はじめに
病院で長く働いてきた薬剤師の方のなかには、休日に地域の薬局で働いてみたい、これまでの知識を病院の外でも役立てたいと考え始めた方もいらっしゃるかもしれません。
一方で、「病院に勤めていると副業はできない」「公立病院は公務員だから無理」と聞いて、確かめないまま諦めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
病院薬剤師の副業の決まりは、薬剤師という資格ではなく、病院を運営している法人の種類と、ご自身の任用・雇用の形によって変わります。
この記事では、勤務先の種類ごとに副業の決まりを整理し、病院薬剤師ならではの確認点と、始める前の手順をご紹介します。
結論|病院薬剤師の副業は「病院の運営主体」と「任用・雇用の形」で決まります
病院薬剤師の副業は、勤務先が公務員として働く職場なら許可制、そうでなければ就業規則などの定めによって扱いが決まります。
同じ「国立」「公立」の病院でも、運営している法人によって、根拠となる決まりも確認先も異なります。
さらに、同じ勤務先のなかでも、常勤か、会計年度任用職員か、再任用かといった任用の形によって、扱いが分かれることがあります。
勤務先の種類でわかる副業の決まりの早見表
ご自身の勤務先がどれに当たるかを、まず次の表で確かめてみてください。
| 勤務先の例 | 副業の主な根拠 | 確認先 |
|---|---|---|
| 国の機関の病院(国立ハンセン病療養所など)で一般職の国家公務員として働く場合 | 国家公務員法第103条・第104条(人事院の承認、内閣総理大臣と所轄庁の長の許可。総務省の通知によると、営利企業の従業員としての兼業は原則として認められていない) | 勤務先の人事担当 |
| 都道府県立・市町村立の病院 | 地方公務員法第38条(任命権者の許可が原則として必要) | 勤務先の人事担当(病院事業の管理者が任命権者の場合あり) |
| 特定地方独立行政法人の病院 | 地方公務員法第38条(任命権者の許可が原則として必要) | 法人の人事担当 |
| 特定以外の地方独立行政法人の病院・公立大学の附属病院 | 法人の就業規則など | 法人の人事担当 |
| 国立病院機構・JCHO・労災病院・国立高度専門医療研究センターの病院 | 法人の就業規則など | 勤務する病院の事務部門(人事担当) |
| 国立大学の附属病院 | 大学の就業規則・兼業に関する規程など | 大学の人事担当 |
| 日本赤十字社・済生会・医療法人などの病院 | 法人の就業規則など | 法人の人事担当 |
表の「許可」「承認」は、許可などを受ければ兼業できる仕組みを指しており、兼業が一律に禁止されているという意味ではありません。
就業規則などで決まる勤務先では、許可制・届出制など、定め方が法人ごとに異なります。
公務員として働く職場でも、会計年度任用職員など任用の形によって扱いが異なるため、後半で詳しく整理します。
病院の調剤所は、薬機法の「薬局」に含まれません
管理薬剤師の兼務の制限は、薬局の管理者などを対象とした決まりです(薬機法第7条第4項・第28条第4項)。
その「薬局」について、薬機法は定義のただし書で、病院や診療所の調剤所を除いています。
この法律で「薬局」とは、薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務並びに薬剤及び医薬品の適正な使用に必要な情報の提供及び薬学的知見に基づく指導の業務を行う場所(その開設者が併せ行う医薬品の販売業に必要な場所を含む。)をいう。ただし、病院若しくは診療所又は飼育動物診療施設の調剤所を除く。
(出典:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第2条第12項(2026年5月21日施行の版))
このため、病院薬剤師の方の副業で管理薬剤師の兼務の制限が関わってくるのは、主に、副業先の薬局やドラッグストアで管理者を引き受ける場合です(詳しくは後述します)。
なぜ「病院薬剤師は副業できない」と思われやすいのか
病院薬剤師の副業が難しいと受け止められやすいのには、いくつかの背景があります。
背景を知っておくと、ご自身の勤務先について何を確かめればよいかが見えやすくなります。
病院の名前だけでは、運営している法人が分かりにくい
「国立」「県立」「市立」と名前につく病院でも、運営しているのが国や自治体そのものとは限りません。
国立の名を冠する病院には、独立行政法人国立病院機構の病院や、国立大学法人が運営する大学の附属病院などがあります。
公立の病院にも、自治体が直接運営する病院のほか、自治体が設立した地方独立行政法人が運営する病院があります。
勤務先の正式な運営法人の名前は、辞令や雇用契約書、病院のホームページの病院概要などで確かめられます。
法人化や制度の見直しで、職員の身分が変わった病院があります
国立病院機構は、2004年4月に、特定独立行政法人として設立されました(出典:厚生労働省「独立行政法人国立病院機構の組織・業務全般の見直し当初案について」2013年8月20日)。
厚生労働省の検討会の資料は、国立病院が2004年度の独立行政法人化の際に「公務員型」の独立行政法人に移行したと説明しています(出典:厚生労働省「国立病院及び労災病院の新しい法人制度に関する検討会」第2回 資料1-2「国立病院の個別の課題」2012年5月17日)。
その後、独立行政法人制度の見直しを経て、現在の国立病院機構は中期目標管理法人とされています(独立行政法人国立病院機構法第4条)。
公立病院でも、自治体の直営から地方独立行政法人に移行した病院があります。
たとえば那覇市立病院は、2008年4月1日に非公務員型の地方独立行政法人に移行しました(出典:那覇市「市立病院の地方独立行政法人への移行」総務省ウェブサイト掲載)。
同じ病院に長く勤めてきた40〜60代の方は、勤務先が公務員型だった時期の印象をお持ちのこともあるため、現在の運営法人の種類を改めて確かめておくと安心です。
「許可制」が「禁止」と受け止められやすい
地方公務員の兼業の決まりは、「許可を受けなければ、〜してはならない」という形で定められています(地方公務員法第38条第1項)。
書き出しだけを読むと禁止に見えますが、許可を受ければ兼業できる仕組みです。
総務省は、許可を判断する際の基本的な原則として、職務の能率が下がるおそれがないこと、相反する利害関係が生じるおそれがないこと、職員と職務の品位を損ねるおそれがないことの3点を示しています(出典:総務省「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について(通知)」2025年6月11日・総行公第72号)。
公務員として働く病院薬剤師の副業|許可制の仕組み
都道府県立・市町村立の病院や国の機関の病院で、公務員として働く薬剤師の方は、法律で兼業が許可制とされています。
ここでは、地方公務員と国家公務員に分けて、仕組みと最近の見直しを整理します。
都道府県立・市町村立病院|地方公務員法第38条の許可
地方公務員として働く方は、原則として、任命権者の許可を受けなければ、営利企業の役員などを兼ねること、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業や事務に従事することはできません(地方公務員法第38条第1項)。
休日に薬局やドラッグストアで報酬を得て働く副業は、この「報酬を得て事業に従事する」ことに当たるため、原則として許可の対象になります。
許可を出す任命権者は、自治体の長とは限りません。
病院事業に地方公営企業法の規定の全部を条例で適用している病院(いわゆる全部適用)で、病院事業の管理者が置かれている場合は、管理者が職員を任免します(地方公営企業法第2条第3項・第7条・第15条第1項)。
申請の窓口や様式は、勤務する病院の事務部門(人事担当)で確かめられます。
会計年度任用職員・再任用短時間勤務の方は、扱いが分かれます
地方公務員法第38条第1項のただし書は、一部の非常勤職員を許可の対象から外しています。
ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。
(出典:e-Gov法令検索「地方公務員法」第38条第1項(2025年6月1日施行の版))
括弧の中は、非常勤職員のうち、許可の対象から外れない人を示しています。
整理すると、次のようになります。
| 任用の形 | 第38条の許可 |
|---|---|
| 常勤の職員 | 必要 |
| フルタイムの会計年度任用職員(第22条の2第1項第2号) | 必要 |
| 短時間勤務の職を占める職員(定年前再任用短時間勤務職員など・第22条の4) | 必要 |
| パートタイムの会計年度任用職員(第22条の2第1項第1号) | 許可の対象外 |
60歳以降に定年前再任用短時間勤務職員として働く方は、勤務日数が減っても、許可が必要な側に含まれる点に注意が必要です。
パートタイムの会計年度任用職員として働く方も、信用を傷つける行為の禁止や秘密を守る義務といった服務の決まりは適用されます(地方公務員法第33条・第34条)。
ご自身の任用の形は、任用通知書(辞令)や勤務条件の通知で確認できます。
2025年6月の総務省通知で、許可基準の見直しが進んでいます
総務省は2025年6月11日、各自治体に対し、地方公務員法の趣旨の範囲内で、詳細かつ具体的な兼業の許可基準を設けて公表するよう求める通知を出しました(出典:前掲の総務省通知)。
同じ通知は、国家公務員では原則として認められていない営利企業の従業員としての兼業について、地方公務員では一律に禁止せず、基本的な原則を満たす場合には任命権者の判断で認めることが可能だとしています。
薬局やドラッグストアを運営する会社に雇われて働く副業は、この「営利企業の従業員との兼業」に当たります。
通知に添えられた報告書によると、2024年4月1日時点で兼業の許可基準を設けていた都道府県・市区町村は全体の64%で、そのうち85%は国家公務員と同じ基準でした(出典:同通知 別添1「地方公務員の働き方に関する分科会報告書」)。
ただし、許可基準の中身は自治体ごとに異なります。
たとえば栃木県が職員向けに2026年4月1日から適用している基準では、従事先が営利企業の団体(国・都道府県・市町村が出資しているものを除く)や営利企業を営む個人で、仕事の内容が社会貢献活動に当たらない場合は、原則として許可しないとしています(出典:栃木県「職員の営利企業への従事等に係る任命権者の許可に関する基準、手続等について(通知)」2026年1月30日)。
兼業の時間について、総務省の通知は許可基準で上限を定めるよう求めており、国家公務員の目安として、週8時間または1か月30時間、勤務日は1日3時間という数値を紹介しています。
栃木県の基準も、同じ時間数を超える場合は原則として許可しないとしています。
以前「公立病院では難しい」と言われた方も、勤務先の現在の許可基準と、その公表場所を人事担当に確かめてみてはいかがでしょうか。
国の機関の病院|国家公務員法第103条・第104条
国立ハンセン病療養所は、厚生労働省に置かれた施設等機関です(厚生労働省設置法第16条第1項)。
このような国の機関の病院で一般職の国家公務員として働く方は、国家公務員法の決まりに従います。
国家公務員法第103条は、営利企業の役員などを兼ねることや自ら営利企業を営むことを禁じたうえで、人事院規則の定めにより、所轄庁の長の申出を受けて人事院の承認を得た場合を例外としています(国家公務員法第103条)。
同法第104条は、報酬を得てほかの事業に従事したり事務を行ったりするには、内閣総理大臣と所轄庁の長の許可が必要としています。
総務省の通知は、国家公務員の場合、営利企業の従業員としての兼業(報酬あり)は原則として認められていないと説明しています。
人事院は自営兼業の制度を見直し、2026年4月1日から、職員の知識・技能をいかした事業と、社会貢献に資する事業も、一定の基準を満たす場合に承認できるようにしました(出典:人事院「自営兼業制度の見直しについて」2025年12月19日)。
公務員の兼業の仕組みは、次の記事でも整理しています。
薬剤師の副業は禁止?管理薬剤師・公務員の決まりと仕事の選び方
「国立」「公立」の病院でも、就業規則で決まる場合があります
国や自治体が設立した法人が運営する病院でも、法人の種類によっては、国家公務員法や地方公務員法の許可制ではなく、法人の就業規則などで副業の扱いが決まります。
ここでは、病院を運営する主な法人ごとに、根拠となる規定を整理します。
国立病院機構の病院で働く薬剤師
独立行政法人には、中期目標管理法人・国立研究開発法人・行政執行法人の3つの種類があります(独立行政法人通則法第2条)。
このうち、役員と職員を国家公務員とする規定が置かれているのは、行政執行法人です(同法第51条)。
国立病院機構は、中期目標管理法人とされています(独立行政法人国立病院機構法第4条)。
このため、国立病院機構の病院で働く薬剤師の方の副業は、国家公務員法ではなく、機構の就業規則など職員向けの規程で確認することになります。
規程の内容や申請の方法は、勤務する病院の事務部門(人事担当)で確かめられます。
JCHO・労災病院・国立高度専門医療研究センターの病院
独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)は、中期目標管理法人とされています(独立行政法人地域医療機能推進機構法第3条の2)。
労災病院を運営する独立行政法人労働者健康安全機構も、中期目標管理法人とされています(独立行政法人労働者健康安全機構法第3条の2)。
国立がん研究センターなどの国立高度専門医療研究センターは、国立研究開発法人とされています(高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律第3条の2)。
いずれの法人の病院でも、副業の扱いは、法人の就業規則など職員向けの規程で確認します。
国立大学の附属病院(大学病院)で働く薬剤師
国立大学の附属病院で働く方は、大学を設置する国立大学法人の職員です。
国立大学法人の役員と職員は、刑法などの罰則の適用については、公務に従事する職員とみなされます(国立大学法人法第19条)。
この規定は「罰則の適用について」のみなし規定で、兼業の扱いを定めたものとは別のものです。
副業の扱いは、各大学の就業規則や兼業に関する規程で確認します。
地方独立行政法人の病院|「特定」かどうかで分かれます
自治体が設立した地方独立行政法人のうち、「特定地方独立行政法人」の役員と職員は、地方公務員とされます(地方独立行政法人法第47条)。
特定地方独立行政法人に当たるかどうかは、それぞれの法人の定款で定められています(同法第2条第2項)。
特定地方独立行政法人で働く方には、前述の地方公務員法第38条の許可制が関わります。
特定地方独立行政法人以外の地方独立行政法人が運営する病院で働く方は、法人の就業規則などで確認します。
公立大学法人のように大学の設置・管理を行う法人は、特定地方独立行政法人の定義から除かれています(同法第2条第2項・第21条第2号)。
公立大学の附属病院で働く方も、法人の就業規則などで確認することになります。
共済組合に加入していても、公務員とは限りません
給与明細に共済組合の掛金が記載されていることから、ご自身を公務員だと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
国立病院機構や国立高度専門医療研究センター、国立大学法人などに常時勤務する方は、国家公務員共済組合法の適用について「職員とみなして」扱われます(国家公務員共済組合法第124条の3・別表第二)。
自治体の職員を引き継いで設立された地方独立行政法人や、特定地方独立行政法人から定款を変更した地方独立行政法人の役職員も、地方公務員等共済組合法の適用について「職員とみなして」扱われます(地方公務員等共済組合法第141条の2・第141条の3)。
共済組合の組合員であることと、兼業の許可制がかかる公務員であることは、別々に確かめる必要があります。
日本赤十字社・済生会・医療法人などの病院で働く薬剤師の副業
日本赤十字社や済生会、厚生連、医療法人などが運営する病院で働く方の副業は、勤務先の就業規則などの定めに沿って扱いが決まります。
ここでは、確認するときの観点を2つに絞って整理します。
就業規則の「許可制」「届出制」「禁止」を確かめます
就業規則では、副業を許可制にする、届出制にする、一定の場合に禁止するなど、法人によって定め方が異なります。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、裁判例を踏まえ、原則として副業・兼業を認める方向とすることが適当だとしています(出典:厚生労働省「副業・兼業」)。
同じガイドラインは、裁判例では、会社が副業・兼業を制限できるのは、たとえば、労務提供上の支障がある場合、業務上の秘密が漏洩する場合、競業により自社の利益が害される場合、自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合と解されている、と紹介しています。
就業規則に副業の定めが見当たらない場合も、届出や許可が必要かどうかを人事担当に確かめておくと安心です。
勤務先と関係のある薬局・企業で働くときは、競業や秘密保持の定めも確認します
病院の近くにある薬局や、勤務先と取引のある企業で働く場合は、就業規則の競業や秘密保持の定めに当たらないかも確かめておく必要があります。
たとえば50代で民間病院の薬剤部に勤める方が、病院の処方箋を多く受け付ける近隣の薬局で働く場合は、勤務先の利益が害されるおそれがないかという点も含めて、就業規則の定めと勤務先の考え方を事前に確かめておくと、トラブルを避けやすくなります。
一方で、ガイドラインは、勤務先の正当な利益が侵害されない場合には、同じ業種・職種であっても副業・兼業を認めるべき場合も考えられるとしています。
病院薬剤師が副業先を選ぶときの確認点
勤務先の決まりを確かめたうえで、副業の中身によっても確認することが変わります。
ここでは、副業の形ごとに、病院薬剤師の方が押さえておきたい点を整理します。
薬局・ドラッグストアでのアルバイト|管理薬剤師・店舗管理者を頼まれたら
副業先の薬局で管理者を引き受けると、その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事することが、原則として制限され、都道府県知事の許可を受けた場合が例外とされます(薬機法第7条第4項)。
ドラッグストアなどの店舗販売業で店舗管理者を引き受ける場合も、同じ形の規定があります(薬機法第28条第4項)。
本業の病院での勤務がこの制限との関係でどう扱われるかは、引き受ける前に、副業先がある都道府県(保健所を設置する市・特別区では市・区)の薬務担当に確認しておくと安心です。
管理者ではなく一人の薬剤師としてアルバイトで働く場合は、勤務先の決まりと労働時間の確認が中心になります。
派遣で働く場合|病院への派遣と、日雇派遣の決まり
病院や診療所(一部を除く)、介護医療院で行う調剤の業務は、労働者派遣事業を行ってはならない業務とされています(労働者派遣法第4条第1項第3号、同法施行令第2条第1項第3号)。
ただし、紹介予定派遣の場合や、産前産後休業・育児休業・介護休業などで休む方の業務に派遣される場合、へき地で働く場合などは例外とされています(同条第1項)。
また、日々または30日以内の期間を定めて雇われる方の派遣(日雇派遣)は、原則として禁止されています(労働者派遣法第35条の4第1項)。
働く人に着目した例外として、派遣元が必要な雇用管理の措置を講じていることを前提に、60歳以上の方、学生(定時制の課程に在学する方などを除く)、主たる仕事の収入(生業収入)が500万円以上で副業として日雇派遣で働く方、主たる生計者ではなく世帯収入が500万円以上の方が定められています(同法施行令第4条第2項、同法施行規則第28条の3)。
厚生労働省の業務取扱要領では、生業収入は主たる業務の収入(給与に限らず、不動産の運用収入なども含みます)とされ、複数の仕事をしている場合は収入額が最も高い仕事が主たる業務になります。
主たる生計者ではないとは、世帯全体の収入に占めるご本人の収入の割合が50%未満であることをいい、世帯収入にはご本人の収入も含まれます(出典:厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」2026年10月1日適用版 第6の17)。
単発の派遣と直接雇用のアルバイトでは決まりが異なるため、次の記事の単発派遣の項目もあわせてご覧ください。
薬剤師の副業は禁止?管理薬剤師・公務員の決まりと仕事の選び方
製薬会社などからの講演・原稿執筆の依頼
病院薬剤師として経験を重ねると、勉強会での講演や専門誌の原稿執筆を頼まれることもあります。
謝礼を受け取る講演や執筆が兼業の許可・届出の対象になるかどうかは、勤務先の規程によって扱いが異なります。
たとえば総務省の通知で紹介されている群馬県安中市の制度では、許可基準でいう報酬等に、講演料や原稿料などの謝礼金を含めています(出典:前掲の総務省通知 別添3)。
公務員の方の兼業の許可では、職務と兼業先との間に相反する利害関係がないかが確認され、総務省の通知は、その観点の一例として、物品の購入などの特殊な関係がないかを挙げています(出典:前掲の総務省通知)。
病院で医薬品の採用や購入に関わる立場の方は、依頼元が医薬品の製造販売業者や卸売販売業者である場合、この点も含めて事前に勤務先へ相談しておくと安心です。
公務員ではない病院でも、利益相反の管理に関する規程を設けている場合があるため、あわせて確認してみてください。
夜勤・当直がある勤務と、副業の時間
雇われて働く副業では、原則として、本業と副業の労働時間が通算されます(労働基準法第38条第1項)。
一方、国の機関で働く一般職の国家公務員の方には労働基準法が適用されないため(国家公務員法附則第6条)、兼業の時間は許可の基準で確認します。
夜勤や当直、時間外勤務のある月は、副業の予定を入れる前に、勤務表と照らし合わせておくと安心です。
本業と副業を合わせた働く時間と保険のルールは、次の記事で詳しく解説しています。
パートのWワークで40時間以上働きたい方へ|時間と保険のルール
副業を始める前に確認する4つの手順|40〜60代の病院薬剤師の方へ
副業を考え始めたら、次の4つの手順で確認を進めると、勤務先とのやりとりを整理しやすくなります。
いきなり副業先を決めるのではなく、勤務先の決まりから確かめていくことをおすすめします。
1. 運営法人の種類と、ご自身の任用・雇用の形を確かめる
辞令や雇用契約書、労働条件通知書で、運営法人の正式な名前と、常勤・会計年度任用職員・再任用などの任用の形を確かめます。
地方独立行政法人の病院にお勤めの方は、法人が特定地方独立行政法人かどうかを、定款などで確認できます。
2. 兼業の規程や許可基準を読む
公務員の方は勤務先の許可基準を、それ以外の方は就業規則や兼業に関する規程を確認します。
許可基準の見直しが続いているため、以前に確認した方も、最新の版を改めて確かめておくと安心です。
許可基準とあわせて、申請の期限や様式も確認しておきます。
3. 副業の形と、働く時間の上限を決める
アルバイト・派遣・業務委託のどれで働くか、月に何時間まで働くかを、本業の勤務表と照らし合わせて決めます。
副業先で管理者を頼まれる可能性がある場合は、この段階で確認しておきます。
4. 申請・届出を書面で行い、税と住民税の扱いを確かめる
許可や届出が必要な場合は、副業を始める前に、所定の書面で手続きを行います。
申請の期限を定めている勤務先もあり、たとえば栃木県の基準では、原則として、従事を始める予定の日の30日前までに申請書を提出することとしています(出典:前掲の栃木県通知)。
副業の収入があると、所得税の確定申告が必要になる場合があります(出典:国税庁タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」)。
住民税の仕組みは、次の記事で解説しています。
個別の税務については、税務署や税理士にご確認ください。
よくある疑問
ここでは、病院薬剤師の副業について、確認しておきたい疑問を4つ取り上げます。
Q. 国立病院機構の薬剤師は公務員ですか?
国立病院機構は中期目標管理法人とされており、役職員を国家公務員とする独立行政法人通則法第51条の規定は、行政執行法人を対象としています。
このため、国立病院機構で働く方の副業は、国家公務員法ではなく、機構の就業規則など職員向けの規程で確認することになります。
なお、刑法などの罰則の適用については、機構の役員と職員は公務に従事する職員とみなされます(独立行政法人国立病院機構法第14条)。
共済組合についても、国家公務員共済組合法の適用で「職員とみなして」扱われますが、いずれも兼業の扱いを定めたものとは別の規定です。
Q. 公立病院の薬剤師が、休日に調剤薬局でアルバイトをすることはできますか?
地方公務員として働く方が報酬を得て薬局で働くには、原則として任命権者の許可が必要です(地方公務員法第38条第1項)。
総務省は、営利企業の従業員としての兼業も一律に禁止せず、基本的な原則を満たす場合には任命権者の判断で認めることが可能としています。
ただし、許可基準の中身は自治体ごとに異なり、営利企業での兼業を原則として社会貢献活動に限っている例もあります。
パートタイムの会計年度任用職員の方は、第38条の許可の対象から外れています。
勤務先の現在の基準と、申請の期限を、人事担当に確かめてみてください。
Q. 60歳以降に短時間勤務で再任用された場合も、許可は必要ですか?
定年前再任用短時間勤務職員のように短時間勤務の職を占める職員は、第38条のただし書の対象から除かれているため、許可が必要です。
パートタイムの会計年度任用職員として働く場合は、許可の対象から外れますが、服務の決まりは適用されます。
国立病院機構などで再雇用されて働く方は、法人の就業規則などで確認します。
Q. 副業は、勤務先に知られずに始められますか?
公務員の方の兼業は、許可を受けてから始めることが前提の仕組みです。
栃木県のように、許可を受けずに兼業した場合を懲戒処分の対象とすると定めている自治体もあります(出典:前掲の栃木県通知)。
民間の病院でも、就業規則で届出や許可を定めている場合は、その手続きを経てから始めることになります。
住民税を通じて副業が勤務先に伝わる仕組みは、次の記事で解説しています。
まとめ
本記事では、病院薬剤師の副業の決まりを、勤務先の種類ごとに整理しました。
主なポイントは次のとおりです。
- 副業の決まりは、病院を運営する法人の種類と、ご自身の任用・雇用の形で決まる
- 公務員として働く職場では許可制で、許可基準は自治体・任命権者ごとに異なり、見直しも進んでいる(申請の期限もあわせて確認する)
- 国立病院機構・国立大学の附属病院・特定以外の地方独立行政法人などは、法人の就業規則などで確認する(共済組合の加入と、公務員かどうかは別に確かめる)
- 地方公務員のうち、パートタイムの会計年度任用職員は許可の対象外、定年前再任用短時間勤務職員は許可が必要
- 副業先で管理者を頼まれる場合や派遣で働く場合は、薬機法・労働者派遣法の決まりも確認する
まずは、辞令や雇用契約書で、勤務先の運営法人の正式な名前を確かめるところから始めてみてはいかがでしょうか。
※本記事は2026年10月23日時点の法令・公表資料に基づいて作成しています。
法令はe-Gov法令検索で、兼業の許可基準や就業規則は勤務先で、最新の内容をご確認ください。
個別の税務については税務署や税理士に、管理者の兼務については都道府県等の薬務担当にご確認ください。
よこぜき行政書士事務所

