「自分には人脈がない」と感じている方は、決して少なくありません。私自身もあまり人脈がある方ではないのですが、起業を考えている40〜60代の女性の方から「人脈作りが苦手なんです」というご相談を頂くことが多くあります。
人脈がないと感じることは、何か特別な欠点ではなく、年代や環境の変化によって誰にでも起こり得るものです。本記事では、人脈作りに悩む方によく見られる傾向を整理しながら、40〜60代の方が無理なく関係を広げていくためのヒントをお伝えしていきます。
焦らず、ご自身のペースで読み進めて頂ければと思います。
目次
「人脈がない」とはどんな状況なのか — 不安の正体を整理する
「人脈がない」とは、仕事やプライベートで頼れる人が少なく、情報や機会が限られてしまう状態を指します。漠然とした不安として感じられがちですが、まずはその言葉が何を指しているのかを言語化することで、必要以上にご自身を責める必要がなくなります。このセクションでは、その輪郭と、人間関係の変化を感じやすい背景を整理していきます。
そもそも「人脈がない」とはどういう状況か
友人がまったくいないという意味ではなく、「何か新しいことを始めようとしたときに、相談したり力を借りたりできる相手が思い浮かばない」状態と言い換えると分かりやすいかもしれません。
つまり、人数の問題というよりも、いざという時に頼れる関係が少ないと感じる主観的な状態だといえます。
40〜60代で人間関係の変化を感じやすい背景
「人脈がない」と感じやすいかどうかは、年代や性別だけで単純に説明できるものではありません。内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年)」によると、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は男性4.4%・女性4.2%と男女差は小さく、女性では20歳代・30歳代の方がむしろ高い結果となっています。
一方で同調査では、現在の孤独感に影響を与えた出来事として、「家族との死別」(24.6%)、「一人暮らし」(18.8%)、「転校・転職・離職・退職(失業を除く)」(14.7%)などが上位に挙げられています(出典:内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年)調査結果のポイント」)。
40〜60代は、お子さんの自立、ご両親の介護、退職や転居、配偶者との死別など、こうした出来事が重なりやすい時期です。「人脈がない」という感覚の背景には、年代そのものではなく、この時期に起こりやすい人間関係を取り巻く環境の変化があることが多いと考えられます。
人脈作りに悩む方によく見られる5つの傾向
起業相談を受ける中で、なかなか人脈を築けないと感じている方には、いくつかの共通した傾向が見えてくることがあります。ここからご紹介する5つは、責めるためのものではなく、ご自身を客観的に振り返るための「気づき」として読み進めて頂ければと思います。すべての方に当てはまるものではなく、一部だけ当てはまるという方も多くいらっしゃいます。
傾向1:新しい人と関わることに気後れする
新しい場に出向くこと自体に、心理的なハードルを感じている方は少なくありません。
「自分なんかが行っても場違いなのでは」「何を話せばいいかわからない」と感じてしまい、誘いがあっても辞退してしまうことがあります。
40〜60代になると「年齢的にもう遅い」という気持ちが加わりやすく、新しい場への一歩がさらに重くなりがちです。
傾向2:自己開示が苦手で関係が浅くなる
ご自身の考えや興味、これまでの経験などを表現することが苦手だと、相手も距離を測りかねてしまうことがあります。
会話の中で「私の話なんて」と自分の話題を避けてしまう方は、聞き役としては優秀でも、相手にとっては「どんな人か分からない」状態が続き、関係が深まりにくくなる場合があります。
自己開示は自慢ではなく、相手が安心するための情報共有という側面もあります。
傾向3:「損得」で人付き合いを判断してしまう
「この人と付き合うと何かメリットがあるか」を無意識に考えてしまうと、関係性が浅いまま終わってしまうことがあります。
特に起業や副業を考え始めると、「役に立つ人」「役に立たない人」という分け方をしてしまいがちですが、これは相手にも伝わることがあるものです。
人脈は短期的な損得ではなく、長期的な信頼の積み重ねで育つものだと意識する視点も役立ちます。
傾向4:一度切れた連絡を再開しにくい
過去にお世話になった方や昔の同僚に、「今さら連絡するのは申し訳ない」と感じてしまい、関係が途絶えてしまうこともよく見られます。
子育てや介護で連絡が途絶えがちになった時期があり、ブランクの後の再連絡に気おくれを感じる方もいらっしゃいます。
しかし、相手にとっては久しぶりの連絡をうれしく受け止められる場合もあります。連絡内容や関係性によって受け止め方は異なりますが、過度に「迷惑では」と気にしすぎる必要はないでしょう。
傾向5:「自分には価値がない」と感じてしまう
40〜60代の方からも、よく聞かれる心情です。
子育てが一段落し、職場でも役割が変化していく中で、「これまでの自分には人に提供できるものがない」と感じてしまうことがあります。
しかし、長年の生活経験や仕事の経験、人を支えてきた経験は、それ自体が他の方にとって貴重な知見になり得るものです。ご自身では当たり前と思っていることが、別の人にとっては大きな価値を持つことも珍しくありません。
関係を育てる5つの姿勢 — 関係づくりで役立つ視点
関係づくりにおいては、特別な才能や派手な社交性よりも、日常の中で意識できる「姿勢」が役立つことが多いとされています。これらは年齢に関係なく、今日から取り入れられるものばかりです。完璧にやろうとせず、できそうなものから一つずつ試していくのがおすすめです。
相手の話に興味を持って聴く
関係づくりでは、自分の話をするよりも、相手の話に丁寧に耳を傾けることが役立つことがあります。「もっと聞かせてください」という姿勢は、相手にとって心地よく、信頼の土台になりやすいとされています。
相手に「価値を提供する」発想を持つ
「何をしてもらえるか」よりも、「自分が相手に何を提供できるか」を考える姿勢は、長く続く関係を支える視点の一つです。提供できるものは情報・人の紹介・励ましの一言など、何でも構いません。
ゆるくても継続する関係を大切にする
頻繁な連絡でなくても、年に一度の挨拶や、近況を伝える短いメッセージで関係が保たれることもあります。「途絶えさせない」という意識が、いざという時の信頼につながりやすいとされています。
「人数」ではなく「質」で人脈を考える
名刺の数や知人の多さではなく、「困った時に本音で相談できる人が何人いるか」で考えると、人脈の見え方が変わってくることがあります。
内閣府「人々のつながりに関する基礎調査(令和5年)」によると、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、困った時に頼れる人が「いる」と答えた人で3.2%、「いない」と答えた人で24.2%となっており、頼れる人の有無が孤独感と関連していることが示されています。
「量より質」で考える視点は、特に40〜60代の方にとって、現実的で持続しやすい考え方の一つです。
自分の状況を素直に話せる場を選ぶ
無理に活発な人間を演じる場よりも、等身大で話せる場を選ぶ方が、長続きする関係が築きやすい場合があります。自分が居心地良くいられる場かどうかを、判断基準にされることをおすすめします。
40〜60代の女性が今日から始められる5つの一歩
人脈づくりというと「異業種交流会に飛び込む」というイメージが先行しがちですが、いきなりそこに行く必要はありません。ここでは心理的な負担が低い順に、5つの段階的な選択肢をご紹介します。ご自身のペースで取り組みやすいものから試して頂ければと思います。
既存の知人にゆるい連絡を取り直す
新しい出会いを探す前に、過去にお世話になった方やしばらく連絡が途絶えていた方へ、近況を伝える短いメッセージを送ってみる方法です。
「お元気ですか」の一言で構いません。新しい関係を一から作るより、既にある関係を温め直す方が負担が少なくて済むことが多いものです。
オンラインの異業種交流会・コミュニティを試す
外出が難しい方や、対面ではどうしても緊張してしまう方には、オンライン形式の交流会が始めやすい選択肢になります。
カメラオフで参加できる会もあり、まずは観察するだけのスタンスでも問題ありません。オンライン異業種交流会に女性一人で参加するのはアリ?では、女性一人で参加する際の不安と対策を整理しています。
同世代向けの学び直し・講座に参加する
自治体や民間の生涯学習講座、女性起業支援セミナーなど、40〜60代の方が多く参加される学びの場は、自然な形で人脈が広がる機会になることがあります。
「学ぶ」という共通の目的があるため、初対面でも会話のきっかけがあり、長く続く関係になりやすいのも特徴です。
地域ボランティア・NPOで関係を広げる
地域の福祉活動・子ども支援・環境活動などのボランティアやNPO活動は、共通の目的を通じて自然に関係が生まれやすい場の一つです。
内閣府「人々のつながりに関する基礎調査(令和5年)」では、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、いずれかの社会活動に参加している人で2.7%、参加していない人で6.7%という結果が示されており、社会活動への参加と孤独感の低さに関連がみられます。
シニア層の方が多く参加されるボランティアもあり、人脈づくりというより「社会との接点」を取り戻す感覚で参加される方も多くいらっしゃいます。シニアボランティアとは|活動の種類や楽しみ方では、活動の種類や始め方をまとめています。
SNSで「学ぶ姿勢」を発信してみる
X(旧Twitter)、Instagram、note などで、ご自身の関心事や学んでいることを少しずつ発信してみる方法です。
完璧な発信である必要はなく、「○○について学んでいます」という素直な記録だけでも、同じ関心を持つ方とつながるきっかけになることがあります。40〜60代の方の発信が、同世代の共感につながることもあります。
人脈づくりで気をつけたい「やってはいけない3つのこと」
人脈を広げたいと思って動き始めた時にこそ、注意しておきたいポイントがあります。焦って動くと、逆に時間とお金とエネルギーを消耗してしまうこともあります。陥りやすい順に、3つの注意点を整理しておきます。
「人脈を作るため」だけの集まりを乱発しない
目的が「人脈作り」そのものになると、参加する集まりの数ばかり増えて、一つひとつの関係が浅くなってしまうことがあります。
人脈はあくまで「結果」として広がるものであり、数を集めるアプローチは長期的にはご自身を疲弊させることにつながりかねません。
高額な人脈系セミナー・サロンには慎重に
「成功している女性経営者と繋がれる」「特別なネットワークに入れる」といった謳い文句で、数十万円単位の参加費を求める集まりも存在します。
中には誠実な学びの場もありますが、内容と金額が見合わない場合もあるため、契約前には必ず冷静に検討する時間を取りましょう。女性起業セミナーは怪しい?参加前に確認したいポイントも、判断の参考になります。
「自分を偽る」関係は長続きしない
「もっと社交的に見せなければ」「成功しているふりをしなければ」と無理をしてしまうと、その関係は長続きしにくいものです。
40〜60代だからこそ、等身大の自分でつながれる相手を見つけることが、これからの数十年を支える人脈になっていきます。
人脈が広がりすぎることのデメリットも知っておく
ここまで「人脈の広げ方」をお伝えしてきましたが、人脈は広ければ広いほど良いというものでもありません。40〜60代という年代の体力や時間のリソースを考えると、むしろ「広げすぎない」視点も大切になってきます。最後にこの視点もお伝えしておきます。
時間と気力の消耗
知り合いが増えるほど、連絡のやり取り、誘いへの対応、お祝い事の対応などに時間が取られていきます。気力の消耗は決して軽い問題ではなく、本業や家庭、ご自身の健康に影響することもあります。
「断る勇気」を持つことの大切さ
人脈を維持しようと思うあまり、すべての誘いに応じてしまうと、結局ご自身が疲弊してしまうことがあります。
「今は参加できません」「またの機会に」と丁寧に断れる関係こそが、本当の意味で続く人脈です。断ることで関係が切れる相手は、もともとその程度の関係だったと割り切る考え方も時には必要です。
よくあるご質問
人脈に関する相談を頂く中で、特によく聞かれるご質問を3つ取り上げてご紹介します。
Q. 内向的な性格でも人脈は作れますか?
はい、十分作れます。
関係づくりでは「社交性」よりも「継続性」と「誠実さ」が役立つことが多いとされています。少人数の方と深く長く付き合うタイプの人脈づくりは、内向的な方にも合うアプローチです。
無理に外向的になろうとせず、ご自身のペースを大切にされることをおすすめします。
Q. 40代・50代から人脈を作るのは遅すぎませんか?
決してそんなことはありません。
40〜60代から始まる新しい関係には、それまでの人生経験や仕事経験という強みがあります。同世代の方は同じような状況にいることが多く、共感を土台にした関係が築きやすいこともあります。
「遅い」のではなく、「今この年代だからこそ築ける人脈」があるという捉え方も現実的な選択肢の一つです。
Q. SNSと対面、どちらを優先すべきですか?
ご自身が無理なく続けられる方を優先されると良いでしょう。
外出が難しい方はSNSから、文字でのやり取りが苦手な方は対面の小さな集まりから、というように、続けられる方法を選ぶことが何より大切です。
両方を完璧にこなそうとせず、片方ずつでも構わないと考えると気持ちが楽になります。
まとめ — 「人脈がない」は弱みではない
「人脈がない」と感じることは、これから関係を育てていくスタート地点に立っているということでもあります。40〜60代だからこそ、量より質を大切にした人脈設計が可能になります。
無理に広げようとせず、既にある関係を温め直すこと、ご自身が等身大でいられる場を選ぶこと、そして「断る勇気」も含めて関係を整えていくことが、これからの数十年を支える人脈につながっていきます。
同じ40〜60代の女性に向けた関連記事として、シニアの「おばさん起業」成功の秘訣と失敗しないコツや、女性が50代から一生できる仕事とは?長く働ける職種の見つけ方もご参照ください。
焦らず、ご自身のペースで、一歩ずつ進めて頂ければと思います。
※本記事中で引用した統計データの出典:
- 内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年)調査結果のポイント」(令和7年4月25日公表)
https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/zenkokuchousa/r6.html - 内閣府「人々のつながりに関する基礎調査(令和5年)調査結果の概要」(令和6年3月公表)
https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/zenkokuchousa/r5.html
よこぜき行政書士事務所

