司法書士の業務が劇的に変わる!NotebookLM活用ガイド2026

はじめに

2024年4月の相続登記義務化以降、相続案件は全国的に増加傾向にあります。

さらに超高齢化を背景に、成年後見業務へのニーズも高まり続けています。

戸籍解読、登記関連書類の整理、後見の長期記録など、属人化しやすい作業に追われる司法書士の先生方も多いのではないでしょうか。

近年注目を集めているのが、Googleが提供するAIツール「NotebookLM」です。

アップロードした資料の範囲内で回答を生成する「ソース・グラウンディング」型の設計が、情報の正確性が生命線である司法書士業務との親和性が高いとされています。

本記事では、司法書士の先生方がNotebookLMを業務に取り入れる際のポイントを、具体的な活用シーン、料金プランの選び方、セキュリティと守秘義務、業務範囲の境界線まで、2026年5月時点の情報に基づいて整理してご紹介します。

司法書士の先生方を取り巻く環境とAIツールの位置づけ

司法書士の先生方を取り巻く環境とAIツールの位置づけ

司法書士業界はいま、相続登記義務化以降の案件増、超高齢化に伴う後見業務の拡大、そしてAIツールの急速な進化という、複数の変化に同時に直面しています。

AIツールをどう位置づけるかを考える前提として、業界環境と守秘義務との関係を整理しておきます。

2024年4月相続登記義務化以降の業務環境

2024年4月に施行された相続登記の申請義務化により、相続によって不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に登記申請をする義務を負うことになりました。

正当な理由なく申請を怠った場合は、不動産登記法第164条第1項により10万円以下の過料の対象となります。

義務化開始前に発生していた相続も対象となるため、過去案件の掘り起こしも進んでいます。

戸籍解読、相続人確定、遺産分割協議書の精査、登記原因証明情報の整理など、相続登記の付随業務は属人化しやすく、案件が増えるほど補助者を含めた所内のリソース配分が課題になりがちです。

AIツールが現実的な選択肢として検討される背景には、こうした構造的な事情があります。

司法書士法第24条 守秘義務とAI利用の前提

司法書士の先生方には、司法書士法第24条に基づく秘密保持の義務があります。

違反した場合は同法第76条第1項により、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象となります(2025年6月1日施行の刑法改正により「懲役」は「拘禁刑」に一本化されました)。

依頼者の戸籍、印鑑証明書、不動産情報、商業登記の決議内容など、扱う情報は典型的な機密情報です。

AIツールに何らかの情報を入力する以上、利用環境の選定・依頼者同意・所内ポリシーの整備が、機能の便利さよりも先に検討すべき前提となります。

NotebookLMとは|司法書士業務との親和性

NotebookLMとは|司法書士業務との親和性

NotebookLMは、ユーザーがアップロードした資料の範囲内で回答を生成する、Google製のAIリサーチ・ノート作成ツールです。

ChatGPTなどの汎用型生成AIとは設計思想が根本的に異なり、「ソース・グラウンディング」を採用しています。

司法書士業務との親和性が高いとされる理由を整理します。

ソース・グラウンディングという設計思想

ソース・グラウンディングという設計思想

ソース・グラウンディングは、ユーザーが特定の資料(PDF、Wordファイル、Googleドキュメント、ウェブサイトのURL、YouTube動画の字幕、音声ファイル、画像など)をアップロードし、AIがその資料に「接地(グラウンディング)」した状態で回答を生成する仕組みです。

司法書士業務でいえば、法令条文、登記関連通達、判例、所内マニュアル、特定案件の関連書類など、信頼できる資料を集めた「ノートブック」を作り、その範囲内でAIに質問する形になります。

インターネット上の不確かな情報や、AIが事前学習で取り込んだ広範な知識は、原則として回答の根拠には使われません。

一般的なAI(ChatGPT等)との根本的な違い

ChatGPTのような汎用型生成AIは、事前学習した膨大なデータと、必要に応じたウェブ検索を組み合わせて回答を生成します。

柔軟性は高い一方で、専門業務に必要な「どの資料に基づいた回答か」を厳密に追跡することが難しい場面もあります。

これに対しNotebookLMは、ノートブックに登録した資料の範囲内で動作するため、回答の根拠を限定できます。

事前学習による「もっともらしい嘘」の混入を相対的に抑えやすい設計です。

ただし、用途は使い分けが前提です。

広範な情報収集や新規アイデアの発想にはChatGPTやGemini、Claudeなどの汎用AIが、信頼できる資料に基づく深い分析にはNotebookLMが、それぞれ強みを発揮します。

引用元の自動付与とファクトチェック容易性

NotebookLMが生成した回答には、回答の根拠となったソース箇所への引用番号が自動で付与されます。

番号をクリックすると元の資料の該当箇所が表示されるため、AIの回答を鵜呑みにせず、根拠を一次資料で確認する運用が現実的に取りやすい設計です。

司法書士業務のように、根拠の追跡が重要な領域では、この機能の存在は導入時の判断材料の一つになります。

ハルシネーション抑制の範囲と留保

ソース・グラウンディングと引用表示により、AIが事前学習データから「もっともらしい嘘」を生成した場合でも、根拠の確認がしやすくなるため、ハルシネーションの検出・抑制に役立ちます。

ただし、Google公式ヘルプにも「NotebookLM は不正確な情報を提示することがあります」と明記されているとおり、リスクは完全には防げません。

ノートブック内の複数情報を要約・再構成する過程でニュアンスが変わる場合もあり、生成物は必ず原資料で検証する運用が前提となります。

専門的助言の代替としては利用せず、最終判断は先生方の専門判断によってください。

司法書士業務における5つの活用シーン

NotebookLMの効果を引き出すには、一発の完璧な質問ではなく、対話を重ねて段階的に分析を深める「プロンプト・チェイニング」の発想が役立ちます。

ここでは、司法書士の先生方の代表的な業務に沿って、5つの活用シーンを整理してご紹介します。

なお、AIが返す抽出結果は、最終的に必ず原資料で照合してからご採用ください。

【活用1】相続業務|戸籍謄本・改製原戸籍の解読と相続人確定

【活用1】相続業務|戸籍謄本・改製原戸籍の解読と相続人確定

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍は、手書きで読みづらく、家族関係が複雑な案件では解読だけで数時間を要することがあります。

相続人確定に必要な戸籍一式と、不動産の全部事項証明書、遺産分割協議書のドラフトなどを一つのノートブックにアップロードし、段階的にプロンプトを出していきます。

プロンプト例

アップロードされた戸籍謄本群を時系列で整理し、被相続人の親・配偶者・子・代襲相続人の関係を一覧表にまとめてください。
各項目の根拠となる戸籍のページを引用形式で明示してください。

プロンプト例

上記の整理結果について、相続放棄・廃除・欠格事由の有無を判断するために必要な追加資料があれば、推測ではなく不足箇所を明示してください。

ここで特に注意したいのは、戸籍画像のOCR・画像認識の限界です。

Google公式ヘルプも、画像によってはうまく機能しない場合があると明記しており、手書き戸籍・古い改製原戸籍・墨書きで滲んだ文字などは誤読が起きやすい領域です。

AIが返す相続関係の整理結果は、登記申請書類の根拠資料として直接使うのではなく、先生方の解読作業を補助するものと位置づけ、相続人確定の根拠として単独使用しないでください。

最終的な相続人の確定は、必ず原本での照合と専門判断によってください。

【活用2】不動産登記|契約書・関連書類のレビュー

【活用2】不動産登記|契約書・関連書類のレビュー

不動産登記では、売買契約書、登記原因証明情報、印鑑証明書、住民票、固定資産評価証明書など、複数書類の整合性を確認する場面が頻繁にあります。

プロンプト例

売買契約書、登記原因証明情報、住民票、印鑑証明書の記載内容を比較し、当事者の氏名・住所・登記原因日付に齟齬がないかを確認してください。
差異があれば該当箇所を引用形式で示してください。

プロンプト例

本件の所有権移転登記に必要な添付書類を、不動産登記法・不動産登記令の規定に照らして整理し、不足が想定されるものがあれば指摘してください。

担保関係が絡む案件では、抵当権設定契約書・債務者の住所変更履歴・登記識別情報の有無なども併せてアップロードすると、横断的な確認の補助になります。

AIが指摘した「差異」「不足」は、最終的に先生方の専門判断で原資料を照合してご確認ください。

【活用3】商業登記|定款・議事録ドラフトの整合性確認

【活用3】商業登記|定款・議事録ドラフトの整合性確認

商業登記の業務では、定款変更、役員変更、本店移転、組織再編など、定款・株主総会議事録・取締役会議事録の整合性を確認する作業が中核になります。

当該会社の現行定款・過去の議事録・最新の登記事項証明書などをノートブックにまとめておくと、ドラフトの確認時に活用できます。

プロンプト例

アップロードした現行定款、過去の議事録、最新の登記事項証明書を踏まえ、提示する役員変更議事録のドラフトに、定款や会社法上の手続要件との不整合がないかを確認してください。

プロンプト例

役員選任に関する決議要件について、当該会社の定款規定と会社法第341条との関係を整理してください。

会社法の解釈や具体的な決議要件の判断は、先生方の最終確認が前提となります。

AIが提示する確認結果は、ドラフト作成時の補助としてご活用ください。

【活用4】成年後見|長期記録・収支報告の整理

成年後見業務は、被後見人の財産目録、収支記録、医療・介護費の支払い、不動産管理などを長期間にわたって管理する必要があります。

年単位で蓄積される記録から、家庭裁判所への報告に必要な情報を抽出する作業は、年次の負担が大きくなります。

ノートブックに、年度ごとの収支記録、医療費・介護費の領収書PDF、不動産関連書類、過去の家裁報告書などを集約しておき、報告書作成時に質問する運用が考えられます。

プロンプト例

過去1年間の収支記録から、家庭裁判所への定期報告書に記載すべき主要な収入・支出項目を整理し、各項目の根拠となる領収書のページを引用形式で示してください。

家裁への報告内容については、被後見人の利益保護の観点から、先生方による最終確認と判断が不可欠です。

AIの整理結果は集計の下準備としてご活用ください。

【活用5】所内ナレッジ|過去案件・研修資料のプラットフォーム化

事務所内に蓄積した過去の登記申請書類のひな形、業務マニュアル、研修資料、所内通達などをノートブックに集約しておくと、補助者を含めた所内の調べ物の効率が変わります。

プロンプト例

所内マニュアルと過去案件の処理例を踏まえ、本件のような共有持分の相続登記の標準的な処理フローを整理してください。引用元のマニュアルページを必ず明示してください。

プロンプト例

2024年の相続登記義務化に関するクライアント向け説明資料と、所内の補助者向け研修レジュメをそれぞれ別バージョンで作成してください。

事務所内の知見の集約は、サービス品質の均質化と、補助者の早期戦力化に寄与します。

なお、ノートブックの共有設定・アクセス権限は、所員の役割と顧客情報の機密度に応じて慎重にご判断ください(共有時の留意点は後述のセキュリティ章で整理します)。

料金プランの選び方|無料利用枠+有料3プランとWorkspace

料金プランの選び方|無料利用枠+有料3プランとWorkspace

NotebookLMは単体販売されておらず、各上位Google AIサブスクリプション、Google Workspaceの各エディション、またはGoogle Cloud(NotebookLM for Enterprise)に含まれる形で提供されます。

事務所での利用形態に合わせて、まずは構造から整理しましょう。

個人プラン|無料利用枠+有料3プラン(Plus / Pro / Ultra)

個人向けの利用は、Standard(無料利用枠)と、Google AIの有料サブスクリプション3プラン──Plus(NotebookLM in Plus)、Pro(NotebookLM in Pro)、Ultra(NotebookLM in Ultra)──の組み合わせで提供されます。

料金は2026年5月時点でPlusが約7.99ドル/月、Proが約19.99ドル/月(円建てで約2,900円)、Ultraが約249.99ドル/月とされていますが、地域・キャンペーン・為替で変動するため、申込前に必ず公式の最新表示価格をご確認ください。

なお、旧「Google AI Premium」「Google One AI Premium」は、2025〜2026年にかけて「Google AI Pro」へ名称統合が進んでいます。

記事や解説資料で旧名称を見かけた場合は、現在のプラン構造と読み替える形でご確認ください。

Workspaceのアクセス区分

WorkspaceアカウントでのNotebookLM利用は、エディションによってアクセス階層が分かれます。

Google公式ヘルプ「Use NotebookLM with a work or school Google account」(2026年5月確認時点)では、以下の5区分で整理されています。

  • Standard Access(追加サービス扱い):Business Base、Essentials Starter、Workspace Individual、G Suite等
  • Standard Access + enterprise-grade(コアサービス):Business Starter、Enterprise Essentials、Frontline、Nonprofits、Education Fundamentals/Standard/Plus等
  • Higher Level Access:Business Standard、Business Plus、Enterprise Standard、Enterprise Plus、Google AI Pro for Education等
  • Expanded Level Access:AI Expanded Accessアドオン
  • Highest Level Access:AI Ultra Accessアドオン(Cinematic Video Overview対応)

加えて、2026年4月のWorkspace Updatesブログで、Education Plus および Teaching and Learning add-on 向けに「Plus badge」が付与され、上限値が拡張される運用が公開されました。

「Plus」「Pro」「Expanded」「Ultra」の4種類のバッジがエディションごとに異なる形で付与されるため、所属エディションがどの区分に該当するかは、Google Workspaceの公式ヘルプおよびWorkspace Updatesブログの最新版で必ずご確認ください。

「Business Standard以上」と粗くまとめると階層の差異を見落とす可能性があります。

機能上限比較表(主要プラン)

2026年5月時点での主要な機能上限を以下に整理します。

項目Standard(無料)PlusProUltra
ベースモデル標準モデルGemini 3.1 ProGemini 3.1 ProGemini 3.1 Pro(優先)+ Deep Think等
ノートブック数100/ユーザー200/ユーザー500/ユーザー500/ユーザー
ソース数50/ノートブック100/ノートブック300/ノートブック600/ノートブック
1日のチャット50/日200/日500/日5,000/日
Audio/Video Overview各3/日各6/日各20/日各200/日
Cinematic Video Overview不可不可2/日20/日
データの学習利用学習対象外(フィードバック送信時に人間レビューの対象となる場合あり)
既存セキュリティ統合(DLP・Drive共有設定等)個人アカウントのため限定的

Cinematic Video Overviewは、2026年3月4日にGoogle AI Ultra向けに先行リリースされ、その後3月下旬にPro向けにも段階提供されました(Proは2/日、Ultraは20/日)。

段階提供される機能は提供範囲が随時変わるため、最新の提供条件は公式ブログ(blog.google)および公式ヘルプで改めてご確認ください。

また、2026年3月公開の「Saved and secure conversation history(セッションを閉じても会話履歴が自動保存・再開できる機能)」など、新機能も順次追加されています。

なお、Audio Overview、Video Overview、Cinematic Video Overview、Slide Deck、Infographic等の生成物は、ビジュアル化・音声化の過程でニュアンスが変わる場合があるため、依頼者・補助者への配布前に内容をご自身でご確認のうえご活用ください。

セキュリティと司法書士の守秘義務

セキュリティと司法書士の守秘義務

NotebookLMを業務で使う前提として、司法書士の守秘義務関連法条との接続、プラン階層別のデータ取扱いの差、そしてコンプライアンス認証状況を、最初に整理しておくことが重要です。

便利さよりも前に確認すべき項目を順に見ていきます。

司法書士法第24条 守秘義務+第76条第1項 罰則の整理

司法書士の先生方には、司法書士法第24条に基づく秘密保持の義務があり、業務上知り得た秘密を漏らした場合は、同法第76条第1項により6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象となります(2025年6月1日施行の刑法改正により「懲役」は「拘禁刑」に一本化)。

なお、同条第2項により、この罪は告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪とされています。

AIツールを業務に取り入れる際には、依頼者の戸籍、印鑑証明書、不動産情報、商業登記の決議事項などの取扱いについて、業務委任契約・所内ポリシー・依頼者の事前同意の3点を整備したうえで利用する運用が、先生方の事務所のリスク管理に資すると考えられます。

補助者・職員に対する守秘管理

司法書士法には、社労士法第27条の3や税理士法第54条のような「使用人等の秘密を守る義務」を直接定めた独立規定は置かれていません。

一方で、補助者・職員が業務に関与する場合の守秘管理は、複数の根拠で実質的に求められています。

  • 司法書士法第24条:司法書士本人の守秘義務は、補助者を通じて漏えいが生じた場合の監督責任にも関わります
  • 司法書士行為規範第19条第3項:司法書士は、補助者に対し、業務上知り得た秘密を漏らさず、また不当に利用しないよう指導監督しなければならないと定められています(日本司法書士会連合会の倫理規定)
  • 雇用契約・就業規則上の秘密保持義務:個別の事務所が雇用契約書や就業規則の中で秘密保持義務を明文化する形で運用されます

AIツールの利用権限を補助者・職員に付与する場合、これらの根拠を踏まえ、所員にも同等レベルの守秘管理を求める運用が必要です。

具体的には、所員ごとのアカウント分離、共有ノートブックの権限設計、退職時のアクセス権遮断、外部委託(クラウドサービス・データ入力代行等)への情報流通の制御などを、所内ポリシーに織り込むことが望まれます。

プラン階層別データ取扱いの差

プラン階層別データ取扱いの差

NotebookLMの公式ヘルプでは、「お客様のデータは保護されており、フィードバックを提供しない限り、NotebookLMのトレーニングに使用されることはありません」と説明されています。

一方で、フィードバックを送信した際には、Googleのレビュー担当者がやり取りの全容を確認する場合があるとも明記されています。

個人プラン(Standard/Plus/Pro/Ultra)は、この基本枠組みのもとに運用されます。

Workspaceのコアサービス階層(Business Starter以上)では、アップロード・クエリ・回答ともAIモデル学習に使用されず、人間レビュー担当者にも確認されないことが公式に明示的に保証されています。

ただしWorkspace版でも、NotebookLMはWorkspaceのDLP(情報漏洩防止)機能とは別系統で動作する構成があり、Driveからインポートしたファイルは元のDriveファイルとは別コピーとしてNotebookLM側に保存されます。

このため、Drive側の共有設定・データリージョン設定はNotebookLMデータには適用されません。

Workspace全体の他サービスと同じセキュリティ水準が自動的に確保されるわけではない点には、留意が必要です。

コンプライアンス認証状況(ISO/SOC/FedRAMP/HIPAA)の現在地

NotebookLMはWorkspace対象エディションでenterprise-grade security & privacyが保証されますが、2026年5月時点ではISO・SOC・FedRAMP・HIPAA等のコンプライアンス認証はまだサポートされていないとされています。

医療系企業の顧問先を持つ司法書士の先生方、金融機関の商業登記を扱う先生方など、特定の規制要件を満たす必要がある業務での利用については、所内のコンプライアンス担当者にご相談のうえ、Workspace Privacy Hubの最新記載を直接ご確認ください。

司法書士の業務範囲とAI活用の境界線

NotebookLMは、司法書士業務を「代替する」ツールではなく、先生方の判断と作業を「補助する」ツールとして位置づけることが重要です。

AIに置き換えてはならない領域、AIで補助できる領域の境界線を、業務制限規定とともに整理します。

司法書士法第3条第1項の業務区分と第73条 業務制限規定

司法書士法第3条第1項の業務区分と第73条 業務制限規定

司法書士の業務は、司法書士法第3条第1項により、不動産登記・商業登記の申請代理、法務局・裁判所提出書類の作成等として定められています。

これらの業務については、同法第73条第1項により、司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人(協会を除く)でない者は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行ってはならないとされています(他の法律に別段の定めがある場合を除く)。

違反した場合は、同法第78条第1項により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象となります。

第73条は、弁護士法第72条と異なり、「報酬を得て」「業として」といった要件を条文上の要件としていません。

司法書士業務との関係では、無資格者の登記書類作成・提出代行サービスや、AIを介した類似サービスがこの条文の射程に含まれ得るかが議論されています。

AIツールは、この独占業務を代行する道具ではなく、先生方が独占業務を遂行する際の調査・整理・ドラフト作成等を補助する道具として位置づけられます。

簡裁訴訟代理は認定司法書士・訴額140万円以下のみ

司法書士法第3条第1項第6号〜第7号により、簡易裁判所における民事訴訟の代理(訴額140万円以下)は、認定司法書士のみが行うことができる業務とされています。訴額140万円を超える事案は、認定司法書士の先生方であっても代理することはできず、弁護士業務(弁護士法第72条)との境界線となります。

NotebookLMで訴訟関連書類のドラフトを補助的に整理する場合も、最終的な訴訟戦略の判断・準備書面の起案・口頭弁論での主張は、先生方の専門判断によります。AIの生成物は、あくまで作業の下準備としてご活用ください。

導入の前に整備したい所内ポリシーチェックリスト

導入の前に整備したい所内ポリシーチェックリスト

NotebookLMを事務所で安全に活用するためには、ツールの便利さに先立って、所内のポリシー整備が欠かせません。

司法書士業務で実務に直結しやすい項目を整理してご紹介します。

依頼者同意の取得・委任契約の見直し

業務委任契約を新規に締結する際は、AIツールを案件処理の補助に利用する可能性があることについて、契約書または業務開始時の説明書面で依頼者から同意を得ておく運用が、先生方の事務所のリスク管理に資する場合があります。

過去案件についても、追加業務の発生時など、依頼者と接点が再度生じるタイミングで包括的な同意を取得することが望ましいでしょう。

同意取得の文言は、事務所ごとの状況に応じて、顧問弁護士等のチェックを受けながら整備されるとより安心です。

環境選定・フィードバック制御・アクセス権限・不要データ削除

所内ポリシーで整備しておきたい項目を5つに整理します。

(1)機密情報を扱う案件はWorkspaceのコアサービス階層以上で運用、(2)個人アカウントでのフィードバック送信は原則禁止(機密情報を含む場合に人間レビューの対象となる例外があるため)、(3)案件ごとにノートブックを分離し、所員のアクセス権限を必要最小限に設計、(4)案件終了後の不要データの削除ルール、(5)半年に1回程度のペースで規約・公式ヘルプの再確認を担当する所員の指名──といった項目を、事務所の規模に応じて整理することが推奨されます。

NotebookLMと他のAIツールの組み合わせ

NotebookLMと他のAIツールの組み合わせ

NotebookLMは「ノートブックに集約した資料の中で深く分析する」用途に特化したツールです。

広い情報収集や新規アイデアの発想は、ChatGPTやGemini、Claudeなどの汎用AIが得意とする領域です。

役割分担の目安を整理します。

ツール主な強み司法書士業務での使い分け例
NotebookLM信頼できる資料の範囲内で深く分析、引用元の自動付与戸籍解読、案件資料の横断確認、所内ナレッジ
ChatGPT広範な汎用知識、対話的な発想支援クライアント向け説明資料の表現案、業界動向の整理
GeminiGoogle Workspaceとの統合、マルチモーダルGmail・Driveとの連携、画像を含む資料の補助分析
Claude長文の整合性確認、文書構造の整理大量ドラフトの一貫性チェック、長文契約書の論点整理

いずれのツールも、最終的な業務判断は司法書士の先生方の専門判断によります。

AIの出力は補助としてご活用ください。

Google Workspaceの導入については個人事業主の「Google Workspace」の使い方にて、ChatGPTの士業活用例についてはChatGPTで行政書士の入管業務を10倍効率化にて、それぞれ整理しています。

関連シリーズ|他士業の活用ガイドもご参照ください

NotebookLM×士業シリーズでは、司法書士の先生方以外の士業向けの活用ガイドも展開しています。他士業の先生方がどのように業務に取り入れているか、参考としてあわせてご覧ください。

よくあるご質問

NotebookLMの導入を検討される司法書士の先生方からよく寄せられる質問について、現時点(2026年5月)の情報を踏まえて整理しました。

Q1: 無料版でも司法書士業務に使えますか?

A: 個人Standardプランは、ノートブック100/ユーザー、ソース50/ノートブック、チャット50/日が上限です。試用には十分ですが、複数案件の並行処理や所員での共同利用を想定する場合は、Workspaceのコアサービス階層以上の利用をご検討ください。

Q2: 顧客情報をアップロードしても本当に大丈夫ですか?

A: Workspaceのコアサービス階層では、データの学習利用・人間レビューが行われないことが公式に保証されますが、DLPやDrive共有設定との統合は限定的です。守秘義務と所内ポリシーに照らし、案件の機密度と利用環境の組み合わせを個別にご判断ください。

Q3: 古い手書き戸籍の解読にどこまで使えますか?

A: 画像認識の精度は向上していますが、Google公式ヘルプも「画像によってはうまく機能しない場合がある」と明記しています。判読困難な手書き文字・古い改製原戸籍は誤読のリスクが高く、AIの解読結果は補助情報として扱い、相続人確定など重要事項の最終判断は先生方ご自身による原本の確認と専門判断によってください。

Q4: NotebookLMの回答を準備書面や登記申請書類にそのまま使えますか?

A: NotebookLMは補助ツールです。司法書士法第3条第1項に基づく独占業務(登記関連書類の作成等)は、先生方ご自身の専門判断と責任において行う必要があります。AIの生成物は最終確認の対象であり、そのまま申請書類等として使用することは想定されていません。

Q5: 補助者にもNotebookLMを使わせる場合、どのような運用が望ましいですか?

A: まず、補助者にも司法書士法第24条・司法書士行為規範第19条第3項に基づく指導監督義務、および所内規程・雇用契約等に基づく秘密保持義務が及ぶことを、書面で改めて整理することが第一歩です。そのうえで、補助者ごとのアカウントを分離し、案件ノートブックの閲覧・編集権限を業務範囲に応じて必要最小限に設計、フィードバック送信は所定の手続を経た場合に限る、退職時のアクセス権遮断手順を明文化する──といった運用が考えられます。Workspaceのコアサービス階層以上で管理者が利用範囲を統制できる環境を整えると、所内ガバナンスとの整合が取りやすくなります。

まとめ|司法書士の先生方の「補助ツール」としての位置づけ

まとめ|司法書士の先生方の「補助ツール」としての位置づけ

NotebookLMは、司法書士業務の正確性を脅かさず、先生方の判断と作業を補助できる可能性を持ったAIツールです。

ハルシネーションの検出・抑制には役立ちますが、完全に防げるわけではなく、生成物は必ず原資料での検証が前提となります。

導入にあたっては、司法書士法第24条(守秘義務)、司法書士行為規範第19条第3項(補助者監督)、司法書士法第73条(業務制限規定)を踏まえた所内ポリシーの整備が、機能の便利さよりも先に位置づけられます。

プラン選定、依頼者同意の整備、コンプライアンス認証状況の現在地まで含めて、先生方の事務所の状況に応じて、選択肢の一つとしてご検討ください。


※本記事は2026年5月時点のNotebookLMの仕様および公式ヘルプ・Workspace Privacy Hubの記載に基づいて作成しています。AIツールの仕様および料金プランは頻繁に更新されるため、最新情報はNotebookLM公式サイトGoogle公式ヘルプWorkspace Privacy Hub等でご確認ください。法令の詳細はe-Gov法令検索等でご確認ください。個別の業務導入のご判断は、事務所の状況と所内ポリシー、司法書士の守秘義務関連法条に照らしてご検討ください。

よこぜき行政書士事務所