviewは依頼者向けの説明資料として有用ですが、提供前に内容を必ずご自身でご確認ください。Slide Deckはプロンプト修正時の挙動が公式ヘルプで明確化されていない部分もあり、修正後の内容は原資料と照合することをお勧めします。Infographicはビジュアル化の過程で情報が単純化される場合があり、Mind Mapも構造化の過程で細部のニュアンスが省略される可能性があります。
- 会話履歴の管理:2025年10月末から段階的に提供が開始され、2026年3月のWorkspaceアップデートで全エディションへの展開が完了した「Saved and secure conversation history」機能により、会話履歴は自動的に保存され、セッションを閉じても再開可能となりました。共有ノートブックでも、各ユーザーの会話履歴は本人に対してのみ非公開で保持されます。重要な分析結果は「ピン留め」アイコンでノートに保存することもおすすめです。チャット履歴を削除したい場合は「Delete Chat History」を明示的に実行してください。
なお、利用条件として、法定年齢に達していること、対応国・地域(Geminiアプリ提供地域・180以上)・対応言語に該当することなどが公式ヘルプに記載されています。
最新条件は公式情報でご確認ください。
料金プランとデータの取扱いを正確に整理する
NotebookLMは「無料」「Workspaceなら学習に使われない」と一括で説明されがちですが、実際には個人プラン4階層と Workspace 5階層、さらに NotebookLM Enterprise(Google Cloud 経由)で、プライバシー保証の階層が異なります。税理士法第38条との関係も含めて、ここで整理しておきましょう。
個人プランの構造(2026年5月時点)
NotebookLM は単体販売されず、各 Google AI サブスクリプションに含まれる形で提供されます。
| プラン | 提供形態 | 月額目安(2026年5月時点) |
|---|---|---|
| Standard(無料) | 個人 Google アカウント | 無料 |
| NotebookLM in Plus | Google AI Plus に含まれる | 約 $7.99/月 |
| NotebookLM in Pro | Google AI Pro に含まれる(旧 Google AI Premium / Google One AI Premium) | 約 $19.99/月(円建ては約2,900円) |
| NotebookLM in Ultra | Google AI Ultra に含まれる | 約 $249.99/月 |
※ 料金は2026年5月時点・日本での表示価格と為替により変動するため、契約前にGoogle公式ページで最新情報をご確認ください。
主な上限値と機能の目安(2026年5月時点)
公式アップグレード表に基づく、各プランの上限値と上位機能の利用範囲は以下の通りです。
| 項目 | Standard(無料) | Plus | Pro | Ultra |
|---|---|---|---|---|
| ノートブック数 | 100/ユーザー | 200/ユーザー | 500/ユーザー | 500/ユーザー |
| 1ノートのソース数 | 50件 | 100件 | 300件 | 600件 |
| 1ソースの最大サイズ | 50万語または200MB(全プラン共通) | |||
| 1日のチャット回数 | 50回 | 200回 | 500回 | 5,000回 |
| Audio Overview 生成 | 1日3回 | 1日6回 | 1日20回 | 1日200回 |
| Video Overview 生成 | 1日3回 | 1日6回 | 1日20回 | 1日200回 |
| Cinematic Video Overview | — | — | — | 1日20回(Ultra のみ) |
| Deep Research | 月10回 | 1日3回 | 1日20回 | 1日200回 |
| Mind Map | 無制限 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
※ Deep Research の上限は、Standard のみ月次(月10回)で、Plus 以上は日次(1日3回〜200回)に切り替わる点にご注意ください。Standard から Plus にアップグレードすると、月10回から月90回(1日3回×30日)程度の利用枠に大幅に拡張されます。
特に、アニメーション付き動画解説の「Cinematic Video Overview」は Google AI Ultra プラン(および後述の Workspace AI Ultra Access)でのみ、1日20回まで提供される機能です。
Workspace 利用は5階層(2026年5月時点)
Workspace アカウントでの NotebookLM 利用は、エディションによって5階層に分かれます。
利用中のエディションがどの階層に該当するかは、組織管理者と公式ヘルプでご確認ください。
| 階層 | 該当エディション例 | NotebookLM の位置づけ | データ保証 |
|---|---|---|---|
| 1. 追加サービス | Business Base、Essentials Starter、Workspace Individual、G Suite、Cloud Identity 等 | 追加サービス | 標準(個人プラン同等) |
| 2. コアサービス + enterprise-grade | Business Starter、Enterprise Essentials、Frontline 全エディション、Nonprofits、Education Fundamentals/Standard/Plus 等 | コアサービス | AIモデル学習・人間レビュー対象外を公式保証 |
| 3. コアサービス + Higher Level Access | Business Standard、Business Plus、Enterprise Standard、Enterprise Plus、Google AI Pro for Education 等 | コアサービス | 同上 + 上限拡張 |
| 4. アドオン Expanded Level Access | AI Expanded Access | アドオン | 同上 + さらに上限拡張 |
| 5. アドオン Highest Level Access | AI Ultra Access | アドオン | 同上 + Cinematic Video Overview 等の最高位機能 |
Business Starter から既にコアサービスとして提供されており、enterprise-grade security & privacy の保証範囲に入る点が、しばしば誤解されやすい論点です。
「Business Standard 以上で初めて Workspace 版が使える」というわけではありません。
プラン別のデータ取扱いの違い

Google公式ヘルプには次のように明記されています(2026年5月に公式ヘルプを直接確認した文言)。
お客様のデータは保護されており、フィードバックを提供しない限り、NotebookLM のトレーニングに使用されることはありません。改善のためのフィードバックをお寄せいただいた場合、Google は、クエリ、アップロード、モデルの回答など、そのやり取りの全容を確認させていただく場合があります。
Google Workspace または Google Workspace for Education をご利用の場合、NotebookLM でのアップロード、クエリ、モデルの回答は、人間のレビュアーが確認することも、AI モデルのトレーニングに使用されることもありません。
この記載をプラン階層に当てはめると、次のように整理できます。

- 個人 / Standard・Google AI Plus/Pro/Ultra:アップロード・クエリ・回答は、フィードバックを提供しない限り AI モデル学習に使用されません。ただし、回答評価の「いいね/よくない」等のフィードバック送信時には、クエリ・アップロード・回答を含む文脈が Google のレビュー担当者に確認される場合があります。
- Workspace の追加サービス階層(Business Base、Essentials Starter 等):個人プランと同等の取扱い。
- Workspace のコアサービス階層(Business Starter から上のエディション):アップロード・クエリ・回答とも、AIモデル学習にも人間レビューにも使用されないことが明示的に保証されます。
また、Workspace版でも次のような既知の制約があるため、運用時にあわせてご確認ください。
- Workspace DLP(情報漏洩防止)は、NotebookLMのソース・チャット・生成物には統合されていない構成があります
- Drive からインポートしたファイルは NotebookLM 側にコピーされ、元の Drive ファイルの共有設定・データリージョン設定はそのまま反映されません
- データリージョン設定が、Workspace の他サービスと異なる場合があります
ここで関わってくるのが税理士の守秘義務です。

税理士法第38条 は税理士本人の秘密保持義務を、税理士法第54条 は使用人等(事務所職員・補助税理士・外部委託先)の秘密保持義務を、税理士法第59条第1項第3号 は2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を規定しています(2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」は「拘禁刑」に一本化されました)。
顧問先の機密情報を扱う以上、AIツールの環境選定は守秘義務と直接結びつく実務判断になります。
医療系・金融系顧問先を扱う事務所向けの追加注記

ここまでで NotebookLM のデータ保証の階層を整理してきましたが、医療系・金融系顧問先を扱う事務所では、もう一段踏み込んだコンプライアンス認証の状況も確認しておくと安全です。
NotebookLMは Workspace 対象エディションで enterprise-grade security & privacy が保証されますが、現時点(2026年5月時点)では ISO・SOC・FedRAMP 等の主要コンプライアンス認証はまだサポートされておらず、HIPAA 対応のための Google Business Associate Agreement(BAA)の対象にも含まれていません。
これは Workspace の他コアサービス(Gmail・Drive・Docs 等)とは状況が異なる点です。
医療情報・特定金融情報など、特定の規制要件を満たす必要がある業務での利用については、所内のコンプライアンス担当者にご相談の上、Workspace Privacy Hub(https://workspace.google.com/intl/ja/learn-more/security/)の最新記載をご確認ください。
このような状況を踏まえ、医療系・金融系顧問先の高度な機微情報は、当面は NotebookLM への直接アップロードを避け、税法・通達・タックスアンサー等の公開情報や、機微情報をマスキング・仮名化した資料に限定して活用する、という運用設計も現実的な選択肢になります。
より厳格な要件を満たす必要がある場合は、Workspace 版とは別に「NotebookLM Enterprise」(Google Cloud 経由)の利用も選択肢になります。
NotebookLM Enterprise では、データリージョン化、VPC-SC、IAM コントロール、Cloud Data Processing Addendum 等の追加機能が利用可能で、Google Cloud インフラ全体としては HIPAA、FedRAMP、ISO 27001、SOC レポート、PCI DSS 等の認証要件への適合実績があります(NotebookLM Enterprise 自体の認証取得状況は順次拡大中のため、Google Cloud 公式ドキュメントでの最新確認をお勧めします)。
安全に活用するための運用ルール

ツール側のセキュリティが整っていても、所内の運用ルールがあって初めて守秘義務に応えられます。
事務所として整えておきたい3つの観点を整理します。
依頼者同意・所内ポリシーの整備
AIツールを業務で活用する前提として、案件処理にAIツールを利用することについての依頼者への説明と同意取得をご検討ください。
所内のAI利用ポリシーを文書化し、職員・補助税理士・外部委託先を含めて方針を共有しておくと、税理士法第54条の使用人秘密保持義務との整合性も取りやすくなります。
日本税理士会連合会の税理士倫理綱領との整合性も、定期的にご確認ください。
入力前の情報整理と匿名化
氏名、住所、生年月日、マイナンバー、口座番号などの高度な機微情報については、アップロード前にマスキング・仮名化することを検討します。
特定の顧問先のみで利用可能な機微情報については、Workspace のコアサービス階層(Business Starter 以上のエディション)で扱うことが望ましいといえます。
土台となる Google アカウント自体のセキュリティ(2段階認証、パスキー、強力なパスワード)を確実に設定することも、最も基本的かつ効果的な情報漏洩対策です。
フィードバック送信の制御と運用記録
個人プラン・無料プランで使う場合、回答評価の「いいね/よくない」を送ると、クエリ・アップロード・回答が人間レビュー対象となる場合があります。
業務利用環境では、フィードバック送信を運用ルールで制限することも有効です。
担当案件が終了した資料は、事務所の規定に従って定期的に削除し、データ量を最小化する運用にしておくと、万が一の際の影響範囲を抑えやすくなります。
使いこなすためのコツと注意点

NotebookLMは強力なツールですが、限界を理解した上で使うことで、本来の力を引き出しやすくなります。
先生方が陥りやすい4つの注意点を整理します。
必ず引用元で原資料を再確認
NotebookLMの回答は、ソースに基づくとはいえ「優秀なアシスタントの第一稿」として扱うのが安全です。
複雑な条文・通達の解釈、スキャンPDFの文字認識精度に依存する箇所などでは、AIの解釈にずれが生じる可能性があります。
Google公式ヘルプの英語版には「NotebookLM can make mistakes, so double-check it.」とも記載されています。
重要な判断の前には、必ず引用元機能で原文をご確認ください。
ソースの上限を理解する
NotebookLMが一度に扱える1ソースのサイズには上限があり、最大50万語または200MB程度が目安です(2026年5月時点・公式ヘルプ参照)。
分厚い解説書をそのままアップロードするのではなく、章ごと・テーマごとに分割すると、AIが全体を分析対象に含めやすくなります。
プロンプトの基本
質の高い回答を得るには、プロンプトの作り方が大きく影響します。「役割(ペルソナ)」「タスク」「出力形式」を明示するのがコツです。
下記の比較で違いをご確認ください。
| 区分 | プロンプト |
|---|---|
| 悪い例 | この通達について教えて |
| 良い例 | あなたは法人税の実務経験豊富な税理士として、この通達のうち中小企業向け特例の要件を、条文番号と引用元を明示しながら箇条書きで整理してください |
会話履歴の取扱い
NotebookLMの会話履歴は、2025年10月末から段階的に提供が開始され、2026年3月のWorkspaceアップデートで全エディションへの展開が完了した「Saved and secure conversation history」機能により、自動的に保存されるようになりました。
セッションを閉じても再開可能で、共有ノートブックでも各ユーザーの履歴は本人に対してのみ非公開で保持されます。
一方で、案件が完了した後の会話履歴を残し続けるかどうかは事務所のデータ管理ポリシー次第です。
不要になった履歴は「Delete Chat History」で明示的に削除する運用と、重要な分析結果はピン留めでノートに固定する運用をセットで整えておくと安心です。
他士業の先生方の活用事例
NotebookLMの活用は税理士業務だけではなく、他士業でも同様の効果が報告されています。
業種が違っても、守秘義務との接続や運用ルール整備の観点では共通する論点が多くあります。
- 弁護士の業務が劇的に変わる!NotebookLM活用ガイド
- 司法書士の業務が劇的に変わる!NotebookLM活用ガイド
- 社労士の業務が劇的に変わる!NotebookLM活用ガイド
- 行政書士の入管業務が変わる!NotebookLM活用ガイド
よくあるご質問
導入を検討される先生方からよく寄せられる4つの質問を、守秘義務と運用面に絞って整理します。
Q. 顧問先のデータを入れて大丈夫ですか?
原則として、Workspace のコアサービス階層(Business Starter から上のエディション)での運用を推奨します。
個人プランで利用する場合は、高度な機微情報を直接入力することは避け、依頼者の同意を得たうえで運用範囲を限定してご利用ください。
Workspace のコアサービス階層でも、DLP 未統合・Drive 共有設定の非継承といった既知の制約があるため、所内ルールを整えた上で運用することが望ましいといえます。
Q. 税理士法第38条との関係はどう整理すれば良いですか?
税理士法第38条(本人の守秘義務)、第54条(使用人等の守秘義務)、第59条第1項第3号(2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)が直接関わります。
AI利用の前提として、依頼者同意の取得・所内ポリシー文書化・環境(プラン)選定の3点を整えておくことが、リスク管理の基本となります。
Q. NotebookLMで税務相談を自動化できますか?
税務代理・税務書類作成・税務相談は、いずれも税理士法第2条第1項に基づく税理士の独占業務であり、税理士法第52条により税理士または税理士法人でなければ業として行うことができません(罰則は第59条第1項第4号)。
NotebookLMは先生方の補助ツールとして使うことが前提であり、依頼者向けの自動相談チャネルとして設計されているわけではありません。
Q. ChatGPTやGeminiと併用すべきですか?
実務では併用が現実的です。たとえば、新しい税制テーマの全体像をつかみたい段階や、顧問先向けの説明文・メール文案を作りたい場面では、ChatGPTやGeminiといった汎用AIで幅広く下調べをします。
確定した資料(税法・通達・タックスアンサー・顧問先資料等)の整理や横断検索、引用元を確認しながらの精読作業は、NotebookLMに任せる、というように業務フェーズで使い分ける運用が広がっています。
関連する活用事例としては、ChatGPTで行政書士の入管業務を10倍効率化もご参照ください。
なお、Google Workspace 全般の使い方については、個人事業主の「Google Workspace」の使い方でも整理しています。
まとめ

ここまで、NotebookLMの設計思想、税理士業務での6つの活用シーン、税理士法第38条との接続を踏まえたプラン別運用、医療系・金融系顧問先を扱う事務所向けのコンプライアンス認証状況、所内ルール整備、使いこなしのコツを整理してきました。
主要なポイントは以下の通りです。
- NotebookLMは「アップロードした資料だけを情報源とする」設計のAIで、税法・通達・タックスアンサー・顧問先資料の整理に向いている
- ハルシネーションのリスクはゼロではなく、生成物は必ず原資料で検証する運用が前提
- 税務代理・税務書類作成・税務相談は 税理士法第2条第1項+第52条 により税理士・税理士法人の独占業務であり、AIは補助として位置づける
- 守秘義務は 税理士法第38条(本人)、第54条(使用人等)、第59条第1項第3号(2025年6月1日施行の刑法改正により「拘禁刑」に一本化)が直接関わる
- プランは個人4階層(Standard/Plus/Pro/Ultra)、Workspace 5階層、Enterprise で階層化されており、データ取扱いと機能上限が段階的に異なる(Business Starter から既にコアサービスとしての保証あり)
- Cinematic Video Overview は Google AI Ultra および Workspace AI Ultra Access の1日20回まで(他プランでは提供なし)
- 現時点では ISO・SOC・FedRAMP 等の主要コンプライアンス認証はまだサポートされておらず、HIPAA 対応のための BAA の対象にも含まれていないため、医療系・金融系顧問先を扱う事務所では運用範囲の検討が必要
- 最終的な税務判断は、当然ながら資格を持つ専門家(=先生方)の責任の下に行われるものであり、AIの出力は一次レビューの参考として位置づける
まずは無料の Standard プランで小さく試し、所内のAI利用ポリシーと依頼者への説明資料を整えたうえで、業務利用環境へ段階的に拡張していく順序が、無理のない導入の進め方といえます。
※本記事は2026年5月時点のNotebookLMの仕様および公式ヘルプ・Workspace Privacy Hub・Workspace Updates ブログ・e-Gov 法令検索の記載を直接確認した内容に基づいて作成しています。AIツールの仕様および料金プランは頻繁に更新されるため、最新情報はNotebookLM公式サイト(https://notebooklm.google.com)、Google公式ヘルプ(https://support.google.com/notebooklm/)、Workspace Privacy Hub(https://workspace.google.com/intl/ja/learn-more/security/)、Workspace Updates ブログ(https://workspaceupdates.googleblog.com/)等でご確認ください。法令の最新情報は e-Gov 法令検索(https://elaws.e-gov.go.jp/)でご確認いただけます。個別の事案については資格を持つ専門家へのご相談をおすすめします。
よこぜき行政書士事務所


