
目次
はじめに
「NPO法人」という言葉はよく耳にするものの、いざ「どんな団体ですか?」と聞かれると、答えに迷う方は少なくありません。
特に「非営利なのだから給料は出ないのでは?」「ボランティア団体とどう違うのか?」といった疑問は、定年後の働き方や社会貢献の選択肢を考えている40〜60代の方からよくお寄せいただく論点です。
本記事では、NPO法人の定義から、給料の仕組み、20種類の活動分野、株式会社や一般社団法人との違い、そして40〜60代の方が関わるための4つのルートまでを、行政書士の視点でやさしく整理しました。
基礎から把握したい方の判断材料としてご活用いただければと思います。
NPO法人とは

NPO法人(特定非営利活動法人)とは、特定非営利活動促進法に基づいて法人格を取得した、社会貢献活動を行う団体です。
NPOは「Non-Profit Organization」の略で、日本語にすると「非営利組織」となります。
1998年(平成10年)に施行された特定非営利活動促進法(通称:NPO法)に基づき、所轄庁の認証を受けることで設立される法人形態です。
所轄庁は原則として、主たる事務所の所在地の都道府県知事となります。
ただし、事務所が一つの政令指定都市の区域内のみにある場合は、その指定都市の長が所轄庁となります(NPO法第9条)。
任意のボランティア団体と異なる最大のポイントは、法人格を持つことで団体名義での契約や口座開設が可能となる点にあります。
これにより、活動の継続性と社会的信頼性が大きく高まります。
内閣府NPOホームページによると、2026年3月末(2025年度末)時点で、全国のNPO法人認証数は49,079法人、認定NPO法人(寄付者に税制優遇のある上位区分)は1,323件(認定1,283件+特例認定40件)となっています(出典:内閣府NPOホームページ『認証・認定数の遷移』)。
NPO法人の仕組みと「非営利」の本当の意味

NPO法人を理解するうえで最も誤解されやすいのが「非営利」という言葉です。
多くの方が「お金を稼いではいけない」「給料は出せない」と捉えがちですが、これは正しい意味ではありません。
本セクションでは、非営利の定義と法人格を持つ意味を整理します。
「非営利」とは「利益分配の禁止」のこと

NPO法における「非営利」とは、利益を出してはいけないという意味ではなく、利益を構成員で分配してはいけない、という意味です。
株式会社では、事業で得た利益は株主に配当として分配されます。
一方、NPO法人では、事業で得た利益(余剰金)は構成員で分け合うことができず、必ず次期以降の社会貢献活動のために再投資する義務があります。
ただし、事業を継続するために収益事業を行うこと自体は認められています。
物品販売、サービス提供、イベント開催など、活動の幅は広く、安定した収入基盤を築いている法人も少なくありません。
法人格を持つことの意味
NPO法人として法人格を取得すると、団体としての法的地位が確立されます。
具体的には、団体名義での不動産契約、銀行口座の開設、行政との委託契約などが可能となります。
任意団体の場合、これらをすべて代表者個人の名義で行う必要があり、代表者の交代時には名義変更が必要になるなど、運営上の負担が大きくなります。
法人格を持つことで、寄付者や行政、取引先からの信頼を得やすくなり、補助金・助成金の申請対象となる範囲も広がります。
NPO法人で給料はもらえる?収入源とお金の流れ
「非営利だから給料は出ない」というイメージは、NPO法人に関する最も典型的な誤解の一つです。
実際には、NPO法人で働く職員にも一般企業と同様に給料が支払われ、社会保険にも加入できます。
本セクションでは、収入源と給与の仕組みを整理します。
NPO法人の主な収入源・資金調達

NPO法人は、以下のような複数のルートから活動資金を確保しています。
- 事業収入:物品販売、サービス提供、講座開催などによる収益
- 会費:正会員・賛助会員からの年会費
- 寄付金:活動に賛同する個人・企業からの寄付
- 補助金・助成金:国・地方自治体・民間財団からの支援
- 借入金:金融機関からの融資(会計上は収益ではなく、返済義務のある資金調達)
特に介護保険・障がい福祉サービスを行うNPO法人では、国や自治体からの給付金が主な収入源となるケースが多く、比較的安定した経営基盤を持ちやすい傾向があります。
職員の給料は「人件費」として支払われる

NPO法人が職員に支払う給料は、「利益の分配」ではなく経費(人件費)として扱われます。
そのため、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入もでき、賞与や昇給制度を整えている法人もあります。
給与水準は団体の規模や活動分野によって幅があるため、就職を検討される場合は、各団体が公開している募集要項で具体的な給与・賞与・社会保険の有無を個別に確認するのが確実です。
役員報酬には独自のルール

NPO法人で特徴的なのが、役員報酬に関する制限です。
特定非営利活動促進法 第2条第2項第1号ロ では、「役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の三分の一以下であること」と定められています。
ここでいう「役員報酬」は、役員という地位に対して支払われる金銭を指します。
一方、理事が職員を兼務し、職員としての労働の対価として給与を受ける場合、その給与はNPO法上の役員報酬とは別に扱われます。
ただし、監事は理事および職員を兼務することができません(NPO法第19条)。
法令上の細かい区分があるため、設立時には所轄庁の案内や専門家への確認が推奨されます。
NPO法人の活動分野と類似する法人との違い
NPO法人としての認証を受けるには、特定非営利活動促進法で定められた20の活動分野のいずれかに該当する必要があります。
本セクションでは、活動分野の概要と、他の法人形態との違いを整理します。
特定非営利活動の20分野

特定非営利活動促進法では、以下の20分野が「特定非営利活動」として定められています。
| # | 分野 |
|---|---|
| 1 | 保健、医療又は福祉の増進を図る活動 |
| 2 | 社会教育の推進を図る活動 |
| 3 | まちづくりの推進を図る活動 |
| 4 | 観光の振興を図る活動 |
| 5 | 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動 |
| 6 | 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動 |
| 7 | 環境の保全を図る活動 |
| 8 | 災害救援活動 |
| 9 | 地域安全活動 |
| 10 | 人権の擁護又は平和の推進を図る活動 |
| 11 | 国際協力の活動 |
| 12 | 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動 |
| 13 | 子どもの健全育成を図る活動 |
| 14 | 情報化社会の発展を図る活動 |
| 15 | 科学技術の振興を図る活動 |
| 16 | 経済活動の活性化を図る活動 |
| 17 | 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動 |
| 18 | 消費者の保護を図る活動 |
| 19 | 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動 |
| 20 | 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動 |
出典:内閣府NPOホームページ
これら20分野のうち、いずれかに該当し、かつ「不特定多数の利益に寄与すること」を目的とする活動であることが、認証の前提となります。
NPO法人と他の法人形態との違い

NPO法人と混同されやすい法人形態として、株式会社、一般社団法人、認定NPO法人があります。
それぞれの違いを整理すると以下のようになります。
| 項目 | NPO法人 | 認定NPO法人 | 一般社団法人 | 株式会社 |
|---|---|---|---|---|
| 設立目的 | 特定非営利活動(20分野) | 同左+寄付実績要件 | 自由 | 営利活動 |
| 利益分配 | 不可 | 不可 | 不可 | 可(株主配当) |
| 設立認証 | 所轄庁の認証必要 | 所轄庁の認定必要 | 公証人の定款認証 | 公証人の定款認証 |
| 設立人数 | 社員10人以上 | 社員10人以上 | 社員2人以上 | 1人以上 |
| 情報開示義務 | あり(毎年) | あり(毎年) | 限定的 | 限定的 |
| 税制優遇 | 一定の優遇 | 寄付者にも優遇 | 限定的 | なし |
認定NPO法人は、NPO法人のうち一定の要件(寄付金収入の割合等)を満たして所轄庁の「認定」を受けた法人で、寄付者に対する税制上の優遇措置が大きくなる上位区分です。
それぞれの法人形態には設立要件・運営負担・税制面で異なる特徴があるため、活動の目的や規模に応じた選択が重要となります。
なお、設立登記そのものは司法書士の独占業務領域、個別の税務相談は税理士の業務領域 にあたるため、具体的な手続きは各専門家への確認が推奨されます。
社会貢献と事業の両立を考える際の選択肢として、スモールビジネスとは?40〜50代から始める小さな起業もあわせて参考になります。
NPO法人を設立・関わるときの注意点
NPO法人との関わり方は、設立だけに限りません。
職員として就職する、ボランティアとして関わる、寄付や賛助会員として支援するなど、さまざまな選択肢があります。
本セクションでは、設立要件の概要と、40〜60代の方からの4つの関わり方を整理します。
NPO法人設立要件のポイント

NPO法人を設立するには、特定非営利活動促進法に基づくいくつかの要件を満たす必要があります。
主な要件は以下の通りです。
- 社員(正会員等)が10人以上 いること(NPO法第12条第1項第4号)
- 役員として理事3人以上、監事1人以上 を置くこと(NPO法第15条)
- 営利を目的としないこと(利益の分配を行わないこと)
- 活動目的が前述の20分野のいずれかに該当すること
- 宗教活動・政治活動を主目的としないこと
- 所轄庁の認証 を受けること
2021年(令和3年)6月施行の改正法により、設立認証申請書の縦覧期間は従来の1ヶ月から 2週間 に短縮されました。
縦覧期間経過後、所轄庁が 2ヶ月以内(条例で2ヶ月未満を定めている場合はその期間内)に認証または不認証の決定を行うため、申請から認証取得まで おおむね2ヶ月半〜3ヶ月 が目安となります。
認証後は、毎事業年度、事業報告書・計算書類(活動計算書および貸借対照表)・財産目録・年間役員名簿等 を作成し、所轄庁に提出する情報開示義務が課されます(NPO法第28条・第29条)。
40〜60代からの4つの関わり方

NPO法人との関わり方は、ご自身の状況・希望に応じて複数の選択肢があります。
A. 職員として就職する(給料を得て働く)
NPO法人で求人を出している団体は多く、特に福祉・教育・国際協力の分野では正職員の募集が活発です。
社会保険にも加入でき、収入を得ながら社会貢献に携わる選択肢となります。
B. ボランティアとして関わる(無償で参加)
最も入りやすいルートです。週1日〜月数回の関わり方から始められ、現役で別の仕事をされている方や、定年後の生きがいとして関わる方もいらっしゃいます。
詳しくは シニアボランティアとは|活動の種類や楽しみ方 で解説しています。
C. 自ら設立して運営に携わる
社会課題への問題意識が明確で、長期的に取り組みたい方の選択肢です。
NPO法人の設立には社員(正会員等)10人以上を確保する必要があり、定年後にこれまでのキャリアを活かして設立される方もいらっしゃいます。
社会貢献を主軸とした起業の進め方は、シニアの「おばさん起業」成功の秘訣と失敗しないコツ も参考になります。
D. 寄付・賛助会員として支援する
活動には共感するが、時間的に直接関わるのは難しい、という方の選択肢です。
認定NPO法人への寄付には税制上の優遇措置が設けられている場合があります。
なお、寄付や事業活動に伴う具体的な税務上の取り扱いは個別事案により異なるため、個別の税務については税理士へのご相談 をおすすめします。
よくあるご質問
NPO法人に関して特に多くお寄せいただく疑問を3つ整理しました。
Q: NPO法人の給料水準はどれくらいですか?
団体の規模・活動分野・地域によって幅があります。
大規模な認定NPO法人や、福祉・医療系の事業型NPOでは、一般企業と同等以上の給与水準を提供している例もあります。
一方、地域密着型の小規模法人ではそれより低い水準のケースもあると報告されています。
求人を検討する場合は、各団体の公開している募集要項で具体的な給与・賞与・社会保険の有無を確認することをおすすめします。
Q: NPOとNGOの違いは何ですか?
NPOは「非営利組織」、NGOは「非政府組織」を意味します。
NPO(Non-Profit Organization)が「利益分配を行わない」点を強調しているのに対し、NGO(Non-Governmental Organization)は「政府機関ではない民間団体」である点を強調する呼び方です。
日本ではNGOの多くが国際協力分野で活動していますが、法的にはどちらも「NPO法人」「一般社団法人」などの法人格を取得して活動しているケースが多く、両者は対立する概念ではありません。
Q: シニア世代からNPO活動に関わるには、何から始めれば良いですか?
最も入りやすいのはボランティア参加です。
地域の社会福祉協議会、市民活動支援センター、内閣府NPOホームページなどで、お住まいの地域で活動するNPO法人の情報を集めることから始められます。
関心のある分野(まちづくり、子どもの健全育成、環境保全など)を絞り込み、見学会や説明会に参加してみる流れが一般的です。
詳しくは シニアボランティアとは|活動の種類や楽しみ方 でも解説しています。
まとめ

本記事では、NPO法人について以下の論点を整理しました。
- NPO法人=特定非営利活動促進法に基づく法人格を持つ社会貢献組織
- 2026年3月末時点で全国に49,079法人(うち認定NPO法人1,323件)が活動中
- 「非営利」=利益分配の禁止であり、給料は人件費として支払われる
- 役員報酬には「3分の1ルール」(法第2条第2項第1号ロ)など独自の制限がある
- 法令で定められた20分野の活動が対象となる
- 株式会社・一般社団法人・認定NPO法人とは設立要件・税制で違いがある
- 40〜60代からの関わり方は「就職・設立・ボランティア・寄付」の4ルート
「非営利」の言葉のイメージから踏み出せずにいた方も、実際には多様な関わり方があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
関心のある活動分野が決まっている方は、お住まいの地域の社会福祉協議会や市民活動支援センターに相談してみる、内閣府NPO法人ポータルサイト で地元のNPO法人を検索してみる、といった情報収集から始められます。
気になる団体の見学会や説明会への参加も、立派なスタートの一歩です。
※本記事は2026年5月時点の特定非営利活動促進法および内閣府NPOホームページの公表情報に基づき作成しています。法令改正や運用変更により内容が変わる可能性があるため、最新情報は 内閣府NPOホームページ でご確認ください。個別の設立手続きは行政書士、設立登記は司法書士、税務は税理士へのご相談を推奨します。
よこぜき行政書士事務所


