はじめに

薬局やドラッグストア、病院で長く働いてきた薬剤師の方の中には、身につけた知識を文章の仕事に活かしたいと考える方もいらっしゃいます。

医療や健康の記事を書くメディカルライターや、記事の内容を確認する記事監修は、在宅でできる副業として紹介されることの多い仕事です。

ただし、医薬品や健康食品、医療機関について書く文章には薬機法などの広告の決まりが、業務委託で受ける場合には契約の決まりが関わります。

この記事では、40〜60代の薬剤師の方が文章の副業を始める前に知っておきたいことを、仕事の種類、本業の決まり、広告の決まり、監修、契約の順に整理します。

なお、薬の効果や服薬の判断といった医療の内容そのものは扱いません。

結論|書く内容と契約の形で、守る決まりが変わります

薬剤師の方がメディカルライターや記事監修を副業にするときは、本業の決まり、書く内容の決まり、名前を出すときの決まり、契約の決まりの4つを確認します。

どの決まりが関わるかは、勤務先での立場、書く媒体や商品、依頼主との契約によって変わります。

確認すること関わることがある主な決まり本文の該当箇所
本業との関係勤務先の就業規則、管理薬剤師などの兼務の規定(薬機法第7条第4項など)、公務員の兼業の決まり始める前に確認する本業の決まり
書く内容医薬品・化粧品など:薬機法第66条〜第68条、医薬品等適正広告基準/健康食品:健康増進法第65条、景品表示法/医療機関:医療法第6条の5薬機法と広告の決まり
名前を出す監修薬機法第66条第2項、医薬品等適正広告基準の「医薬関係者等の推せん」記事監修で名前を出すときの注意点
契約の形特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)、著作権法契約で確認すること

薬剤師の方がメディカルライター・記事監修を考える背景

文章の仕事は、薬剤師として積み重ねてきた経験を、職場の外で活かす方法の一つです。

専門職の執筆や監修を求める依頼もあります

医療や健康に関する記事は、読む人の健康に関わるため、内容の正確さが特に求められます。

そのため、依頼主によっては、薬剤師などの医療資格を持つ人の執筆や監修を条件にすることがあります。

服薬指導で患者さんに分かりやすく説明してきた経験や、添付文書や文献を読み込んできた経験は、文章の仕事でも活かせる場面があります。

40〜60代で在宅の文章の仕事を考えるきっかけ

本業に加えて、夜間や休日に別の薬局で働くのは体力的に負担が大きい、と感じる方もいらっしゃいます。

在宅の文章の仕事は、納期の範囲で作業する時間を選びやすい点が特徴です。

定年や再雇用を見据えて、薬局の外でも続けられる仕事を少しずつ準備しておきたい、という方もいるでしょう。

メディカルライター・記事監修の仕事の種類

「メディカルライター」「医療ライター」「薬機法ライター」「薬剤師ライター」といった呼び方は、依頼主やメディアによって指す仕事の範囲が異なることがあります。

本記事では説明の便宜上、メディカルライター・記事監修の仕事を、読み手と目的によって5つに分けて整理します。

製薬企業などの文書(治験・申請・論文など)

製薬企業や、医薬品の開発業務を受託する会社では、治験の計画書や承認申請の資料、論文などを作成する仕事があります。

社外に出せない情報を扱うことが多く、副業として外部から受けられるかどうかは、依頼主の方針や契約によります。

医療関係者向けの資料・記事

医師や薬剤師に向けた製品の資料や、医療関係者向けの雑誌・ウェブサイトの記事などです。

医療用医薬品については、厚生労働省の医薬品等適正広告基準が、一般の人を対象とする広告の制限を定めています(第4の5)。

製薬企業などの販売情報提供活動には、厚生労働省の「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」(平成30年9月25日)があり、委託先・提携先企業も対象とされています。

一般向けの健康・医療記事

医療系のウェブメディアの解説記事や、病院・クリニックのウェブサイトに載せるコラムなどです。

記事の形をとっていても、内容や掲載のしかたによっては広告に当たることがあります。

病院やクリニックのウェブサイトに載せる文章には、医療法の広告の決まりも関わります。

商品の紹介文・記事広告

化粧品や医薬部外品、一般用医薬品、健康食品などの紹介文や、記事の形をとった広告(記事広告)を書く仕事で、広告の決まりが直接関わります。

記事監修

ほかの人が書いた記事の内容を専門家として確認し、監修者として名前や資格を示す仕事です。

仕事の種類主な読み手関わることがある主な決まり
製薬企業などの文書医療関係者など依頼主の社内ルール、秘密保持の約束
医療関係者向けの資料・記事医師・薬剤師など薬機法第66条、医薬品等適正広告基準、販売情報提供活動のガイドライン
一般向けの健康・医療記事一般の読者内容に応じて、薬機法・健康増進法・医療法
商品の紹介文・記事広告一般の読者医薬品・化粧品など:薬機法第66条〜第68条、医薬品等適正広告基準/健康食品:健康増進法、景品表示法
記事監修記事の読者上記に加え、医薬品等適正広告基準の「医薬関係者等の推せん」、薬機法第66条第2項

この表は説明のための整理で、1つの仕事が複数の種類にまたがることもあります。

始める前に確認する本業の決まり

在宅でできる文章の仕事でも、勤務先の決まりや、薬剤師としての立場による決まりは同じように関わります。

勤務先の就業規則と届出

民間の薬局やドラッグストア、病院に勤めている方は、まず就業規則の副業・兼業の定めを確認します。

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)は、原則として副業・兼業を認める方向とすることが適当としています。

そのうえで、労務提供上の支障、業務上の秘密の漏洩、競業による自社の利益の侵害、自社の名誉・信用の毀損や信頼関係の破壊がある場合には、禁止または制限できることがあるとしています。

届出の要否や方法は勤務先によって違うため、人事担当に確認しておくと安心です。

管理薬剤師の方は、薬務担当に確認します

薬局の管理者(管理薬剤師)は、その薬局以外の場所で業として「薬局の管理その他薬事に関する実務」に従事してはならないとされています(薬機法第7条第4項)。

ただし、その薬局の所在地の都道府県知事(保健所を設置する市や特別区では市長・区長)の許可を受けたときは、この限りでないとされています(同項ただし書・第4条第1項)。

店舗販売業の店舗管理者(第28条第4項)や、卸売販売業の営業所管理者(第35条第4項)にも、同じ形の規定があります。

執筆や監修が「薬事に関する実務」に当たるかどうかは、条文の言葉だけでは判断しにくいため、薬局や店舗、営業所の所在地を担当する薬務の窓口に事前に確認しておくと安心です。

公務員の方は、兼業の決まりを勤務先に確認します

公立病院などで働く公務員の薬剤師の方には、兼業について法律の決まりがあります。

報酬を得て文章の仕事をする場合も、勤務先の人事担当に確認してください。

「国立」「公立」と名のつく病院でも、勤める方が公務員とは限らないため、まずはご自身の身分を確かめておくことが出発点です。

管理薬剤師や公務員の方の副業の決まりは、次の記事で整理しています。

薬剤師の副業は禁止?管理薬剤師・公務員の決まりと仕事の選び方

製薬企業・医薬品卸に勤める方の秘密保持と競業

製薬企業や医薬品卸に勤める方は、就業規則や入社時の誓約書で、秘密保持や競業について約束していることがあるため、社外で受ける前に確かめておきます。

本業で知った未公表の情報を、副業の文章に使わないことが前提です。

薬機法と広告の決まり|書く人にも関わる理由

医薬品などの広告の決まりは、商品を売る会社に向けたものと考えている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、薬機法には「何人も」を対象とする規定があり、文章を書く人や内容を確認する人にも関わります。

「記事」でも広告に当たる場合があります

厚生省(現在の厚生労働省)の通知は、次の要件のいずれも満たす場合に、医薬品等の広告に当たると判断するとしています。

顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
一般人が認知できる状態であること

出典:厚生省(現・厚生労働省)「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」(平成10年9月29日 医薬監第148号)

この3つを満たせば、記事の体裁をとっていても広告に当たり得ます。

医薬品等適正広告基準も、ウェブサイトやSNSを含むすべての媒体の広告を対象としています(第2)。

薬機法第66条は「何人も」を対象にしています

薬機法第66条第1項と第2項は、次のように定めています。

何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。

出典:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第66条(2026年5月21日施行の版)

第1項の主語は「何人も」で、記事を書く人や、内容を確認する人もこの規定の対象になり得ます。

第1項に違反した者には、2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその両方が科されることがあります(同法第85条第4号)。

このほか、違反した者に違反行為の中止などを命じる措置命令(第72条の5)や、課徴金の納付命令(第75条の5の2)の制度もあります。

課徴金の額は、違反に関わる医薬品等の取引の対価の合計額をもとに計算され、その額が225万円未満のときは納付を命じることができないなどの例外も定められています(同条第1項・第3項・第4項)。

違反に当たるかどうかは、個々の広告について、表現や媒体、文脈などを総合的にみて判断されます(医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等)。

未承認の医薬品と、健康食品の効能の表現

薬機法第68条は、何人も、承認や認証を受けていない医薬品・医療機器・再生医療等製品について、名称や製造方法、効能などの広告をしてはならないと定めています。

消費者庁の留意事項は、病気の治療や予防、身体の組織機能の一般的な増強・増進などを目的とする医薬品的な効果効能をうたう物は医薬品とみなされ、野菜や果物など外観から明らかに食品と認識される物を除き、原則として承認を受けずに広告をしてはならないと説明しています。

医薬品等適正広告基準と「医薬関係者等の推せん」

厚生労働省の医薬品等適正広告基準(平成29年9月29日 薬生発0929第4号)の第4の10「医薬関係者等の推せん」は、次のように定めています。

医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。
ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又はこれに準ずるものが指定等をしている事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。

出典:厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」(平成29年9月29日 薬生発0929第4号)別紙

薬機法は、医師、歯科医師、獣医師とともに、薬剤師を「医薬関係者」として挙げています(第1条の5第1項)。

同じ日に出された「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」は、この項について、推せん広告などは一般消費者の認識に与える影響が大きいため、一定の場合を除き、たとえ事実であっても不適当とする趣旨だと説明しています。

また、推せんなどの行為が事実でない場合は、薬機法第66条第2項に抵触するとしています(出典:厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)。

健康食品は健康増進法・景品表示法、医療機関は医療法

健康食品の広告には、健康増進法第65条第1項が関わります。

同項は、何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果などについて、著しく事実に相違する表示や、著しく人を誤認させるような表示をしてはならないと定めています。

消費者庁の「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月5日一部改定)は、この規定は「何人も」が対象のため、広告媒体の事業者なども対象となり得るとしています。

もっとも、同留意事項は、第一義的に規制の対象となるのは健康食品の製造業者・販売業者であり、広告媒体事業者等には、表示の内容が虚偽誇大であることを予見し、又は容易に予見し得た場合などの特別な事情があるときに、健康増進法に基づく措置をとることがあるとしています。

一方、景品表示法の不当表示の規制の対象は商品やサービスを供給する事業者で、広告媒体の事業者は原則として対象にならないと説明しています(他の事業者と共同して商品を供給していると認められる場合などを除きます)。

商品やサービスを提供する事業者から依頼を受けて書く紹介記事などで、事業者の広告であることが分からない表示は、景品表示法の不当表示として規制されています(令和5年内閣府告示第19号、いわゆるステマ規制)。

消費者庁は、規制の対象は商品・サービスを供給する事業者(広告主)で、企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはならないと説明しています(令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります)。

ただし、薬機法第66条や健康増進法第65条は「何人も」を対象としているため、書く側も、広告であることの示し方や表現を依頼主と確認しておくと安心です。

医療機関について書く場合は、医療法第6条の5が関わります。

同条は、何人も、医業や病院・診療所に関して広告などをする場合には虚偽の広告をしてはならないとし、比較優良広告や誇大広告をしないことなどの基準も定めています。

具体例は、厚生労働省の「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」で確認できます。

記事監修で名前を出すときの注意点

記事監修は、自分で書かない分、短い時間で受けられる仕事に見えるかもしれません。

しかし、監修者として名前と資格を出すことは、記事の内容に薬剤師が関わったことを読者に示すことでもあります。

監修の範囲を、依頼の段階で決めておきます

監修で確認する範囲は依頼によって違うため、受ける前に次のような点を確認しておきます。

  • どの部分を確認するのか(記事全体か、医薬品に関する記述だけか)
  • 公開直前や、公開後に修正された場合に、改めて確認できるか
  • 監修者の名前・資格・写真などをどのように表示するか
  • 名前をほかの記事や広告、商品の販売ページにも使うことがあるか
  • 監修をやめたあと、名前の表示をどうするか

監修したときの原稿から内容が変わったのに名前が残っていると、確認していない記述まで薬剤師が確認したかのように受け取られるおそれがあります。

範囲や表示の方法は、メールや契約書など、あとから確認できる形で残しておくと安心です。

商品の広告に「薬剤師監修」と表示する場合

医薬品や化粧品などの広告で、薬剤師が推せん・指導しているかのように示すことは、前の章で見た医薬品等適正広告基準の第4の10に関わります。

推せんなどが事実でなければ、薬機法第66条第2項の問題になることも、解説に示されています。

健康食品についても、消費者庁の留意事項は、医師や学者などの談話や「管理栄養士が推奨する」といった記載を載せることを、健康の保持増進の効果を暗示的に表す表示に当たるとしています。

監修者として名前を出す記事が、特定の商品の購入をすすめる広告に当たるかどうかは、依頼の段階で依頼主に確認しておきます。

厚生労働省は、医薬品等の広告の個別案件の相談は都道府県の薬務主管課に問い合わせるよう案内しているため、判断に迷う表現は、依頼主を通じて相談する方法もあります(医薬品等の広告規制について)。

契約で確認すること|フリーランス法と著作権

副業のライターや監修の仕事は、雇用ではなく業務委託として受ける場合があり、仕事の内容や報酬、著作権の扱いを書き始める前に確認しておくことが大切です。

業務委託では、フリーランス法の対象になることがあります

個人で、従業員を使わずに業務委託を受ける方は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(いわゆるフリーランス法・2024年11月1日施行)の「特定受託事業者」に当たることがあります(第2条第1項第1号)。

代表者のほかに役員がおらず、従業員も使わない法人も、特定受託事業者に含まれます(同項第2号)。

記事の執筆は、文字などで構成される「情報成果物」の作成の委託に当たります(同条第3項第1号・第4項第3号)。

この法律は、発注する事業者に、次のような義務や禁止行為を定めています。

定め主な内容対象となる発注者
取引条件の明示(第3条)仕事の内容、報酬の額、支払期日などを、書面またはメールなどの電磁的方法で直ちに明示する(内容が定められないことに正当な理由がある事項は、定まった後直ちに明示)業務委託をする事業者(従業員を使わない個人も含む)
報酬の支払期日(第4条)原則として、成果物を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定める(再委託の場合などの例外あり)従業員を使う個人、または2人以上の役員がいるか従業員を使う法人(特定業務委託事業者)
禁止行為(第5条)受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用の強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直し(役務の提供の委託では、受領拒否と返品を除く)特定業務委託事業者で、1か月以上の業務委託(契約の更新により1か月以上継続する場合を含む)

出典:e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」第2条〜第5条、同法施行令第1条

発注者の規模などによって中小受託取引適正化法(旧下請法)が重ねて関わる場合の関係は、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(令和8年1月1日改定)で整理されています。

著作権と、名前の表示

業務委託で書いた記事は、職務著作(著作権法第15条)に当たる場合を除き、書いた人が著作者となり、著作権を持つのが原則です(同法第2条第1項第2号・第17条)。

依頼主に著作権を譲渡する契約では、翻案などに関する権利(第27条・第28条)を譲渡の対象として明記していない場合、それらの権利は書いた人に残ると推定されます(第61条第2項)。

公表権・氏名表示権・同一性保持権からなる著作者人格権は譲渡できないため(第59条)、契約で「著作者人格権を行使しない」と取り決める例があります。

名前を記事に出すかどうか、書いた記事を自分の実績として公開してよいかも、確認しておきたい点です。

ほかの文献や記事を引用するときのルールは、次の記事で解説しています。

ブログ記事を書く時の「著作権法」の注意点

依頼の前に確認しておきたい項目

依頼を受ける前に、次の項目を確認しておくと、あとの食い違いを防ぎやすくなります。

確認する項目確認しておく理由
仕事の内容・文字数・納期取引条件の明示(フリーランス法第3条)の基本となるため
報酬の額・支払期日・支払方法報酬の明示(同法第3条)や支払期日の定め(同法第4条)に関わるため
修正の回数と範囲受けられる修正の範囲を、あらかじめ共有しておくため
広告に当たるかどうか、広告であることの示し方薬機法・健康増進法・景品表示法などが関わるため
監修の範囲と名前の表示確認していない記述に名前が残らないようにするため
著作権・著作者人格権・実績としての公開権利の扱いは契約で決まる部分があるため
秘密保持依頼主の情報と、本業の情報の両方を守るため
生成AIを使ってよいか依頼主によって方針が異なるため

困ったときの相談先

契約や報酬のトラブルについては、厚生労働省から第二東京弁護士会が受託して運営する「フリーランス・トラブル110番」で、弁護士に無料で相談できます。

フリーランス法に違反すると思われる行為があった場合は、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省に申し出ることができます(違反の内容によって窓口が異なります)。

報酬の未払いなど、個別のトラブルへの対応については、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

薬剤師の文章の副業でありがちな失敗と回避策

メディカルライターや記事監修の副業で、始める前の確認で防ぎやすい失敗と回避策を5つ挙げます。

1. 「記事の仕事」と思って受けたら、商品の広告だった

依頼の内容が「健康コラム」となっていても、特定の商品名や販売ページへのリンクが入ると、広告に当たることがあります。

依頼の段階で、商品名を出すか、販売ページにつながるかを確認しておきます。

2. 監修の範囲を決めないまま名前を出す

確認していない部分にまで名前が使われると、読者には薬剤師が内容を保証したかのように受け取られるおそれがあります。

範囲、公開後に修正された場合の扱い、名前を使う場所を、あとから確認できる形で決めておきます。

3. 条件を確かめないまま書き始める

報酬の額や支払期日、修正の回数を決めないまま書き始めると、あとで食い違いが起きることがあります。

フリーランス法の対象となる取引では、発注する事業者に取引条件の明示が求められているため、書き始める前に条件の提示を求めて構いません。

4. 本業で接した患者さんの話を題材にする

刑法第134条第1項は、薬剤師や薬剤師であった者が、正当な理由がないのに、業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金に処すると定めています。

退職したあとや定年後に書く場合も、「薬剤師であった者」として同じ規定が関わります。

個人が特定されないように変えればよい、と考えるのではなく、そもそも題材にしてよいかを慎重に判断します。

5. 管理薬剤師になったあとも、確認しないまま続ける

副業を始めたときは管理者でなくても、異動や昇格で管理薬剤師や店舗管理者になることがあります。

立場が変わったときは、続けてよいかを、勤務先と薬務担当に改めて確認します。

今日から始められる3つの確認

いきなり依頼を受ける前に、手元でできる確認から始めてみてはいかがでしょうか。

  1. 就業規則の副業・兼業の条項を読む:管理薬剤師や店舗管理者の方は、薬務担当への確認もあわせて行います
  2. 医薬品等適正広告基準とその解説に目を通す:健康食品については、消費者庁の留意事項もあわせて読んでおくと安心です
  3. 依頼の前に確認する項目を手元に控える:前の章の表を、そのまま確認用のメモとして使えます

よくある疑問

メディカルライターや記事監修の副業を考えるときに、気になりやすい点をまとめます。

Q. 未経験でも、メディカルライターの副業はできますか?

求められる経験は依頼主によって違い、薬剤師の免許や実務経験を条件にする依頼もあります。

一方で、薬機法などの広告の決まりや、読み手に合わせた文章の組み立ては、事前に学んでおく必要があります。

まずは、名前を出す監修ではなく、依頼主の確認を受けながら書く執筆の仕事から経験を積む方法もあります。

Q. 薬機法に違反する記事を書いたら、ライターも責任を問われますか?

薬機法第66条第1項は「何人も」を対象としているため、書いた人や監修した人も対象になり得ます。

違反に当たるかどうかは、表現や媒体、文脈などを総合的にみて個別に判断されるため、判断に迷う表現は、書く前に依頼主と確認しておきます。

Q. 管理薬剤師でも、ライターや監修の副業はできますか?

管理薬剤師がその薬局以外の場所で業として「薬事に関する実務」に従事するには、都道府県知事(保健所を設置する市や特別区では市長・区長)の許可が必要です(薬機法第7条第4項)。

執筆や監修がこれに当たるかどうかは薬務担当に、あわせて勤務先の就業規則も確認しておきます。

Q. ペンネームで書いてもよいですか?

ペンネームを使えるかどうかは、契約や媒体の方針によります。

監修者として資格を示す場合は、実名と資格の表示を求められることがあります。

勤務先に知られないようにする目的ではなく、就業規則で届出が必要かどうかを先に確認しておくと安心です。

Q. 副業の収入は確定申告が必要ですか?

確定申告が必要かどうかは、副業の所得の額や、ほかの所得の状況などによって変わります。

副業と確定申告の基本は、次の記事で解説しています。

正社員が「副業」を始める前に知っておきたい7つの注意点

個別の税務については、税務署や税理士にご確認ください。

まとめ

本記事では、薬剤師の方がメディカルライターや記事監修を副業にするときに確認しておきたい決まりを整理しました。

  • 本業の決まり:就業規則、管理薬剤師などの兼務の規定、公務員の兼業の決まり
  • 書く内容の決まり:医薬品・化粧品などは薬機法と適正広告基準、健康食品は健康増進法と景品表示法、医療機関は医療法
  • 名前を出すときの決まり:監修の範囲と名前の表示、広告での「医薬関係者等の推せん」
  • 契約の決まり:取引条件、支払期日、著作権の扱い

薬剤師として積み重ねてきた知識は、正確さが求められる医療の文章で活かせるものです。

まずは就業規則を読むところから、無理のない範囲で準備を始めてみてはいかがでしょうか。


※本記事は2026年10月時点の法令・通知等に基づいて作成しています。

最新の情報は、e-Gov法令検索、厚生労働省、消費者庁の公式サイトでご確認ください。

個別の広告表現や契約については、都道府県の薬務担当や弁護士などの専門家にご確認ください。

よこぜき行政書士事務所